第1475回 2019.05.12 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 水中の動物 自然・電波・鉱物・エネルギー |
荒れ果てた土地を切り開き、科学の力で豊かな里山を蘇らせる、長期実験企画「目がテンかがくの里」!2019年のかがくの里は、各プロジェクトが続々と進行しています!ウナギの養殖プロジェクトでは、ウナギ同士のケンカが勃発!?そして、里についに念願の“あの生物”がやってきました!春を迎え、いろんな企画がスタートしたかがくの里、目が離せません。
放流に向けて!ウナギのケンカ実験
前回の放送に引き続き、北里大学で行われている、かがくの里のウナギの分析。その最終目標は、現在、絶滅危惧種に指定されている二ホンウナギの数を増やすのに役立つことなのです。ウナギの数を増やすための一つの方法が「放流」。しかし、一般的な養殖場で育てると、99%がオスになってしまうという問題があります。養殖場で育ったウナギを放流しても、オスばかりでウナギの数は増えないのです。
そこで、去年から取り組んでいるのが、自然に近い里の池なら、メスになるかもしれないという大実験。その結果、オスメスの判断がついた12匹中7匹がメスという素晴らしい成果が得られました!
ところが、これで晴れて里のウナギを放流できるわけではないそう。里でウナギが育つということは証明されたのですが、それが実際に厳しい自然環境を生き抜く、ウナギ本来の性質を持っているかどうかを確かめなくてはいけないんだそうです。自然で生きるために必要なウナギ本来の性質とは?
千葉先生に見せてもらった映像に映っていたのは、北里大学で飼っている体長およそ15cmの幼い養殖ウナギが2匹。すると、次の瞬間…1匹のウナギがもう片方に噛みついて引っ張り出しました!このウナギは、ケンカをしてたのだそうで、ウナギは自分以外のものを見つけると、噛み付いて執拗に振り回し、やっつけようとするのだとか。
しかし、養殖のウナギがケンカをするのは幼魚の時期まで。成長すると、人工的な環境に慣れたせいか、ケンカ行動は見られなくなるそうです。養殖ウナギには、縄張りを張ってケンカする必要がないのです。実はこの点が、ウナギ養殖プロジェクトの最終目標である川に放流する上で、最も心配なこと。放流する川には、成長しても縄張り意識が消えず、攻撃性が高い天然ウナギがいます。そのため、養殖のウナギは温室育ちで河川に流しても適応できず、天然ウナギとの競争には負けて、資源増殖に結びつかないと考えられているのです。実際、ほぼ同じ大きさの天然ウナギと養殖ウナギを同じ水槽に入れ、実験したところ、養殖ウナギがボロボロにされたそうです。
そこで千葉先生は、天然に近い環境で育った里ウナギで養殖ウナギより攻撃性が高い、逞しさ、野性味を持ったウナギができるのか、を試したいと言います。ゆくゆくは天然ウナギと戦わせて、引き分けかそれ以上かであれば、放流魚としての適性も高いと判断できます。今後はまず、里ウナギ対養殖ウナギ、続いて天然ウナギとのケンカの様子を撮影し、それぞれの攻撃回数を数えて、里ウナギのたくましさを見極めます。まだまだ放流までは遠い道のりなんです。
魅力的な里山へ!初めての植樹
去年から本格始動した里山再生プロジェクト!人が手を加えなくなり、木も伸び放題で日差しも当たらなくなった里の裏山。そこから木を伐りだし、光差し込む豊かな里山を取り戻そうという試み!去年は地元森林組合の協力の下、間伐を行い、そこで出てしまう間伐材で素敵なテーブルとイスを作ったり、立派な小屋を建てたりと、人が手入れをしながら山の恩恵にあずかる、本来の里山のありかたに近づけようと頑張りました!
そして2月下旬、かがくの里山に木材利用の専門家、村田先生と樹木を研究する糟谷先生の2人がやってきました。間伐で歩きやすくなった山道を進むと、去年5月、伐採してバットにしたホオノキの切り株からたくさんの芽が出ていました!
これは、新しい世代が一気に芽吹く、「萌芽更新」という現象なんだそう。出た芽の全部が大きくなるわけではなく、結局栄養状態の良いものだけが残り、放っておけばそれらしい形になるのだとか。樹齢を重ねた木は、伐ることで若返ることができるんです。
そして、かがくの里山の現状を見て回った先生たちからちょっと不思議な提案が。それは、また新たな木を植えたらどうか、というものでした。せっかく間伐したのに、また木を植えるのは勿体ない気がします。しかし、村田先生が言うには、里山には使える木が生えてないと、人が関与しなくなってしまうため、薪や炭を使わなくなったのに燃料に適したコナラを生やすより、日頃の生活で使うような木が生えてた方が、また管理できて、人との繋がりができてくるのだそう。つまり、利用しやすい魅力的な木を植えて、人が手入れしたくなる里山にしようという作戦です!では、今の人が利用しやすい木ってなんでしょう?
2か月後、樹木の専門家、糟谷先生が用意してくれたのは5種類の苗木。
まずは、日本人が縄文時代から食べていたと言う「オニグルミ」。実がなれば、クルミの実として美味しく食べることができます。その他に植える、「エノキ」と「ムクノキ」も人が食べられる実をつけます。エノキとムクノキは同じニレ科で、その小さな実は、干し柿のような味なんだとか。さらに、「ハリギリ」という、タラの芽に似た新芽をつける、名前の通りに針のついている木も。つまり、先生が用意したのは食べられる木。確かに、おいしいものがあれば里山に入りたくなるかもしれません。残る最後の1種類は、昔から民間薬として利用されてきた「センダン」という木。葉っぱを農薬がわりに使ったりしたこともあるという、天然の虫よけにもなる、優れものなんです。
令和元年を記念して、さっそく間伐で日あたりがよくなった場所に5種類を植樹。まずは30cmほどの穴を掘り、そこに苗木を植えたら、足で踏み固めます。これで根付きがよくなるそう。その後、5種類の木をそれぞれ3本、計15本植えて、里山初の植樹完了。未来へつなぐ里山へ!気の長~いプロジェクトも始まりました!
そしてもう一つ、里山再生プロジェクトで嬉しいニュースが!里山には、まだまだ整備が必要な場所があり、今年も阿部さんが間伐をしていきます。そこで今年1月、地元の林業家、西野さんに阿部さんが弟子入り。色んな木を伐って経験を積みました。その中で、泉福寺というお寺の境内で、高さ40mのスギを伐採。実はこの伐採にはある理由が。樹齢300年を誇るシダレザクラが、スギのせいで日陰になり、花の付きが悪くなっていたので、日の光を当てて、美しい花を咲かせたいというのです。中には、そのまま切り倒すと道路のアスファルトを壊してしまう木も。そこで、クレーンで吊って伐る、吊るし伐りという特殊技術を職人さんに見せていただき、全てのスギを伐採したんです。
そして迎えた4月、たまたま里に来ていた露久保先生とサクラを見に行きました。そこには、日の光を浴びて満開となった枝垂れ桜が!去年の写真と比較してみると、確かに今年の方がたくさん咲いてます。
花見のお客さんも増えて、少し地元の役に立てました!
ついに、あの生物が里にやってきた!
農業の専門家、高橋先生が、今年畑で行うある挑戦を行いたいと発表しました。それは、ゴマやヒマワリ、菜種といった植物を栽培して油を採れるようにすること。油の歴史を記した製油録によると、日本人は1800年前、弥生時代には木の実から油を取っていたそうで、古くから植物油は利用されてきました。 今年は、里でゴマ・ひまわりなどを育てて、植物油作りに初挑戦!おいしい天ぷらが食べられるかもしれません。
他には、伝統野菜にも挑戦する予定。伝統野菜とは、日本各地で古くから愛される、土地の風土や気候から独特の姿になった品種のこと。群馬の太いネギ、下仁田ネギや愛知や岐阜の細い大根、守口大根などが有名です。かがくの里では以前、地元の伝統野菜であるピンク色が独特の“里川カボチャ”作りにも挑戦しました。今年は全国各地から種を頂き、かがくの里で、変わった伝統野菜作りにも挑戦します!他にも色々、作物を育てる予定。今年も、秋の収穫祭が楽しみです!
それから1週間、高橋先生が、今年最初の植え付け作業をスタートさせました。最初の作物は、ジャガイモ。 ホクホク食感で人気のキタアカリに、煮崩れしにくいため煮物に向いた品種、とうや。そして皮が赤いジャガイモ、レッドムーン。たまたま遊びに来ていた、地元のスーパーマン、西野さんにも手伝ってもらい種芋の植え付けが完了!
農作業を終え、帰ろうとしていたその時、阿部さんが蜂を見つけました!阿部さんと西野さんの元に駆け寄ると…二ホンミツバチの姿が!
その後も、花粉ダンゴを足につけたニホンミツバチがゴーラという木箱に続々と入っていきます。中では、子育てが始まってるようです。普段、私たちが食べているハチミツは、セイヨウミツバチという養蜂に向いた外来のハチから採取した蜜。一方、在来種で野生の二ホンミツバチのミツは、たくさん取れないのでとても貴重なんです。蜜を取るためには、こうした木箱に入るのを待つか、自然にできた巣から取るしかありません。
なぜこんな木箱が里にあるかというと、それは今から2年前、和歌山県で始まりました。阿部さんが訪ねたのは、二ホンミツバチの養蜂名人、中路さん。見せてもらったのは、山の崖の上に仕掛けられた、ゴーラと呼ばれる名人特製の木箱。その中には、二ホンミツバチの、ロウで出来た巣が。
二ホンミツバチの養蜂は、春に分蜂と言う、新たな巣をつくるタイミングで野生のミツバチがゴーラに入るのを待つしかありません。しかし、警戒心の強い野生の二ホンミツバチは、なかなかゴーラに入ってくれません。でも、名人のゴーラにはある秘密があります。それは、一度ミツバチが巣を作っている、ということ。以前、ミツバチが巣を作ったことのあるゴーラには、再び、ハチが入る可能性が高くなるのだそうです。
そこで、阿部さんが名人のゴーラを譲ってもらえるように、ダメ元でお願いしてみると、なんと、ミツバチが住んだことのあるゴーラを頂くことができたんです!
その後、大切に持ち帰ったゴーラをかがくの里に設置。スタジオと中継を繋ぎ、所さんが見守る中、ゴーラの中を開けたんですが…中に蜂はいませんでした。その後、2年音沙汰なし。スタッフもゴーラの存在を忘れかけていました。そんな中で、まさかニホンミツバチが入るとは!ということで、今年は貴重な二ホンミツバチの養蜂も始めちゃいます!