放送内容

第1521回
2020.04.12
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 食べ物

 荒れ果てた土地を切り開き、かがくの力で豊かな里山をよみがえらせる、長期実験企画。それが、「目がテン!かがくの里」。農業の専門家、高橋先生から発表された2020年の栽培計画!
 南国の作物サトウキビ!?そもそもサトウキビって、どんな植物なのか?本場沖縄の、ある島で大調査!さらに、パパイヤにも挑戦!パパイヤって、熱帯のフルーツですけど大丈夫?
 里の畑が南国に!?果たして本当にできるのか!?大調査スペシャル!

サトウキビの本場、多良間島へ!

 今年の「かがくの里」栽培計画!玉ねぎに里芋と、去年うまくいった作物は今年も栽培。そして、超意外な作物が…サトウキビ!本当に育つの?
 今でこそ、沖縄や鹿児島など、温かい地域でしかサトウキビは作られていませんが、実は江戸時代、その栽培や砂糖を作る技術の開発が、江戸城、今の皇居で行われたそうです。
 ミネラルやビタミンが豊富で健康的だと、最近話題の黒糖!この黒糖も、普段、私たちが使う白い砂糖も、原料は多くの場合、同じ、サトウキビ。作り方が違っていて、サトウキビのしぼり汁を煮詰めたものが黒糖。しぼり汁から砂糖以外の成分を取り除き、結晶だけにしたものが白い砂糖ということ。

 黒糖調査という名目で高橋先生と向かったのは多良間島!宮古島でもサトウキビを育てていますが、ほとんどが、白い砂糖の原料になります。一方、多良間島は、黒糖作りの本場中の本場なのだそう。
 実は、サトウキビのしぼり汁のみで作られる純粋な黒糖は、それほど流通していません。多くは「加工黒糖」と言われる、糖や蜜などを加えて甘さを調整して作られる黒糖なのです。沖縄県では、沖縄のサトウキビだけを使った純粋な黒糖を“沖縄黒糖”と呼ぶのですが、沖縄黒糖の最も多い出荷量を誇る工場があるのが、多良間島。多良間島は、高いところでも海抜34メートルしかない、ほぼ平らな島。ここに、およそ1000人の人々が暮らしています。集落は島に一つだけで、なんと島の半分がサトウキビ畑!そんな多良間島で調査開始。

 サトウキビ畑で出会ったのは、サトウキビ農家の下里さん。夏のイメージが強いサトウキビですが、収穫時期は冬場、12月から3月。サトウキビは、光合成で作った糖分を、夏に葉を伸ばすためのエネルギーとして、茎にため込みます。つまり冬の時期が、糖分が最もたまった状態で甘いのです。
 そもそもサトウキビって、どんな植物なのでしょう?
 植えてから2か月経ったサトウキビを掘り返すと、茎のふしから芽が出ています。

 やがて茎は4~5本生えてきて、1年から1年半かけて成長。11月ごろから気温が低下してくると、サトウキビは茎に糖分をため始め、収穫となるのです!
 今回、かがくの里サトウキビ栽培の計画は、寒冷地に強い品種の苗をもらい、関東地方が温かくなってくる4月に畑に植え、7か月後、収穫祭の直前11月に刈り取ります。

サトウキビはどうやって黒糖になるの!?

 多良間島で収穫されたサトウキビはすべて、宮古製糖多良間工場に集められ、黒糖の原料になるそうです。工場の下地さんに案内していただきます。
 工場に運ばれたサトウキビはまず、30センチ程度の長さに切ってバラバラにします。その後、糖をたくさん含んだ茎以外を取り除いていくのは、手作業!取り除くのは、サトウキビの葉っぱと茎の間にある「梢頭部」。この部分には、黒糖を作るのを阻害する成分が含まれています!だから仕分けはとっても大事!その後、茎を大型カッターで細かくして、いよいよ絞っていきます。2.5トンもの圧力で水分を加えながら絞ると液体が出てきます。
 この時、「バガス」と呼ばれる搾りかすがでますが、ゴミにはならず、色々と利用できるのです!

 畑にまけば肥料になり、繊維分を多く含んでいるので、パルプにして、紙皿などの原料にも。この工場では、機械の一部を、バガスを燃やして作った電力で動かしているそうです。
 最初にしぼった汁。糖度は14度程度で、メロンと同じくらい。けれど最後にできる黒糖の糖度は、なんと85度。どうやって糖度を上げていくのでしょうか?
 このしぼり汁の中には、たんぱく質や無機質など、糖以外の成分が色々含まれています。そこで加えるのが、石灰乳と凝集剤。これらに糖以外の成分が吸着して沈殿。糖が多く含まれる液体と分かれるのです。こうして不純物を取り除いたしぼり汁を煮詰め、水分を飛ばしていきます。
 すると、ドロドロの黒糖が出てきました。随分ネバネバしています。この時点で、糖度は80度!

 これを攪拌して冷ましていくと、さらにネバネバに!水分が蒸発し、糖度が上がっていくのです!
 糖分以外に、サトウキビのミネラルも含んだおいしい黒糖!かがくの里で作れるのか?里には精密な機械はないので、黒糖は手作りしないといけません。手作りで最も難しいのは、温度管理。工場では180度の蒸気で汁を煮詰め、一気に攪拌するのですが、そのタイミングによって、砂糖のかたまりやすさ、水っぽさ、風味が変わってくるのだそう。
 黒糖づくり、とっても奥が深いことが、よくわかりました!

パパイヤ栽培に向けて

 栽培計画にはもう一つ、意外過ぎる作物が!これまた南国の果実、パパイヤ!かがくの里がある常陸太田市のお隣、那珂市で、パパイヤが実際に栽培されているというのです。どうやって南国の果物パパイヤを、茨城で育てているのでしょう?
 お邪魔したのは、2011年、茨城でパパイヤの露地栽培に成功した「やぎぬま農園」社長の柳沼正一さん。おととし10月、この農園で撮影した写真にはパパイヤが実っています。でもパパイヤって、黄色いイメージありますよね?
 柳沼さんによると、パパイヤは青い状態のまま収穫。温度が足りないので、いつまでおいても青いまま。こういった果実は、『積算温度』で熟すそう。
 積算温度とは、ある期間の一日の平均気温を足した温度のこと。くだものなどは、熟すまでの積算温度が大体決まっているのです。
 パパイヤが熟して黄色くなり、甘くなるのに必要な積算温度は、およそ5000度。毎日平均25度でも200日かかってしまいます。そしてパパイヤの木は、寒くなって霜にあたると枯れます。つまり、茨城の露地栽培でパパイヤを完熟させることは不可能なのです!なので、こうして熟す前の青い状態で収穫するのですが、実は青パパイヤには、完熟パパイヤに負けない、すごい点が!

 生だとシャキシャキとした食感が楽しめ、熱を加えるとナスのような食感になるそうで、味にクセがないので、色んな料理に合うのだそう。 さらに、青パパイヤはビタミンCやミネラル、食物繊維などを豊富に含んでいるだけでなく、最もすごいのが「パパイン」と呼ばれる、たんぱく質を分解する酵素。
 肉に青パパイヤをまぶし、パパインに漬けておくと、酵素がタンパク質を分解して柔らかくなるのです!パパインは完熟パパイヤになると、ほとんどなくなってしまうのです!
 南国の果物パパイヤを茨城で育てられるのは、4月下旬から10月下旬の温かい時期だけ。そして、こんな風に大きく育てるには、独自のノウハウがあるみたい!やぎぬま農園全面協力で、かがくの里の青パパイヤづくり、スタートです!