放送内容

第1546回
2020.10.11
食品パッケージ の科学 物・その他

 今や、食品と切っても切れない関係の、食品パッケージ。当たり前のように使っているものですが、実は日々進化しているんです!
 中でも日本のパッケージは優れたものが多くあり、中身が付かないヨーグルトのフタや、どこからでも切れる調味料の袋などは有名ですよね。実はこの他にも、知らないうちに進化していたパッケージがたくさんあるんです!
 そこで、専門家におすすめのパッケージを紹介してもらう「食品パッケージ座談会」を開催!今回は、外国人の目線から日本のパッケージのスゴさを体感してもらうため、厚切りジェイソンさんが登場!
 すーっと開けやすい豆腐のフタや、クリームがくっつかないケーキのフィルム。その驚きの技術とは!? さらに、スーパーなどでよく見かける袋。実は野菜をおいしく保つ、ある秘密があったんです!
 今回の目がテン!は、知らないうちにこんなに便利になっていた!食品パッケージを科学します。

食品パッケージ座談会

 食品パッケージ座談会メンバーの一人目は、「高齢者が使いやすいモノはみんなが使いやすい」という考えのもと、様々なパッケージの研究にも携わる、筑波大学・原田教授。
 二人目は、人間工学がご専門の、千葉大学・下村教授。人間工学とは、人が使用するあらゆるものを、人の特性や特徴に合うように設計する学問のことで、下村先生は様々なモノのデザインを研究されています。
 さらに、お笑い芸人、そしてIT企業の役員でもある、アメリカ出身の厚切りジェイソンさん!
 ということで食品パッケージ座談会開始です。
 下村先生おすすめのパッケージは、豆腐。一体どこが進化しているのでしょうか?旧型の豆腐容器のフタを開けてみると、フチの部分が破れてフタが開けられません。

 しかし、新型の容器を開けてみると、フタが破れることなく、きれいに開けられました!

 専門家も驚きのフタの進化。なぜこんなに開けやすいのか、メーカーに聞いてみました。お伺いするのは、豆腐のフタなどのフィルムを開発している森谷さん。
 旧型の豆腐のフィルムは、接着する部分が容器と同じ素材でできており、熱を加えて2つを溶かしてくっつけていたので、接着強度が高くなっていました。そのため、水は漏れないものの、フタがかなり剥がしにくかったんです。
 しかし、現在多くの豆腐のフタに使われているイージーピールフィルムは、異なる素材のフィルムを重ねることで開けやすくなっています。
 容器と接触する一番下のフィルムは、旧型同様、容器と同じプラスチック素材で、接着強度は高いのですが、その上のフィルムは素材が異なり、接着強度が低くなっています。これをめくると、フチには接着強度の高いフィルムだけ残り、そこが切り離される形で、フタ全体が剥がれるんです。そのため、フチの部分には、フィルムが薄く残っているんです。

 森谷さんによると、簡単に開けることは技術的に簡単だが、最低限の強度を守らないといけないため、絶妙なところをコントロールするのは非常に難しいといいます。メーカーの努力によって、長年の「豆腐のフタ開けにくい問題」が知らない間に改善していたんです!

 続いて、原田先生のおすすめは、わさびのチューブ。新型と旧型を比べると、フタの開けやすさが進化しているんです。
 旧型のチューブは、フタを2回転弱回す必要があるため、その度に持ち替えなければいけませんでしたが、新型のチューブは、ワンアクションでフタを開けられるようになっているんです。
 秘密はチューブのねじ山。その仕組みを、メーカーに聞いてみました。
 旧型のチューブは「1条ねじ」といって、ねじ山が1本のらせん状になっている為、その分フタを回す必要があります。

 一方、新型は「4条ねじ」といって、ねじ山が、4本入っています。ねじ山を4つに分割することで、4分の1回転で蓋が開けられるようになっているんです。

さらに、このフタにはもう一つ工夫が。それは、フタを閉めたときの、カチッと感。下村先生によると、これは感覚フィードバックというもの。人間が何か動作をしたときに、視覚なり、聴覚なり、触覚なりで情報が戻ってくると安心して使うことが出来るといいます。

 続いて出てきたのは、おいしそうなケーキ。ケーキのフィルムを取ってみると、クリームがついていません。一般的なフィルムにはクリームがべったり。比べてみると、歴然の違いです。

 下村先生によると、日本人は食べ物を残すことは良くないとされているので、スパッとめくれるのは、日本人の精神文化的にもストレスが小さいといえるそうです。
 クリームがくっつかないケーキフィルムを作ったメーカーに、その秘密を聞いてきました。教えてくれるのは、容器の開発を担当する関口さん。
 フィルム表面に使われているのは、生物が持つ優れた性質を、新たなものづくりに生かす、バイオミメティクスという技術。このフィルムの構造は、水をはじくハスの葉のデコボコ構造からヒントを得たものなんです。ヨーグルトがくっつかないフタも、この技術。新型のフィルムは、この構造と、独自に開発した材料を組み合わせて作られているんです。
 一般的なケーキフィルムと、新型のフィルムに油を落としてみます。
 一般的なフィルムの場合、油をはじくことなく、べたっとしますが、新型のフィルムでは、油が玉のようになり、コロコロと転がっていきます。

 関口さんによると、採用にいたるまで6年。食品パッケージは、メーカーのあくなき努力で、知らない間に驚きの進化を遂げていたんです!

呼吸量に合わせた野菜のパッケージ

 やってきたのは、野菜のパッケージを作っているメーカーの研究施設。迎えてくれたのは、この施設のセンター長の溝添さん。日々、野菜や果物の包装について研究しています。
 溝添さんは、ブロッコリーを用意してくれていました。
 左から、特殊加工した袋に入れたもの、一般的な袋に入れたもの、何もしない状態のものを、同じ環境で4日間保管。

 比較してみると、袋に入っていないものは黄色くなっています。裸の状態なので、成長してしまって枯れてしまっているような状態です。
 そして、袋に入った2種類には、あまり違いがないように見えます。そこで、袋を開けて確かめてみます。
 まず、一般的な袋の方は、発酵したようなにおいが。ブロッコリーは、大根と同じアブラナ科の一種。アブラナ科の野菜には硫黄を含む成分が多く含まれており、酸欠になると、この成分が化学反応を起こし、たくあんと同じような臭いを発するようになるんです。
 一方、特殊加工を施した袋を開けてみると、においもなく、新鮮なものと比べても差は見られません。

 一体この袋には、どんな秘密があるのでしょうか?
 溝添さんによると、呼吸をしすぎない、酸欠にならない、そういう加工をした袋になっているそう。
 そもそも野菜は、酸素を吸って、二酸化炭素を出す呼吸をしており、収穫された後もそれは続きます。呼吸をすることで自分自身の栄養分を分解し、水分を発散させながら成長・老化を続けるんです。この呼吸が問題。
 野菜を何もせずに置いておくと、呼吸により栄養が減るだけでなく、しおれたり、早く傷んでしまいます。かといって、呼吸できないように密閉した袋に入れると、酸欠になり、異臭を放つようになってしまうんです。
 その呼吸量をコントロールできるのが、この袋。その秘密は、水を入れてみると分かるんだそう。袋に水を入れて、少し押してみると、袋から水が出ていることが分かります。

 これはもちろん破れているわけではなく、実はこの袋には、目に見えないほど小さな穴が開いているんです。呼吸をゆっくりにするためには、低酸素・高二酸化炭素という条件が必要で、これはそれを実現するための穴。
 この袋に野菜を入れると、野菜は“冬眠”状態になり、通常よりも呼吸を抑えられるため、鮮度を保つことができるんです。
 こちらでは、野菜の呼吸量に合わせ、袋の厚みや、穴の大きさ・数を変えて、100種類もの袋を作っているんです。

 私たちが野菜を新鮮な状態で食べられるのは、パッケージメーカーの努力のたまものだったんです。