第1549回 2020.11.01 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 地上の動物 水中の動物 |
荒れ果てた土地を科学者たちが再生し、人と自然が共に生きる里山づくりを目指す長期実験企画!かがくの里!
今年も、かがくの里にニホンミツバチが!なんと7つ仕掛けた巣箱のうち5つに、それぞれ群れが入ったんです!ところが…一匹もいない!?一体何が起こったの?!さらに、かがくの里の裏山で見つけたのは、所さんにぜひ味わってほしい、ドングリ!
ということで!所さん楽しみにしててね!収穫祭直前スペシャル!
ハチの巣箱が大ピンチ!
自粛期間中、西野さんからうれしいニュースが!今年も、里の巣箱にニホンミツバチが入ってくれたんです!西野さんが作ってくれた7つの巣箱。かがくの里の中に3つ、あとの4つは、里の外で、西野さんがここなら入ると目をつけたところに設置しました。すると、なんとかがくの里の巣箱2つと、里の外に置いた巣箱3つに、それぞれ群れが入ってくれたんです。
今年は、貴重なニホンミツバチのハチミツがたくさん採れると期待しちゃいますが…実は群れが入ったからと言って、安心はできないんです。
それは去年の8月初旬のこと。せっかく入ったニホンミツバチの巣が落ち、ハチがいなくなってしまっていたんです。
原因は夏の猛暑。暑さによってロウがやわらかくなり、蜜の重さに耐えられず、巣が落ちてしまった結果、すみにくくなったハチたちは巣を捨てて、どこかにいってしまったんです。
去年のように、巣落ちで逃げられないために、6月、自粛期間中、西野さんが巣落ち防止のためにやってくれたのは、棒を使った対策。
巣板の下に棒を交差させて差し込んでおくと、巣は棒を巻き込んで大きくなっていきます。すると、蜜がたまって重くなっても、棒によって重さが分散され、巣板が落ちることを防止できるんです。
これで暑さ対策はバッチリ!
でももう一つ、去年起きた悲劇が。去年、ゴーラという巣箱に入ったミツバチの群れも、巣を捨てていなくなっていました。その原因は、ハチの巣を食べて成長する珍しい虫、ハチノスツヅリガという蛾の幼虫。ミツバチたちは、ハチノスツヅリガを巣から追い出そうと、蛾の幼虫が入った巣板をかじり取って、下に落とします。これが繰り返されることで巣の強度が落ちていき、最終的に巣板が落ち、ハチの群れは巣を捨ててしまったんです。
そこで今年、ハチの専門家、小野先生に、ハチノスツヅリガの対策を相談したところ、薬が手に入ったのは、7月上旬。
この薬は、ある微生物が作る毒素からできています。それは、特定の幼虫だけを殺すといい、ハチや人には害がなく、ハチミツやロウにも影響がない優れもの。本来なら5月に行うべきもので、時期が遅れてしまったのは気になりますが、とりあえずやってみることに。
しかし、9月下旬。巣がダメになっていました。対策が遅れ、すでにハチノスツヅリガの幼虫に荒らされてしまっていたんです。巣を荒らされたミツバチたちは、この巣を放棄、蜜をもって巣箱から出ていってしまったんです。
蜂の入った5つの巣箱のうち2つも巣虫にやられてしまったのですが、まだあと3つ残っています!
ニホンミツバチの天敵とは…?
ところが、そのうち1つも、ニホンミツバチの天敵にやられてしまったんです。
秋、最も気をつけないといけないミツバチの天敵、それは、スズメバチ。実は里の周りにもスズメバチがいて、3年前、セイヨウミツバチを育てていた時のこと。危険生物キイロスズメバチが、巣を襲い始めたんです!肉食のキイロスズメバチは、ミツバチを幼虫のエサにします。巨大なスズメバチに、次々と狩られていくミツバチ。
ところがこの時、ミツバチがスズメバチに対し、驚きの行動を見せたんです!
セイヨウミツバチが、スズメバチを一斉に囲いこみました。戦いは20分にもおよび、そしてなんと、大きなキイロスズメバチを倒しちゃったんです!
一体、スズメバチをどうやって倒したんでしょうか?
小野先生によると蜂球行動だそう。蜂球行動とは、天敵のスズメバチを、ミツバチが集団で囲い込み殺す防衛行動。スズメバチは、体温が46度を超えると死ぬ、という特性を利用したものです。
セイヨウミツバチは蜂球行動によって、スズメバチがいる中心温度を44度まで上昇させ、さらに命がけでスズメバチを刺します。ミツバチの針攻撃に、スズメバチは暴れて興奮。その結果、スズメバチの体温がさらに上昇、限界の46度を超えて死んでしまうんです。
一方、ニホンミツバチは、スズメバチを囲い込んだ時、体を震わせて発熱することで、中心温度を47度以上にあげ、スズメバチを蒸し殺します。しかし、スズメバチはエサとなるミツバチの巣をみつけると、集団で攻撃してきます。スズメバチの数が多いと、蜂球行動では対抗できず、巣が全滅してしまうことも。
そこで、ハチの専門家、小野先生に聞いた対策が、スズメバチ捕獲器。
実は、上の部分が、スズメバチだけをとらえる仕掛けになっているんです。これを里のセイヨウミツバチの巣箱に仕掛けまます。
すると、オオスズメバチが中に入り巣箱に入ろうとしますが、網のため、中には入れません。スズメバチには、明るい場所と上に向かう習性があるので、そのまま捕獲器の上にあがっていきます。オオスズメバチを見事捕獲できたんです!ろうと状の入り口は、スズメバチにとって、一度入ったら出られないもの。体の構造上、細い方から戻るのが難しいんです。
数日後、捕獲器を見てみると、オオスズメバチとキイロスズメバチが大量に入っていました。その数およそ、200匹以上!
セイヨウミツバチでは絶大な効果があった捕獲器ですが、ニホンミツバチの場合、セイヨウミツバチの巣箱と違い、手作りの巣箱で行うため、既成品の捕獲器を仕掛けることはできません。一体どうすれば!?
残り2つになってしまった巣箱。ハチの専門家、小野先生に相談したところ、スズメバチ捕獲用の粘着シートを送ってくださりました。これをミツバチの巣箱の上において、そこに死んだスズメバチを1匹おいておくと、仲間のスズメバチが引き寄せられて集まってくるんです。そうすると、この粘着シートにくっついて、身動きがとれなくなり死ぬ。という仕組みだそう。粘着シートは巣箱の上に仕掛け、ミツバチはまっすぐに巣の下の入り口に向かう習性があるので、巣箱の上のシートにミツバチが引っかかることはないんです。
村田先生のドングリコーヒー
この日、里に来ていた木材利用の専門家、村田先生は、ドングリを探しに山へ。実は、間伐材以外にもある里山の恵みの一つとして、村田先生は今年、ドングリコーヒープロジェクトを始めていたんです。
自粛期間中、阿部さんが、食用として市販されているドングリ、マテバシイを使って、試しに作ったドングリコーヒー。そのお味は「結構コーヒー」。しかし、所さんは「ウソつけ!コーヒーじゃないからそれ!」とかなり否定的…。
それでもめげない村田先生は、ドングリコーヒーになるドングリを、山に探しに来たのです。村田先生によると、マテバシイとは違い、里のドングリには、ある物質が入ってるそうで、それは、タンニン。タンニンとは、シブガキやお茶の葉などにも入っている渋い成分。実は植物にとっては、タンニンが生き残り戦略に大きくかかわっているそう。
ドングリやカキようにタンニンを含む植物は、同じ木に成った実でも、タンニンの量が多いものと少ないものがあると言います。
そういえば、3年前の収穫祭でこんなことが。収穫祭数日前、里になっていたカキを阿部さんが食べたところ絶賛。ということで、同じ木になっていたカキを所さんにお出ししたのですが、所さんに出してしまったのは、タンニンが多い渋い実だったんです。
でもなぜ、タンニンが少ない実と多い実をつくるんでしょうか?
木の種であるドングリは、小動物に運んでもらい、食べ残しを土に埋めてもらうことで発芽します。その時、小動物を引き寄せるために、タンニンの少ない実を作っておくんです。
逆に、タンニンの多い渋い実は、小動物が食べ残し、土に埋めてくれることを狙ったもの。実によってタンニンの量を変えることで、食べつくされることを防ぎつつ、実を遠くまで運んでもらい、子孫を残す戦略をとっていたんです。
植物の生き残りに役立っているタンニンですが、人が食べるには渋みになってしまいます。タンニンのある里のドングリで、コーヒーは作れるんでしょうか?所さん、楽しみにしててくださいね!
池のウナギを観察
池のウナギはどうしているか?池に仕掛けた水中カメラの前にミミズを垂らしてみます!さあ、ウナギは姿を現すのか?
残念ながら収録中にはウナギの姿をとらえることができなかったのですが、収録が終わり、わずか40分後、スタッフも大興奮の大きなウナギが!
前回は田んぼの水路でしたが、なんと池でも、巨大ウナギの姿を数匹確認することができたんです!
収穫祭では、このウナギたちを捕獲、今年もオスかメスかを判定します。果たして、今年7月に入れたウナギは、どのくらいの大きさに成長しているのか?そして、オスとメスは1対1に育っているのか?
収穫祭では他にも、秋に植えたジャガイモを収穫したり、阿部さんが自宅で種もみから育てたお米を炊いたり、ニホンミツバチのハチミツをなめたり、ドングリコーヒーで一服したりと、大変な年だった2020年ですが、いろんな楽しみ盛りだくさんで行えそうです!