放送内容

第1567回
2021.03.21
東京化石探し の科学 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー

 私たちの暮らす地球が誕生したのは、今からおよそ46億年前。最初の生命は、その8億年後に海の中で誕生したといわれています。以来、長い年月をかけ、多種多様な生物が生まれては消えていきました。その遺がいや生活の痕跡が、現代まで残るのが「化石」。どんな生物が、どんな環境で暮らしていたのか教えてくれる地球の歴史を知る上で重要なもの。
 化石の発掘場所として有名なのは、恐竜の化石が多く見つかった福井県や、アンモナイトの世界的な産地・北海道など、自然豊かな場所。
 しかし、東京の意外な場所にも化石が!?さらに、多摩川で化石の発掘調査!
 今回の目がテン!は、古代ロマンを求め、大都会・東京で化石探しに挑戦します!

東京の街で化石探し!三越編

 今回、化石探しに協力してくれるのは、小学校で教諭をしている、相場博明さん。教壇に立つかたわら、古生物学の研究を続け、過去にはゾウの化石も発見したこともあるスペシャリストです。
 やって来たのは、日本橋三越本店。こんな場所に化石があるのでしょうか?ブティックの真横を通り、中央の階段へ。すると、いきなり壁面にはっきりとアンモナイトの化石が!

 中には、50センチ超えの大物も!

 三越本店は、アンモナイトの化石が見られる場所としてマニアの間では有名で、数多くの化石が発見されているんです。中央ホールの壁には、額に入ったアンモナイトとその解説もあるほど。
 でも、なぜ百貨店の壁にアンモナイトの化石がこんなにあるのでしょうか?百貨店の壁に使われているのは、イタリアから輸入した石材。実は、この石材の中に閉じ込められた化石が、切った面にたまたま出てきているんです。
 そもそも、こういった化石の多くがどのようにしてできるのかというと。
 まず、死んだアンモナイトが海の底へ沈みます。このとき、肉など体のやわらかい部分は腐り、硬い殻だけが残ります。そこへ土砂が運ばれてきて死がいが埋まります。この上にさらに土砂が積み重なり、何万年もの長い時間をかけ、様々な変化を受けて硬くなるんです。
 さらに、イタリアから輸入されたという、この石材にも秘密が。この石材は、元々石灰岩という岩石。石灰岩というのはサンゴや貝などが固まってできた石。そう考えるとこの石全部が化石そのものということになるんです。
 この石材は、今から1億5千万年以上前、まだ恐竜が生きていた時代のものだそうで、エスカレーター横には、仲良く2つ並んだ、レアなアンモナイトも!

 他にも、大小様々なアンモナイトをみつけました。
 アンモナイトをよく見てみると、渦巻の間に線のようなものが。

 アンモナイトは、殻の中に軟体部を持つ、イカやタコの仲間。殻の中には「隔壁」という仕切りがいくつもあり、内部に体液を出し入れしていました。アンモナイトの隔壁は化石になる中で、なくなってしまうものも多いのですが、中にはくっきり見えるものもあるんです。

 大都会にあるデパートで、1億5千万年以上前のアンモナイトを内部構造まで見ることができました!

東京の街で化石探し!東京駅編

 続いては、東京駅の向かいにある東京中央郵便局。柱に使われている黒い石材は、三越で見た石材より2億年ほど前、およそ3億5千万年前のベルギー産のもの。これは、恐竜が出現する前、石炭の元になるシダ植物などが繁栄した「石炭紀」と呼ばれる時代の石灰岩。
 柱を見てみると、3億5千万年前の生物、ウミユリの化石が。

 海中で暮らしていたウミユリは、現在もその仲間が生きており、「生きた化石」とも呼ばれています。見つけた化石は、ウミユリの軸の部分が縦に切断されたもの。一方丸い化石も発見。これは、ウミユリの軸が横に切断されたもの。
 植物のような不思議な生物ウミユリを、柱を通して見ることができました。

 さらに、東京中央郵便局から地下へ降りた広場にも、化石があるそうです。こちらで使われているのは、恐竜が繁栄していたジュラ紀の終わりから白亜紀にかけて、1億5千万~1億4千万年前のトルコ産大理石。
 ここで見られる化石は、まるでハチの巣のような模様の、サンゴの化石!

 この模様は、サンゴを横に切った断面が出てきているんです。
 そして、サンゴの化石には特別な役割があります。化石には、当時の環境が分かる「示相化石」と、その生物が生きていた時代が分かる「示準化石」があります。サンゴは、「暖かくて浅い海」だったことを表す示相化石。アンモナイトは、時代によって形の特徴が異なるため、時代を特定できる示準化石なんです。1億4千万年以上前の美しいサンゴの化石を見ることができました。

 続いて、東京駅の地下を通り、丸の内ビルディングへ。ビルの入り口には、ドイツ産の「ジュライエロー」という石材が使われています。「ジュラ」の名前の通り、およそ1億5千万年前のジュラ紀の生き物が見られるそうで、壁を見ていくと、「ベレムナイト」という生き物の化石が。

 イカに似た頭足類の仲間で、体内の骨のようなものだけが化石として残っているんだそう。
 ほかにも、「厚歯二枚貝」という貝の化石。

 蓋付きのコップのような形をした貝殻で、横の断面が化石として残っています。
 ユニークな見た目の「海綿動物」の化石も。

 いわゆるスポンジです。筒状や盃状の形をした生き物で、断面が現れています。
 そして、内部が宝石のように輝くアンモナイトの化石。

 内部が「方解石」という鉱物に変質した結果、キラキラとした断面が見えているんです!

東京で化石発掘!

 東京で化石発掘をするため、やってきたのは多摩川河川敷。2001年、相場先生は八王子市にある多摩川の支流・北浅川で古代ゾウの歯や骨などの化石を発見。およそ250万年前頃に生息し、肩までの高さは2m〜3mほどだったと考えられています。日本では半世紀ぶりに新種と認められ、「ハチオウジゾウ」と命名。ほかにも、1976年には日本橋でナウマンゾウの化石、その2年後にはあきるの市でミエゾウの化石、さらに98年には昭島市でアケボノゾウの化石が発見されるなど、まさに東京は知られざるゾウの宝庫!
 相場先生によると、実は立川でもゾウに関する化石が見つかっているそう。
 一見ごく普通の河原に見えますが、なぜここで化石が見つかりやすいのでしょうか?実は、この辺りに広がる地面は、およそ150万年前の地層が隆起して持ち上げられ、多摩川によって削られて現れたものなんです。
 地面を見ながら歩いていると、何かの引っ掻き跡のような模様が。最初に見つけたのは、木の化石!

 おそらくメタセコイアというヒノキの仲間だそうです。
 さらに歩いていくと、知る人ぞ知るアケボノゾウの足跡である可能性が高い窪みが!

 20年ほど前にこの一帯で複数の足跡が見つかり、中には爪のような形が分かるものもあったんです。足跡の化石は、いずれ風化してなくなってしまうもの。見つけたときは、破壊せずにそっとしておくのがマナーです。
 さらに下流へ進むと、ボコボコと開いている穴。アナジャコなどの海の生き物の巣穴なんだそう。

 しかし、ゾウの足跡があった場所から、数百メートルしか離れていないのに、なぜ海の化石が見つかるんでしょうか。
 これ実は、元々陸地だったところが海になり、現代にはまた陸になった、ということ。ほかにも、海の生物の化石を探していくと、何やら気になるものがありました。
 あさりのような貝の形をしています。

 これ実は、貝本体ではなく、貝がいた跡。「印象化石」というもので、貝そのものは溶けてなくなり、その跡だけが模様となって地層に残るんです。他にも、ここで見つかるのは珍しいというアカガイや、木の枝のようにも見える、マテ貝の仲間も出てきました。
 ものの1時間で、20個以上の化石を発見できたんです!
 東京・多摩川は、陸と海、それぞれの化石を見ることができる、絶好の化石スポットだったんです!