放送内容

第1520回
2020.04.05
瞬間ハンター・冬の屈斜路湖 の科学[後編] 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 四季折々の変化に富んでいる日本。そこでは、様々な条件が重なった時にのみ起こる美しい自然現象や、人が作り出す珍しい現象が数多くあります。そんなレアな現象の瞬間を撮影する新企画、その名も、“瞬間ハンター”。
 瞬間ハンターとなるのが、金丸慎太郎さん。そして、今回のミッションの地は、北海道、屈斜路湖火山活動によってできた日本最大のカルデラ湖です。 厳冬期の2月1日から始まった12日間に及ぶドキュメント!
 今回の目がテンは…、貴重な瞬間を狙え!瞬間ハンター冬の屈斜路湖、後編です!

氷の現象&フロストフラワー

 朝一番に屈斜路湖の凍結の状況を確認しに向かうと、訪れた初日は、全く凍っていなかった屈斜路湖ですが、その4日後には湖の奥に薄い氷が張っているのが分かります。この凍結が始まることで、ある珍しい現象が起こるかもしれないのです。その現象を探します。
 薄い氷が岸に集まる、寄せ氷という現象を発見!まるでガラスが積み上げられたような不思議な光景。

 寄せ氷とは、湖面に張った薄い氷が、風や波などで割れ、強い風によって、岸に集まる現象。湖が凍り始める時期に見ることができる貴重な瞬間です。氷は一つ方向に割れやすい性質を持ちます。湖面に作られた薄い氷は、その性質が現れやすく、このような角ばった形になったのです。
 そして、翌日。この日も、凍結状況を確認。すると!毎年、屈斜路湖に飛来するオオハクチョウも氷の上に。昨日より、さらに凍結が進んでいます。そして、湖面の凍結が進むと、さらに珍しい現象が見られるんです!
 それは!凍った湖面に咲く花、フロストフラワー。フロストフラワーとは、夜から明け方にかけて、雪の積もっていない凍った湖面に、花のような霜が一面に発生する現象。発生条件は、気温がマイナス15℃以下、風がないこと。さらに、日が昇ると気温が高くなり、溶けてしまうため早朝しか見ることができない貴重な現象です。
 この出来上がる瞬間の撮影にチャンレジします。フロストフラワーが発生しやすい、薄い氷が張り、雪の積もっていないこの場所を見つけ、夜から観測することにします。
 その日の夜、日中に目星をつけていた場所に向かいます。果たして、フロストフラワーはできるのでしょうか。午前5時、確認しにいきますが…。その後、一向にフロストフラワーができる気配はなく、日の出前まで、粘ったのですが、瞬間を捉えることはできませんでした。

屈斜路湖にいる野生動物

 屈斜路湖周辺で見られるのは、雪や氷の現象だけではありません。次なる狙いは、この周辺に暮らす野生動物たち。今回は、人が見ていない自然な姿をカメラにおさめます。金丸さん、動物が通りそうな撮影ポイントを探していると、多くの動物の足跡を発見!足跡が多く残るこの場所にカメラを設置することにしました。
 このカメラは、動物の体温を感知して自動的に撮影できるもの。動物がカメラの前を通れば、その姿を捉えられます。さらに、もう一つ気になる足跡を発見したので、ここにもカメラを設置。合計2台のカメラを一晩置いて、動物を狙います!
 そして翌日。早速、映像を確認。しかし、映っていたのは、カメラを設置したときの金丸さんたち。その後も、日を改め、カメラの設置場所を変えるなどチャレンジしていきますが、何も映っていません。3日かけても成果なし。拠点で英気を養い、カメラを設置して、4回目の挑戦へ。諦めかけた、その時!深夜1時、キタキツネが何かをしている様子が映っていました。このキタキツネは一体なにをしているのでしょうか?
 旭山動物園の坂東園長によると、雪の下に隠していた餌を掘り起こし、食べている様子とのこと。人の前では、警戒してあまり見ることのできない映像のようです。屈斜路湖にいる野生のキタキツネの姿をとらえました!

冬の屈斜路湖で幻想的な瞬間を撮影

 朝7時。この日は、カヌーにのって、湖の上から現象を狙っていきます。金丸さん、出発準備をしていると、諦めかけていたあの現象に出会えます!なんと撮影できなかった、湖面に咲く花フロストフラワーを発見!

 結晶が折り重なり、1つ1つがまるで花のよう。湖面一面に、氷の花が咲いています。めったに遭遇できない貴重な映像です!

 さらに、カヌーの出発準備をしていると、まったく想定していなかったとても貴重な瞬間に出会うことができました。湖が川に流れ出す場所で水の流れにそって動く、薄い氷。氷と氷がぶつかる音も聞こえます。そして、氷の上に、さらに氷が重なり合っています。

 カヌーに乗りこみ、湖の上からも見て見ることに。凍っている部分と凍っていない部分が混在し、水面が、まるで沸き立っているようにも見えます。

 この不思議な現象は一体何なのか。今回の撮影終了後、専門家に映像を見てもらうことに。氷や雪の現象を研究している北見工業大学の亀田教授。南極で越冬観測を行うなど、雪や氷のスペシャリストです!
 早速、映像を見てもらうと、なんと、先生も初めてみた瞬間の撮影に成功していたんです!では、これは一体どういう瞬間なのでしょうか。
 撮影した映像は、湖が凍結する最初の段階ではないかと先生は言います。まさに湖が凍り始める瞬間の状態。非常に珍しい光景に出会えたんです!
 金丸さんそのあとも、カヌーで撮影を続けていると、幻想的な風景に出会えました。立ち込める白い霧は、けあらしと呼ばれる現象。

 水面より非常に低い温度の空気が流れ込んでくると水面から蒸発した水蒸気が冷やされて湯気のような霧が発生するんです。
 こうして、12日間にわたる過酷な撮影で金丸さんは冬の屈斜路湖ならではの珍しい瞬間に出会うことができました。これにて、瞬間ハンター第1弾のミッションは終了です。