第1545回 2020.10.04 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 地上の動物 |
荒れ果てた土地を科学者たちが再生し、人と自然が共に生きる里山作りを目指す長期実験企画。かがくの里!
去年の冬。専門家が、里にフクロウが来るかもしれないというので、早速、巣箱を設置。ところが4月以降、県境を越えた移動ができなくなり、半年後、ようやくプロジェクトが再開。仕掛けたフクロウの巣箱はどうなったのか?
すると!巣箱の入り口に鳥の羽根が!?フクロウが、仕掛けた巣箱に入ったのか?
今回のかがくの里は、里山の生態系を守るカギ?フクロウ編です!
フクロウプロジェクトの振り返り
「かがくの里」で里山づくりを始めてから6年。今や、ため池に入れば珍しい水生昆虫を見つけたり、カルガモが水草を食べに来たり、さらに畑には、産まれて間もない日本の固有種“ニホンノウサギ”がいたりと、野生の生き物たちが増え、里山らしくなってきた、かがくの里。
しかし6年前までは、人の手が長く入っておらず、雑草だらけで畑にするのも大変な荒れ地でした。里山を人の手で整備すると、野生生物もすみやすくなる。この6年で、里山再生が“生物多様性”にとっても重要だとわかってきました。その中で、あるプロジェクトが立ち上がりました。
それは去年の収穫祭のこと。台風の影響で難航した、里のため池のウナギ探し。この時、電気ショックで魚を捕獲する機械でウナギ探しに協力してくれたのが、里山の生き物の専門家、宇都宮大学の守山先生。実は守山先生は、フクロウ研究のスペシャリストでもあるんです!
今なお、生態に謎が多いフクロウ。かがくの里を訪れた守山先生は、ここで生態研究を出来るかもしれないと考えていました。
そこで去年の12月。里山整備で間伐を行ってきた里の裏山は、フクロウが住める環境なのか?守山先生がチェックしたところ、間伐を行って開けた里の裏山は、フクロウも住みやすい環境になっていたんです!
フクロウがいることが、里山の生態系にもいい影響を与えると言います。今、使われなくなった田畑や、放置された林が増え、里山の環境が悪化。フクロウの数は減っているそうです。食物連鎖の頂点にいるフクロウが減ると、エサとなるネズミなどが増えてしまい、里山全体の生態系のバランスが崩れてしまいます。
実は、かがくの里でも、ある被害が。
去年、植物油を種から取るためにヒマワリを育てていたんですが、収穫したヒマワリの種がネズミに食い荒らされ、ヒマワリ油づくりを断念していたんです。このネズミの被害から見ても、今、かがくの里の周りにフクロウはすみついていないと思われます。もし里にフクロウが定着すれば、ネズミも減り、被害も抑えられるはずです!
フクロウは普段、巣を持たず、昼間は森の木の枝などにとまって過ごしています。繁殖期を迎えると、フクロウはつがいとなって、樹洞と呼ばれる、樹皮がはがれ、木の内部が腐って空洞になった穴にすみつき子育てをおこなうんです。しかし、かがくの里に樹洞がある木は見つかりませんでした。
そこで今回、里に、樹洞の代わりとなる大型の巣箱を設置、フクロウが子育てを行うのかチャレンジします。
里の裏山から切り出した間伐材を使って、フクロウを呼び込むための巣箱を作っていきます。
フクロウが入るための入り口を開けて、最後に西野さんが、サワラの木を巣箱にとりつけていきます。サワラの木は何のため?
西野さんよると、サワラの木は日がたつと赤くなってきます。そうすると山の自然の木のような色になって、フクロウも、その方が安心するのではということ。守山先生と西野さんの合作。自然に溶け込む様に作られたフクロウの巣箱が完成!
林業家の西野さんは、巣箱の設置でも大活躍。かがくの里の畑を見下ろせる場所に1つ、さらに、里の畑のすぐそばの木にも設置しました!取り付けた後、巣箱にオガクズをしきつめます。フクロウは自分で枝を運ばないのだそう。猛きん類で運ばないのはフクロウだけなのだとか。フクロウが巣とする樹洞には、もともと木のくずなどが入っていて、手入れせずとも快適な巣になります。仕掛ける巣箱も、オガクズなどの巣材を入れて快適にすることで、フクロウが入る確率が上がるそうです。
里の裏山で、フクロウが気に入りそうな場所を選び、合計5つの巣箱を設置しました!あとは春になって、繁殖期にフクロウが入るのを待つばかり!だったんですが…4月以降、県境を越えて移動できなくなり、阿部さんたちが里に行くことが不可能になってしまったんです。
フクロウは来ていたのか!?
今年7月。もし巣箱で子育てをしていれば、エサにした鳥の羽根や動物の骨などの痕跡が残っているはずです!
1つ目の巣箱は、里が見晴らせる場所に設置したもの。果たして、フクロウが入った痕跡は見つかるんでしょうか?
1つ目は、残念ながら何も見つからず。続いて2つ目の巣箱を見てみると!
なんと2つ目の巣箱にフクロウが来た痕跡があるというんです。つがいとなったフクロウは、最も子育てをしやすそうな巣を見つけるために、色んな場所で巣になりそうなところをチェックします。そのとき、巣の中で卵が安定するかどうかを確かめるため、巣の真ん中をくぼませるんです。
ともあれ、里にフクロウがきたことは確かなようです!どうやら、里に近い巣箱は警戒して選ばなかったよう。そこで、里からおよそ100m離れた、最も遠い巣箱をチェックすることに。里からこれだけ離れていれば、警戒心の強いフクロウでも大丈夫なはず。
すると巣箱の入り口にフクロウの羽根が引っかかっています!
この巣箱でフクロウは子育てをしたのか?巣箱の中を知らべてみると、様々な痕跡が残っていました。中には鳥の羽根が散乱していたんです!
守山先生によると、巣箱の中に散乱していた羽根はエサとなった鳥ハトのもの。中に大量にあるので、おそらくフクロウのヒナが食べていたものだといいます。このエサとなった鳥の羽根からこの巣箱でフクロウがヒナを育てたのは間違いないようです。
さらに巣箱の中にはペリットも。
ペリットとはフクロウがエサを丸呑みにして食べ、その後、胃で消化できなかった羽根や骨などを団子状にして吐き出したもの。
巣箱を設置してから、およそ半年。かがくの里で、ちゃんとフクロウが子育てしていました!
守山先生によると、来年もここに来る可能性が大きいそう。親鳥は、巣から直径およそ2kmのなわばりの中でエサをとり、子育てを行うといいます。ヒナを安全に育てた場所を覚えていて、毎年、同じ場所で子育てをすることも多いそうです。
実は、子育て後の親鳥や巣立った後のヒナの生態は、あまり分かっていないといいます。研究者もまだつかんでいない、巣立った後のフクロウの生態。来年は、そのフクロウの生態調査を、かがくの里でやります!フクロウのどんな面白い生態が明らかになるのか?期待が膨らみます!