放送内容

第1453回
2018.12.02
かがくの里・田舎暮らし の科学[収穫祭3] 場所・建物 食べ物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 4年目の大収穫祭は、いよいよクライマックス!今年は「ウナギの養殖」で大発見が!養殖のウナギは99%がオスになってしまうんですが…。里の池ではなんと、6匹中5匹がメスに!
 大ニュースの後は、今年の集大成!もう一つのビッグプロジェクト里山再生!荒れ放題の里山整備で、間引いた木が…素敵すぎるテーブルに!
 さらに…いちから育てた里の大豆を1年かけて…自家製の手作り味噌に!里で時間をかけて育んだお料理に所さんも大喜び!
 里山と畑の恵みに笑顔いっぱい!かがくの里大収穫祭スペシャル!

里山再生で出た「間伐材」を有効活用

 うなぎの養殖と一緒に今年頑張ってきた「里山再生プロジェクト」。かがくの里の裏山は、最初、全く手入れされておらず、荒れ放題でした。さらに、荒れた里山のせいで、イノシシが降りてきて畑を荒らしちゃったんです。こうして、荒れ放題の里山を美しい里山に再生しようというプロジェクトがスタート!
 今年1月、地元森林組合の協力のもとまずおこなったのが「間伐」。間伐は、成長の遅い木や細い木などを切って、間引くこと。間伐で、陽が当たるようになり、残った木が太くしっかりとした木に育つんです。さらに、見通しもよくなり、イノシシが近づかなくなる効果も!

 大事なポイントは、伐った間伐材をどんなふうに有効利用するかということ。里山の恵みをきちんと使うサイクルが肝心なんです。そこでお呼びしたのが、木材利用の専門家、村田先生。
 すると、村田先生、家具に使えるヤマザクラを発見!ヤマザクラは磨くと艶が出るので家具材として人気があるんです。他には、栗の木も。荒れ放題の里山が実は「宝の山」だったんです!

 ということで、里山再生プロジェクトの一環として家具作りに取り組むことに。

 まずは地元の製材所で、間伐材を薄くカット。この板材をもちこんだのが、創業78年のカリモク家具。創業時から、国産材にこだわった家具作りをしている、世界的にも人気の家具メーカーさんです。どうして、こんなスゴイ会社が協力してくれることになったのか?実は、カリモク家具の副社長、加藤さんは村田先生の先輩。そういうことなら、思いっきり甘えさせていただきます!

 最初のポイントは、木材の乾燥!きったばかりの木は、大量の水分を含んでいるんです。水分が残っていると、使っている間に反ったりしてしまいます。小屋作り用の木材は2週間天日干ししましたが、家具材はよりしっかり乾燥させる必要があり、カリモクの工場で機械を使って行います。
 家の中で使う家具は、水分を12%以下に。日本の気候では、家の外なら、水分を15%まで乾燥させれば、木材は伸び縮みしにくくなります。けれど、家の中は外よりも湿度が低くなりがち。木材に残っている水分が出て変形してしまうことが。だから家具用の木材は、天日干しではなく機械でしっかり乾燥させるんです。里の間伐材を家具作りに使えるものにするため乾燥させる期間は、なんと2ヶ月!!今年8月。ようやく乾燥が終わりました。

 第1段階はクリア。いよいよ家具にしていくんですが、ひとつ大きな問題が。
 普通、家具づくりに使うのは、太くて真っ直ぐな木。でも、里山の間伐材は、自由に育った木を間引いたもので、細く曲がっています。曲がった木では、テーブルなど大きな家具は普通作らないそうなんですが、副社長からこんな提案が。あえて間伐材の歪みを生かす、他にはないデザインにできるというんです。さらに、もう一つこだわったポイントが。間伐材という素材のテイストを生かし、キレイに磨いた樹皮を残すというデザイン。実は、さくらの皮は磨くと艶が出るそうで「樺細工」という民芸品があるくらい味が出るんです。こうして、里の間伐材の特徴を生かしたとっておきのテーブルが完成!3本の板を組み合わせ、間伐材の歪みをあえて生かすことで、他にはないテーブルになりました。

 里山の間伐材から食器も!

 間伐材を素敵な器に生まれ変わらせたのは、ウッドターニングという方法。木工旋盤という機械に木を固定して大きな彫刻刀のようなもので削っていきます。刃を当てながら旋盤を回転させると、まんまるの器に!
 さらにバットも作りました。バットって唐突ですが、里山の調査で、村田先生がバットに向いた木、ホオノキを見つけちゃったんです。里の間伐材で、本当に野球のバットが作れるのか。プロ野球選手のバットも手がけ、創業から60年以上、バットを作り続けるバット専門メーカーに依頼し、実際に加工してもらったんです。その出来は、商品に出来るほど!

 さらに、里の間伐材でアコースティックギターも。

 弦の強いテンションに耐えられる頑丈な木でしか作れないアコースティックギター。売られているギターは、マホガニーなど海外の硬い木が使われているんですが、里の間伐材で、なんとかアコースティックギターが作れないかチャレンジしたんです。
 依頼したのはギター職人の原さん。ギターはパーツごとに、特性に合わせそれぞれ違う木を使います。ネックには、バットでも使ったホオノキがピッタリだそう。その理由は、ホウノキは木目がまっすぐで、乾燥してもねじれや反りなどの狂いが少ないから。そのため音を安定させる上で重要なネックに。
 里の間伐材だけで作ったアコギ!その音色は!?所さんに演奏してもらうと「いい音すると」絶賛。テーブルからギターまで!整備を始めた里山には、まだまだ色んな可能性がありそうです!

里の恵みを味わい尽くす!

 足掛け2年で、一から味噌作りにも挑戦したんです。去年7月、里の畑にまいたのは、エンレイという品種の大豆。スクスクと順調に大きくなり去年12月、葉が落ちて茶色になったところで収穫。この大豆からどうやってお味噌を作るの?実は意外に簡単?おうちでもマネ出来ちゃいます。

 今年2月。雪の残る中、調理科学の露久保先生と味噌の仕込み。まず、生の大豆を3倍量の水に丸1日つけておきます。茹でた時、大豆の芯が残らず食感が良くなるんです。大豆を入れた圧力鍋から蒸気がでたら20分。しっかりとすり潰します。そこに加えるのは、米麹と塩。米麹はデンプンを分解し糖に変えるため米麹の量を多くすれば、甘い味噌になるそう。
 最後に大事なポイントが。しっかり握って壺に敷き詰めると、空気が抜けて、熟成中の大敵、カビがでにくくなるんです。熟成中は、冷暗所に置き、表面にカビが出たら、その部分を取り除くこともお忘れなく。最後に重しを乗せて収穫祭までの9ヶ月、熟成させました。
 収穫祭前日、仕込みの時、白っぽかったのが、熟成して山吹色に。味噌作りは大成功。

 もちろん味噌汁の具材も里で獲れたサツマイモと、冬瓜。実は阿部さん、夏野菜生活で冬瓜も作っていたんです。それを里の間伐材の器によそって、さらにもう一品!

 たくさん取れた夏野菜。これを3か月後の秋の収穫祭で、所さんに味わってほしい。そこで保存食のピクルスにすることに!
 まず大事なのは、瓶の殺菌消毒。およそ15分煮沸消毒。続いて、切った野菜を茹でます。実はこれが調理科学的ポイント!軽く茹でることで、野菜が柔らかくなってピクルス液が染み込みおいしくなるんです。あとはお酢と砂糖で作ったピクルス液を注ぐだけ。

 すべて里の食材の一汁一菜にみんな大満足!でもまだまだこれから!次の料理は、野菜のジャム。

 これも夏の終わりに、里の夏野菜で作って、保存しておいたもの。
 まずカットした野菜を、低温でゆっくり加熱していきます。これが調理科学的ポイント!トマトとカボチャは加熱すると味がギュッと濃縮、甘みが強くおいしくなるんです。最後にミキサーでしっかりすり潰せば完成。
 さらにナスもジャムに。みじん切りしたにんにくと玉ねぎを加えます。実は露久保先生が作っているのは、甘くないジャム。お惣菜としてそのまま頂けるもので、最近、甘くないジャムは人気なんです。
 そしてメインディッシュは?前回、性別調査のため里で養殖したうなぎをさばいたんですが、もちろん、その命、しっかりいただきます。秘伝のタレと炭火で香ばしく、焼き上げていただきました。

 今年1年をかけてやってきたプロジェクトは紆余曲折を乗り越え、今回の収穫祭で、様々な形で実を結びました!先生方、阿部さん、本当にお疲れ様でした。
 最後には所さんがもう一曲歌ってくれました!
 来年もかがくの里もお楽しみに!