放送内容

第1517回
2020.03.15
夜にはたらく乗り物 の科学 物・その他

 人々が寝静まった夜。人知れずせっせとはたらくその正体は…街の安全と景観を守る“夜にはたらく乗り物”たち!
 4台1チームで路面を清掃しながら走る乗り物界のゴミバスターズ!夜の線路に車が走る!?滅多に見られない特殊車両が!さらに!真夜中の空港で目撃した飛行機の安全を守る超ハイテク車両とは!
 今回の目がテンは、珍しい車両が続々!「夜にはたらく乗り物」を科学します!

鉄道ではたらく乗り物 マルタイ・BR

 終電を終えた、午前1時半。向かったのは、埼玉県・南浦和。迎えてくれたのは、線路の維持管理を担当する黒嵜さんと、メンテナンスを行う佐々木さん。
 見せていただくのは、「マルチプルタイタンパー」、通称マルタイと「バラストレギュレーター」、通称BRの2台。夜の鉄道でしか見られないマルタイとBR。一体どんな乗り物なのか?
 さっそく線路内へ案内されると、強い光を放ち、遠くからやってきたマルタイ。日々生じる線路のゆがみ。それを正確に直していく特殊車両です。

 線路は、レールとマクラギそして砕石で構成されています。電車が何度も通過すると、衝撃により砕石が動きます。すると、レールやマクラギが徐々に沈み、やがて線路にゆがみが。安全な運転と乗り心地の良さを保つため、区間ごとに数年に1度、ゆがみを直す作業が行われているんです。
 それではさっそく作業開始。最初の作業は、「レールのゆがみ測定」。車体の12箇所に取り付けられた測定用の車輪で測ります。

 車輪をレールの上に設置し、走行しながら上下左右のゆがみを調査していきます。ゆがみの度合いは、車体先頭の操縦席でチェック。
 直す前の線路上下のゆがみはこちら!

 縦はゆがみの幅、横は走行距離を表しています。ゼロと書かれた真ん中の線がレールの適正位置。つまり、この線がゼロに近づくほど、ゆがみが少ないということ。この日確認された、最も大きなゆがみは5ミリ。
 このわずかなズレも見逃しません。ゆがみを確認したら、続いて車体中央部分でレールを修正。ローラーでレールをマクラギごと持ち上げ、元の正しい位置にキープ。
 でも、これではマクラギの下にすき間ができてしまいます。そこで、リフティングユニットの後ろにあるツールと呼ばれる部分で空いたすき間に石を押し込みマクラギを正しい位置に戻していたんです。

 そもそもレールの下にある砕石にはどんな役割があるのでしょうか?ひとつは、列車の荷重をクッションのように受け止める役割。線路に使われる石は、岩石から切り出し、直径2センチから6センチに砕いたもの。それらの石を地面に敷くと、角が尖っているため、石同士にすき間が。実は、石がクッションになるのは、この“すき間”がポイント。

 つまり、電車が通過した際、砕石の層が形を変えて沈み込むことで衝撃を吸収し、和らげていたんです。さらに、細かい砕石を多数敷き詰めることで、重さを分散させる効果も!

 作業はこれで終わりではありません。続いて登場したのは、バラストレギュレーター、通称BR!

 マルタイの作業後は、砕石が辺りに散らばってしまうため、元の場所に整える必要があります。まずは線路内に石を補充。作業するのは、運転席真下の部分。線路脇に散らばった砕石を集めたら、それらを回転ブラシで、線路内に入れていきます。
 さらに、車両後部では、余分な石を線路脇に運び出し、ブラシでレール周りやマクラギの上を掃除。こうして、作業開始から2時間半が経過した午前4時。すべての作業を終え、ふたたび基地へと帰っていきました。夜の駅ではたらく二台の特殊車両は、線路のゆがみを直し、 電車の安全を守っていたんです。

鉄道ではたらく乗り物 トーリス

 日々、電車を安全に走行させるためには線路だけでなく、トンネル内の点検も重要な作業。そこで活躍するのが「トンネル覆工表面撮影車」、通称トーリス!

 線路内での作業ですが、トーリスは、道路を走る車から、線路の上を走れる乗り物になる特殊車両!始発までの限られた時間内で、効率良く作業を行うために作られました。終電前、トンネルの近くまで移動し、終電が終わると、すぐさま線路内へ。
 実際に撮影が始まると、トーリスが放つ緑色の光が。実はこれ、車両の後方にあるレーザーを使ってトンネルの表面を撮影。ひび割れなどを調査しているんです。

 その仕組みはコピー機のスキャナーと同じ。光を当てて情報を読み取り、画像データとして取り込みます。広いトンネルでも、トーリスを走らせるだけで、小さなひびも見逃さず、簡単に調査することができるんです。
 今回特別に、貴重な車内をのぞかせていただきました。撮影された画像は、リアルタイムでモニターに表示されます。トーリスは、トンネル事故を未然に防ぐ変形型の特殊車両だったんです!!

空港ではたらく乗り物

 午後11時半。すべてのフライトを終えた滑走路。案内してくれるのは、滑走路や誘導路のライトを管理する国土交通省の藤井さんと古賀さん。
 夜の空港では、舗装内に埋め込まれたライトの掃除を行っています。羽田空港の滑走路には、およそ9000灯ものライトが埋め込まれているんです。
 日中。飛行機は、白線を目印に着陸しますが、夜になると、真っ暗。代わりに目印となるのがライトです。パイロットに滑走路の形状や幅、方向などを伝える、夜のフライトには欠かせないものなんです。
 掃除は、深夜から早朝にかけての限られた時間。そこで活躍するのが、夜の空港ではたらく、空港関係者しか見ることのできない 超レアな「埋込灯器清掃車」!

 滑走路や誘導路のライトをキレイにするためだけに作られた特殊車両です。
 ライトは、雨風や土埃のほか飛行機のタイヤが接触した際のゴムくずなどにより汚れます。飛行機の安全なフライトのためには、少しの汚れも許されません!
 さっそく作業開始。まずはライトの上に車両を止めると、次の瞬間!ライトに何かを吹きかけています。ライト1灯につき、掃除時間はわずか20秒。

 掃除する前と後では、光の見え方がこんなにも!

 では一体、ライトに何を 吹きかけていたのでしょうか?
 実は、ドライアイスで掃除をしていたんです。車体後部には、ロボットアームが設置されており、このホースの先端からドライアイスが噴射されます。
 わずかに見える、霧のようなものがドライアイスの正体。

 長さ10ミリ、幅わずか3ミリとかなり細かく、それを音速とほぼ同じ、秒速300メートルの超高速で一気に噴射。すると、ホース内で砕けたドライアイスが細かい粒になり、霧のように噴射されるという仕組み。では、ドライアイスでなぜこんなに汚れが落ちるのでしょうか?
 実は、ドライアイスを吹きかけると、急激に冷やされることで、汚れが縮みます。そして、小さな亀裂がいくつもでき、そこへ入り込んだドライアイスが液体にならず、直接気体になることで体積が膨張。汚れが吹き飛びキレイになるんです!
 しかも、ゴミが出ず、水拭きの必要もないため、短時間で多くのライトを掃除できる画期的な掃除方法だったんです!
 この一台で、一日におよそ220灯ものライトを掃除し明け方、作業は終了。埋込灯器清掃車は、画期的な掃除機能によって、多くのライトを効率よく掃除していたんです。