放送内容

第1452回
2018.11.25
かがくの里・田舎暮らし の科学[収穫祭2] 場所・建物 水中の動物

 かがくの里で1年にわたって取り組んできた、一大プロジェクト、「ウナギの養殖」!企画のスタートから驚きの結果まで一気にお見せします。
 ウナギを捕まえるためにクレーンを投入!?そして、ウナギを絶滅から救うかもしれない1年がかりの実験で、世界初の結果が!
 目がテン!かがくの里大収穫祭!ウナギで世紀の大発見スペシャル!

ウナギ養殖プロジェクトで驚きの結果が!?

 千葉先生と一緒に、1年間取り組んできたビッグプロジェクト、ウナギの養殖。すべての始まりは去年の収穫祭でした。なぜ、かがくの里のため池でウナギ養殖にチャレンジしようと考えたのでしょうか?
 今年2月の初旬。千葉先生と阿部さんは、ウナギの稚魚シラスウナギ漁を見るため、名産地、浜松へ。養殖するため捕まえるシラスウナギ。けれど漁獲量は年々減っていて、2013年には絶滅危惧種に指定され危機的な状況にあるニホンウナギ。そもそもウナギは2000km離れた西マリアナ海嶺あたりで生まれ、黒潮に乗って日本にやってきます。
 稚魚の頃はオスとメスに分かれていませんが、川や田んぼなどで何年もかけて大きく育つうちにオスとメスに分かれます。そして、再び大海原に出て2000km先の西マリアナ海嶺あたりで卵を生みます。

 実は、養殖のウナギに驚きの事実が。養殖すると、ウナギのほとんどが、オスになってしまうんです。養殖場のウナギは成長を早めるため、水温がおよそ30℃に保たれた“生けす”で育てられます。エサは魚粉とスケトウダラの脂などを混ぜたものを1日2回。天然ウナギは4~5年かけて大きくなるのですが、一般的な養殖場では半年~1年で出荷サイズにまで大きくなるんです。なぜそんなに早く大きくなるのか?その理由は養殖場の環境。
 ウナギは、泥や砂に潜り体が何かに密着していないと安心できない性質。けれど隠れる場所のない養殖場では、一生懸命運動しています。それだけエネルギーが必要なので、エサをたくさん食べ、早く大きくなるように環境に適応したのが養殖のウナギということになるといいます。
 その結果、理由はわかりませんが養殖のウナギはなぜかほとんどオスに。養殖で卵を産むメスを育てることはできないのか。そこで先生が目につけたのは、かがくの里のため池だったんです。

 そもそもこのため池は、3年前の2015年、畑の作物に与える水として湧き水を探し、その湧き水を山からホースで里まで引き込みました。元々は、畑の水をためておくための池だったんです。その後、田んぼに潜って土を耕してくれるドジョウをため池に放流。さらに1kg3000円で取引される高級魚ホンモロコを放流し養殖をはじめました。
 ため池での養殖のこだわりはエサをやらないこと。自然に近い環境なので光合成で植物プランクトンが増え、エサとする動物プランクトンも増えます。
 放流した、ホンモロコやドジョウは動物プランクトンを食べて大きくなるという自然循環型の養殖なんです。
 豊かな自然環境が出来上がった里のため池。一度放流しただけのドジョウやホンモロコが何代にもわたり命を育む場所になりました。千葉先生は、自然環境に近い里の環境なら養殖でメスが生まれるのではないかと考えたんです。

 今年6月。千葉先生の研究室で10センチまで育てたまだオスメスの分かれていないウナギの稚魚を里のため池に放流。その数およそ100匹。
 2か月後。10センチの稚魚が、どれくらい大きくなったのか千葉先生と確認してみることに。
 仕掛けた罠の中で、見つかったのはドジョウや、ホンモロコばかり。でも、その稚魚がウナギのいいエサになっているはず!
 そして、ウナギを1匹捕獲成功!6月に放流した時と比べると、かなり大きくなっています。オスかメスかが分かるのは、20センチから30センチに成長したころ。大きさを測ってみると、ギリギリ超えていますが、もう少し、大きくなるのを待ってから判別することに。

 今回千葉先生は、ウナギを一網打尽にする秘策を用意していました。
 ウナギの伝統的な漁法である、積石漁。伝統的な積石漁では、川などの底に金網を敷いてその中に石垣を作りエサを撒いてウナギをおびき寄せます。ウナギは狭い所を好む習性があるため、一週間ほど放っておくと、石垣の中に住み着きます。そこを、石垣ごとクレーンで引き上げ、一気に捕まえようという作戦。

 早速、引き上げ準備。用意したのは、4tクレーン車。網のワイヤーをクレーンにつなぎ準備完了。網が落下するハプニングもありましたが、スタッフ総出で網を引き上げることに成功!けれど、捕まったのは、ウナギかと思いきやドジョウばかり。今回の捕獲作戦はウナギがうまく捕まらずに大失敗。
 しかしこんなこともあろうかと収穫祭の4日前。事前にウナギを確保するため、池の水を抜く“かい掘り”という方法でウナギ獲りをしていたんです。
 手伝ってくれたのは今回小屋作りで大活躍し、収穫祭でも絶品のイノシシ肉をごちそうしてくれたりと何かとお世話になっている西野さん。水が抜けた泥を丹念に掻き分けていくと、ウナギ発見です!さらに!2匹目のウナギも発見!西野さんが捕まえてくれたのは合計6匹。わずか5か月で10cmのウナギが大きいものでなんと35cmに。

 見た目ではオス、メスがわからないウナギ。ウナギの性別を確認するには、お腹を開いて生殖腺を見るしかありません。ウナギのメスにはビラビラとカーテン状になった卵巣があり、卵巣のあるなしで、オスメスがわかるんだそうです。6匹の中に1匹でもメスがいれば大事件です! 果たしてメスは出るのでしょうか?
 お腹を切って判別するということで、今日はウナギ捌きの達人ウナギ職人の高木さんにお越しいただきました。創業54年の老舗、うなぎ専門店の“鮒与”ミシュランガイドで4年連続ビブグルマンに輝くお店です。この店で、養殖ウナギを年間1万匹以上捌いているのがウナギ捌きの達人!高木嘉一さん。
 早速高木さんにウナギを捌いてもらい、専門家の千葉先生がオスメスを厳正に判定します。
 すると、卵巣でメスを確認。里の池で普通養殖では出ないメスが育っていたんです。

 続いて2匹目のウナギの判定でも、卵巣がありメスだということが分かったんです!
 その後千葉先生が残りのウナギもすべてオスメスを判定。なんと6匹のウナギのうち5匹がメスという誰も予想しなかった驚きの結果に!昔ながらの自然環境に近い里のため池で、ウナギを絶滅の危機から救うかもしれない大きな意味のある実験結果がでました。かがくの里では ニホンウナギを救うべく今後も養殖プロジェクトを進めていきます!

 楽しい収穫祭はまだまだ盛りだくさん!里で採れた大豆を使って初めてのみそづくりに挑戦。里のみそで作った味噌汁そのお味は?さらに所さんが持っているギターも実は里で出来たもの!?お楽しみに!