第1474回 2019.05.05 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 水中の動物 |
荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画「目がテンかがくの里」!去年から続くウナギの養殖プロジェクトに新たな進展がありました!生き物大好き桝アナウンサーも駆け付け、里のため池で養殖したウナギがオスになるかメスになるか、1年がかりの大実験がついに完結!絶滅危惧種の二ホンウナギを救うことに繋がるかもしれない世界初のチャレンジを行います!
悪夢蘇るウナギの捕獲大作戦!
ウナギ絶滅の危機が叫ばれる中、かがくの里で始まったウナギの養殖プロジェクト。一般的な養殖場で育てると、ほとんどがオスになってしまうウナギ。そこで、自然環境に近いかがくの里の池で育てたら、メスにもなるのでは?という気の長い実験です。そもそも養殖のウナギは、毎年2月ごろ、まだ性別が分かれていないシラスウナギという稚魚を捕まえ、養殖したもの。この稚魚を北里大学が実験用に買い入れ、そのうち100匹を去年6月、千葉先生が、かがくの里のため池に放流しました。以前から養殖しているドジョウやホンモロコ、ウナギと同時に放流したスジエビなど豊富なエサがある池で、育てる事5か月!11月の収穫祭で池で育ったウナギをさばき、オスかメスかを調べたところ…なんと、メスになったウナギがいたんです!
人工的にメスが養殖できる可能性を示したこの実験。最終的に河川にメスを放流できれば、絶滅危惧種の二ホンウナギを増やせるかもしれない、ということで、ネットニュースなどでも話題になりました。収穫祭から1か月後。実験結果について改めて千葉先生に話を聞きに行くと、統計のためにもっと多くのデータが必要だと言います。収穫祭の前に捕まえられたウナギは6匹。そのうち5匹がメスという驚きの結果でしたが、統計的には最低でも20匹、つまりあと14匹のデータが必要だというのです。それを聞いたスタッフの脳裏に、あの悪夢の日々が蘇りました。
収穫祭の2か月前から、オスメス判定のため、千葉先生と、ありとあらゆる手を使い、ウナギを捕まえようとしたんですが…なんと2か月かけても、池に入れたはずのウナギが一匹も捕まえられなかったんです。追い詰められた収穫祭3日前。最後の手段として、池の水を全部抜く「かいぼり」を決行!西野さんたち、地元のウナギ捕り名人も呼びました。すると…ようやくウナギを捕獲!日が暮れるまで、全員で泥んこになりながら、くまなく探しましたが、見つかったウナギは6匹だけ…。正直、スタッフは「ひょっとしてもう1匹もいないのでは」と思っていました。
そして迎えた2019年3月。千葉先生は、池の中でまだ探していない「ある場所」にウナギがいるはずだと言い出しました。それは、池の水が地面に吸い込まれないよう、底に張ってある防水シートの隙間。元々、この池は農業用水のため作られたもので、シートもツギハギで隙間があります。先生はウナギがこの隙間の裏に隠れていると言うんです。
そこで、まずは全ての池の水をポンプでくみ取り、田んぼの周りに掘ってある水路に逃がします。それに加えて今回は、このシートを全てはがして大捜索!もちろん西野さんたちウナギ捕り名人にも協力して頂きます。水が減ってきたところで、まずはドジョウやホンモロコを救出。と、その時!池の水を抜き終わる前なのに、阿部さんが「ウナギを発見した!」と言いました。近づいてみると、あれだけいなかったウナギがそこに!しかも、この里ウナギは腹が黄色になっており、これは天然環境で育ったウナギに見られる特徴だそうです。
つまり、こんなに黄色い里ウナギは天然に近いってことなんです!一説には、この黄色い色から「ムナギ」と呼ばれ、それが「ウナギ」の語源になったのだそう。そして、いよいよシートの裏を大捜索!千葉先生が目をつけたシートの裏を探してみると…体長なんと43cmの大きく育ったウナギが!その後もシートを剥がしていくと…先生の読み通り、続々とウナギが!最終的に23匹のウナギを捕獲。
スタッフが誰も予想していない結果になりました。ちなみに自然環境であれば、シラスウナギは鳥や大きい魚のエサとなり、おそらく5%前後しか残らないため、30%残ったのは歩留まりとして十分残ったと言えるのだそうです。
桝アナとウナギのオスメス判定実験!
捕獲した23匹の里ウナギは、オスメス判定実験を行うため、千葉先生が勤める北里大学で保管中です。そこへ向かったのは・・・生き物大好き、桝太一アナ!東大の学生の時、ウナギによく似た「マアナゴ」を研究していた桝アナは、かがくの里のウナギプロジェクトにも大注目してたみたいで、この日もハイテンション。2人はさっそく千葉先生がいる大学の養殖場へ行きます。そこには、ナマコやウーパールーパーの姿が。桝アナのテンションが上がりっぱなしです。そこへ、千葉先生がいらっしゃいました。
先日捕った里のウナギたちを見せてもらうと・・・同じ時期に生まれた同期なのに、随分と大きさに差が出てしまっています。ウナギは、同じ年齢群で同じ生まれなのに、集団で生活すると、そのうちの5%は極端に成長が良くなり、逆に5%ぐらいは全然成長しないんだそう。そのうち、成長したやつだけをまた集めて飼育すると、その中のまた5%ぐらいが全然成長しないという、不思議な現象が起こるといいます。
千葉先生は、今回捕れた里ウナギのうち、大きいものを別の水槽に移しておいたそうで、それを北里大学で育った同じくらいのサイズの養殖ウナギと一緒にして比較していました。塩ビ管に入っている里ウナギを出してみると・・・養殖ウナギとは違い、黄色に輝いています。
さぁ、いよいよ運命の「里ウナギオスメス判定実験」。ウナギのオスメスは生きたまま確かめる方法はなく、お腹をさばき、生殖腺を見ないと判定できません。浮袋の隣に、ビラビラとカーテンのようになった卵巣があればメス。数珠のような精巣があればオスです。
まずは1匹目、その結果は・・・なんとメス!メスの証拠となる卵巣も小さいですが確実にあります。
今は小さな卵巣ですが、産卵期になるとこれが膨らみ、産卵回遊中は実際に体重の2割~3割にまで大きくなるといいます。これで、通算7匹中6匹がメス。
かがくの里はウナギがメスばかりになる特殊な場所なのか、とも思えてきた8匹目。今度は・・・オスでした!メスウナギでは薄く赤い生殖腺が見えていたのに対し、オスウナギの生殖腺はほとんど見えません。でもよく見ると、浮袋の根元のところにオスウナギの生殖腺、精巣がありました。
ようやく判定の結果、オスウナギが1匹に!その後も実験を続けると、オスの数が段々と増えてきました。その結果はというと・・・12匹中7匹がメスに!
まだ20匹に達してはいないので、引き続き研究が必要なのですが、ウナギが稲田養殖によって正常な性分化が起こることを世界で初めて“ほぼ”実証した、ということになんです。
里ウナギと養殖ウナギの味の違いは!?
今回、オスメス判定実験でさばいたウナギ。それを持ちこんだのは、おあつらえ向きにも、北里大学の目の前にある店「ふぐ、うなぎ、一進」。どちらもシラスウナギから育てたものですが、里の池で育った里ウナギとそのまま北里大学の水槽で育った養殖ウナギを食べ比べて、味にどんな違いがあるのか、調査します。千葉先生が捌いた里ウナギは腹開き、職人さんは背開きにして、代々受け継いできたお店秘伝のタレにつけてうな重にしてもらいました!
まずは養殖ウナギを一口。続いて、里ウナギの方を食べてみます。阿部さんに違いを聞いてみると、養殖は柔らかく、食べた時に身が崩れていく、溶ける感じがあるのだそう。一方、里の方は身がしっかりしていて阿部さん好みな味。千葉先生も、脂が程よく載っていて、里の方がお口に合ったみたいです。里ウナギも研究所の養殖ウナギも、元は北里大学が研究のために買った、同じシラスウナギですが、1年間、違う環境で育ったことで、味に大きな違いが生まれたようです。
千葉先生が言うには、味に違いが生まれたのは、食べている餌が原因である可能性が高いとのことで、今後はエサと里ウナギの味の関係も研究したいと仰っていました。
2019年のウナギ養殖プロジェクトも、凄いことになるかもしれません!