放送内容

第1525回
2020.05.10
スカッとする壮大実験SP の科学 総集編 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 およそ30年間にわたって、目がテンがチャレンジしてきた実験の数々。その中で、2つの極限の場所を舞台に、地球規模の壮大な実験を行なっていたのです!
 一つ目の舞台は、宇宙の入り口、成層圏!モンゴルの草原から生魚を乗せた気球を飛ばし、成層圏で干物になるのか?おそらく世界初の大実験!
 そして、巨大な氷河や氷山が織りなす、奇跡の絶景がある「北極圏」でも!氷河の上に、所さん人形と定点カメラを1年間置きっ放しにして、北極の様子を見守り続ける大プロジェクトに挑戦!映っていたのは、ダイナミックな地球規模の現象でした!
 大変な毎日が続く今こそ、見れば元気になれる!「スカッとする壮大実験スペシャル」です!

成層圏で干物づくり

 最初の壮大な実験は、宇宙に生の魚を飛ばしたら干物になった!地上11キロから50キロ上空にある、宇宙の入り口「成層圏」。ここで、驚きの発見が!
 2016年6月、千葉工業大学などで結成された日本のプロジェクトチームが、世界初の方法で「成層圏に漂う微生物の採取」に成功したというのです。この発見が何を意味するのか?
 宇宙に生命の起源があるとする説を“パンスペルミア”といいます。日本の宇宙研究の第一人者、松井先生によると、成層圏で採取した微生物が地球上のものか、宇宙から来たものかを調べ、生命の起源という大きな謎に迫る、非常に重要な研究だったといいます。
 ちょうどこの時、成層圏に装置を打ち上げるプロジェクトを進めているチームがありました。その実験方法は、ヘリウムガスを入れた気球に、パラシュートと実験装置をつなげて、地上30㎞の成層圏まで飛ばします。気圧が下がって膨らんだ気球は、最終的に破裂。パラシュートが開き、装置は地上へ戻り、それを回収する、というもの。

 そこで、目がテンは図々しくも、同じ気球をもう一つ作って頂き、成層圏で実験をお願いしました!
 成層圏とは、気温がマイナス50℃くらいで、気圧が地上の100分の1から200分の1まで下がります。気圧が低いところでは、水分が蒸発しやすく乾燥しやすい。ということは、生の魚を飛ばしたら、干物になるのではないか?失笑を買いながらも、宇宙の専門家たちの全面協力のもと、おそらく世界初!壮大な成層圏クッキングに挑戦!
 この大実験を決行するのは、モンゴルの大平原。地元モンゴル工業技術大学の皆さんにも協力していただき、打ち上げの準備。まず食塩水の中に、生のアジの開きを浸して、下ごしらえ。装置にセットし、実験スタート!
 打上げ10分後。高度は4500m。温度はマイナス4.4℃。ここで、アジの開きに早くも変化が!打上げの時と比べて、少し表面が乾いたように見えます。

 打ち上げから29分後。高度は11㎞に到達。目がテンの気球が、宇宙の入り口、成層圏に突入しました!
 そして2時間後。気球の高度はおよそ33㎞。目がテンが、ついに宇宙に進出しました!成層圏に浮かぶアジ。つまり、乾燥した真空状態にさらされているということ。

 と、その時!気球が破裂!アジの開きも、空気抵抗のほとんどない成層圏を急降下!無事パラシュートが開き、アジは地上へ帰還!果たして、干物になっているのか!?
 表面が乾き、見た目はアジの干物。

 モンゴルの平原で、さっそく焼いてみると干物の感じはさらに増しました!宇宙の最先端を研究する科学者の皆さんが試食するとおいしいと大絶賛。
 「成層圏干物」のおいしさについて、食品研究の専門家は、低温で水分が蒸発していて、凍結乾燥状態で干物が作られ、たんぱく質の熱変性がなく、とてもいい状態で干物ができたんだといいます。また、低温なので、うま味成分の分解が抑えられたということで、おいしい干物ができたんだそう。
 宇宙の入り口、成層圏での干物作りは大成功!成層圏は、干物作りにぴったりの環境だったのです。

北極カメラ一年プロジェクト

 続いての壮大な実験は、1年がかりの大プロジェクト!北極の氷河にカメラを置きっぱなしにしたら、とても貴重な???の撮影に成功!
 舞台は、北極圏に位置する世界最大の島、グリーンランド。地球上で、ここしか見られない絶景を生み出しているのは、氷河と氷山!そもそも氷河は大量の雪が何層も積み重なり、自らの重みで氷となって横に押し広がり生まれたもの。大陸氷河と呼ばれるものは、南極とグリーンランドにしかありません。
 実は、この氷の大地には、重要なメッセージが刻まれていると言います。そのメッセージを解明すべく、極限の地で研究するのが杉山先生。
 杉山先生によると、世界中の氷河・氷床の中で、一番氷を失って海水面をあげているのがグリーンランドの氷。南極氷床は、グリーンランド氷床の10倍大きいが、失っている氷の量は、グリーンランドの方が大きいそう。

 地球環境の激変を調べる杉山先生の研究拠点は、人類最北の町、カナック。目がテンも同行させていただき、所さん人形とカメラを、氷河と海の境目に設置!ここで、所さん人形と定点カメラは、北極の海と空と大地を見守ります。

 そして…設置から1年回収の時。地球上で最も過酷といえる環境に放置された定点カメラと所さん人形ですが無事に耐え抜いていました。
 カメラがとらえた映像をチェックすると、北極ならではの貴重な現象が映っていました!この時、北極は「白夜」、太陽が沈まない時期だったんです。

 地球は太陽の周りを1年かけてぐるりと回ります。光が当たっていると昼。当たっていない時は夜です。地球は太陽に対し23.4度傾いています。するとグリーンランドがある点線の内側に光が当たり続け、24時間、昼の状態になるんです。これが白夜という現象です。そして、地球が太陽の反対側にくる冬は地球の傾きが逆になるので、北半球の白線の中は、太陽の光がずっと当たらない状態、1日中、夜が続く「極夜」になるんです。

 さらに、注目の現象が起きていました。所さん人形の左側、少し黒くなっている部分を見ていくと、どんどん溶けています。

 この黒い色の正体は、氷河特有の「シアノバクテリア」という微生物。気温が上昇し、氷が解けると増えていき、氷河上の鉱物とくっついて黒い粒状になります。黒いと太陽の熱をよく吸収するので、解けるスピードがさらに上がり、氷を穴だらけにしていたのです。
 これこそ、まさに地球温暖化の影響で、北極の氷河が溶けている瞬間。ところが、世界全体で経済活動が縮小している今、二酸化炭素の排出量が減少し、温暖化が緩和されるという皮肉な現象も起きています。ただ、これは一時的なもの。再び経済活動が活発になると、二酸化炭素の排出量は、再び増えると考えられています。人々を豊かにする経済活動は、一方で温暖化問題に大きな影響を与えているのです。
 カメラは、雲が誕生する瞬間もとらえていました。氷河の冷たい空気と、海からの湿った空気がぶつかって、海の上で雲がどんどんできています。

 1年がかりで行った北極に定点カメラを設置する大プロジェクト。地球のダイナミックな動きが生み出す貴重な現象の撮影に成功しました!

 苦しい毎日が続く今だからこそ、日本に元気を!
 目がテンはこれからも、地球規模の実験にチャレンジしていきます!