放送内容

第1548回
2020.10.25
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 食べ物

 荒れ果てた土地を科学者たちが再生し、人と自然が共に生きる里山作りを目指す長期実験企画!かがくの里!
 訪れた実りの秋。いつもなら、田んぼや畑は収穫のまっさかりのはずですが・・・今年は色々、大問題が!阿部さんが愛情を注いできた稲に、予想外の異変が!?
 さらに!今年、初挑戦した南国フルーツ「パパイヤ」。けれど、苗を植えてから数週間後・・・パパイヤもとんでもないことに!?
 いろいろあって里の作物が大ピンチ!!収穫祭が迫る中、かがくの里で作物は収穫できるのか!?

今年初挑戦!南国果実パパイヤ

 今年3月。農業の専門家、高橋先生が発表した、里で初めて挑戦する作物が…南国の果実“パパイヤ”!
 かがくの里がある常陸太田市のお隣、那珂市でパパイヤづくりを成功させたのが、やぎぬま農園の栁沼さん。
 南国の果物パパイヤを茨城で育てられるのは、4月下旬から10月下旬の暖かい期間だけ。熟すには気温が足りず、このような黄色く完熟したパパイヤは作れません。栁沼さんが作っていたのは、完熟前の青パパイヤ。これを、里でも栽培することに!
 7月中旬。自粛期間の影響で、予定より3か月遅れではありますが、この日、いよいよパパイヤを里に植え付けることに。

 3か月遅れの植え付けはギリギリのタイミング。しかも、初めて里に来て、畑を見た栁沼さんは、水はけの悪さが心配だと言います。畑の作物は、根でも呼吸しています。だから水はけの悪い土壌では、呼吸できず腐ってしまうんです。
 開拓1年目、畑の水はけの悪さを改善するため、およそ3トンもの、たい肥を入れたり…その後、藁をすきこんだり改良に取り組み、植え方も工夫してきましたが…未だに雨が降ると、水たまりができてしまう里の畑。土壌の湿り過ぎは大敵というパパイヤにとって最悪の環境です。

 そこで栁沼さんの指導で取り掛かったのは、土の改良。畑にまいているのは、米ぬかと鶏糞といった有機資材です。これらを入れることで作物の栄養になるだけでなく、これらをエサにする微生物が働き、水はけのよいフカフカの土になるといいます。
 そしてようやく、パパイヤ苗を植え付け。植える深さは、30から40センチ。最終的に、根は4メートルほどまで伸びるといいます。3ヶ月遅れで、土壌もよくない中、パパイヤの苗の植え付けは完了!

 しかし、恐れていた事態が。今年7月は毎日のように雨が降り、関東では、平年のおよそ2倍の雨量を観測。パパイヤに大事な日照時間は、平年の半分しかなかったんです。
 植えてから3週間後、様子を見に行くと、とんでもない姿になっていました。ひどいものは全ての葉っぱが落ち、無残な状態に。いくぶん状態が良さそうな苗も、やはり根腐れを起こしていました。

 これでは回復の見込みはありません。パパイヤづくりに協力してくれた栁沼さんに残念な報告。
 栁沼さんも、パパイヤ作りを始めた当初は、畑の水はけが悪く、うまく育たなかったと言います。
 里のパパイヤは残念な結果でしたが、今回の失敗から、里の畑の土は、まだまだ大きな改良が必要だとわかりました。

 そこで、今年の冬、阿部さんが本気で土壌改良に乗り出します!根本から水はけをよくするため、大がかりな土壌改良に乗り出すつもりです!

“秋ジャガイモ”栽培

 9月上旬、収穫祭に向けて「秋ジャガイモ」の栽培を開始。しかし、今からジャガイモは育つんでしょうか?
 ジャガイモは、アンデス山脈の高地が原産。涼しい気候を好んで、暑すぎると育ちません。そのため、関東地方の平野部では3月下旬に種イモを植え、本格的に暑くなる7月下旬までには収穫するのがほとんど。しかし、暑さを避ければ、真冬を除き、ジャガイモはどの時期でも栽培できるそうで、今回作る秋ジャガイモは、夏の終わり、9月に種イモを植えます。
 通常通り、3月下旬の、まだ気温が低い時期に植えたジャガイモは、最初の芽が出てくるまでに、およそ1ヶ月ほどかかりますが、9月に植える秋ジャガイモは、3月より気温が高く、暑すぎず寒すぎないため、最初の生育が早いのが特徴!そのため、およそ2ヶ月で収穫でき、収穫祭に間に合うはず!

 しかし、注意点も!それは、台風や大雨による心配。実は、昨年もかがくの里で“秋植えジャガイモ”にチャレンジしていたんですが、大型台風の影響でイモが腐ってしまい、失敗していました。やはりここでも問題は、畑の水はけの悪さ。雨が続くと、ひとたまりもないんです。
 そこで先生は、土を高く盛り上げて、畝を立てることで、雨が続いたとき、種イモが水に浸るのを防ぐ作戦を考案!植える深さは、10センチほど。深く植えすぎると、芽が出るのに時間がかかるので注意が必要です。
 無事、秋ジャガイモの種イモ植えは終了!そして1週間後、秋ジャガイモの様子を見に行くと、小さな芽が出ている場所も!ところが1週間後!心配していた大雨が…。しかし、ジャガイモは、高畝にしたおかげで、腐ることなくすくすく成長!葉っぱもしっかりついています!これなら、収穫祭に間に合いそうです!

ピンチを乗り越えた稲

 今年5月の自粛期間中。阿部さんは自宅のベランダで、種もみから稲の苗作りに初挑戦!手塩にかけて育てること1か月半。自粛が解けた6月下旬。例年より2週間ほど遅れましたが、無事、田植えを迎えました。
 見たところ、ちょっと枯れかけて元気がない、阿部苗。同じ品種なのに、高橋先生が育てた苗と比べると、全然違います。原因は、阿部苗の根の貧弱さ。実はベランダでは、苗の根が育つのに必要な日光が不十分。それでも、田植えをして根が伸びてくれば問題ないそうです。
 畑側の7列が阿部苗エリア。同じ品種なのに色が全然違います。果たして、ちゃんと育つんでしょうか?

 2週間後、どうやら阿部苗はちゃんと根付いてくれました!これで一安心!と、思っていたのですが、7月、いやというほど雨続きで、不安になった阿部さん。 そこで7月末。長い梅雨で稲が大丈夫か、高橋先生に聞いてみました。
 高橋先生によると、稲は生育の前半は雨があった方がよくて、後半は雨がない方がいいそう。稲は、田植え後に穂が出るまでは水が必要です。でも、穂が出た後は日照が必要になるんです。

 コメの原産地は、中国雲南省やミャンマー・ラオスなど、雨季と乾季がはっきり分かれるモンスーン気候。もともと稲は雨季の時期、水と養分を吸い上げて葉っぱをグングン伸ばし、乾季に、葉っぱが太陽光で光合成をし、作った養分を穂に与え、籾が熟していく作物。そのときは雨がない方が、コメの収穫量や品質がよくなりますが、里の稲は、このとき、まだ葉っぱを作る時期。太陽光が必要な稲穂はできていなかったので、まだ雨続きでも大丈夫とのこと。

 しかし、長かった梅雨が明けた8月初旬。これからたっぷり太陽の光を浴びるはずの、稲の葉っぱに異変が!
 それは、イチモンジセセリという虫のさなぎ。

 幼虫の時、稲の葉を重ね、ツトを作り、その中に生息するため、イネツトムシとも呼ばれています。これ、稲の葉っぱを食い荒らす害虫なんです。
 でも実は、農薬を使っていない里の田んぼでは毎年、多少は発生していましたが、そもそも数は少なく、例年通りなら、益虫のトンボやクモが食べてくれるので大きな被害は出ません。しかし今年は、ほとんどの稲がイチモンジセセリにやられていたんです。

 昆虫の専門家、斉藤先生も初めて見たほどの、突然の大発生。発見したときには、すでに葉っぱを食い荒らされた後。植物の葉は、一度ダメージを受けると回復することはありません。里の稲、大ピンチです!
 それから1か月…なんと、稲は順調に穂をつけていたのです!

 イチモンジセセリに食い荒らされた稲ですが、実はあのときはまだ、葉っぱが新たに生える時期だったそうで、サナギが成虫になり飛んで行ったあと、新しい葉っぱがどんどん出たため、太陽の光で光合成し、ちゃんと穂ができたんです!

 実は、これには田植えが遅れたことも関係しているそうで…。かがくの里の稲は、田植えが遅れ、生育が遅くなったことで、結果として害虫の被害を免れたんです!その後は順調に成長を続け、まもなく収穫を迎えます!