放送内容

第1568回
2021.03.28
スパイスカレー の科学 食べ物

 本格的なカレーとして、いま大人気の「スパイスカレー」。数種類のスパイスをブレンドした美味しさの秘密。それは“香り”にあったんです!
 一方、家庭で作るには、スパイスをそろえたりなかなか難しそうなイメージですが、なんと身近に手に入る“3種類のスパイス”で本格的なスパイスカレーがおうちでも!?
 さらに“食べる漢方薬”とも言われるスパイス。専門家協力のもと、免疫を高める特製スパイスカレー作りに挑戦!
 今回の目がテンは、おうちで美味しく免疫力アップ!スパイスカレーの科学です!

スパイスカレーの秘密は香り

 スパイスカレーとは一体どんなものなのでしょうか。訪れたのは、都内にあるスパイスカレーの専門店。スパイスカレーは、スパイスから作るカレーのこと。市販のルウやペーストは使用しません。

 さっそく作り方を見せてもらいます。まず入れたのは、ホールスパイスと呼ばれる粉状ではない原型の形状をした2種類のスパイス。ホールスパイスは、長時間の加熱に向いているので事前に油と一緒に炒め、香りを移していきます。続いて、しょうが、にんにく、青唐辛子、さらに、カレーリーフ。そしてパンダンリーフと呼ばれる葉っぱのスパイスを加えます。
 そこへたまねぎ、トマトなどの具材を入れ炒めたら、一般的なカレーにも使われるターメリックを投入。さらにトゥナパハと呼ばれる複合スパイスを入れます。この粉末状のスパイスは、素材になじみやすくカレーの中心となる香りが生まれます。
 最後に、主役となる食材を投入。今回使ったスパイスは10種類以上。素材の味を引き立たせるため、具材に合わせてスパイスの調合を変えます。これで色も香りもまったく異なるカレーになるんです。

 スパイスの原料は、植物の葉っぱや種子、さらに木の皮や果実、根など様々な部位から作られており、主に香り、色味、そして辛味をつける調味料としての役割を持っています。
 でも、なぜスパイスカレーはこれだけたくさんのスパイスを使うのでしょうか?
 香りの研究をしている山口大学の赤壁善彦教授に伺いました。
 赤壁教授によると、単調な香りだとすぐに飽きてしまい、それに加えて色んな香りを足すことによって、香りに深みとか厚みが出てそれが美味しさにつながるといいます。
 さらに、こんなことも。香りの感じ方は、鼻から直接嗅ぐ場合と、咀嚼することで口から鼻に抜けるときに感じる2通りあります。スパイスの香り成分は揮発性に違いがあるため、同時にすべてを同じように感じるわけでなくその感じ方が徐々に変化していき深みのある香りになっていきます。複雑なスパイスの香りが記憶や感情と結びつきおいしいと判断するんです。

 様々な香りによって、“具材の味”を引き出す役割を果たしているスパイス。具材に合わせて、“香りを自在に調節できる”のが、スパイスカレーの醍醐味だったんです!

たった3種類のスパイスで作れるスパイスカレー!

 なんと!3種類のスパイスさえあれば本格的なスパイスカレーが作れるというんです。
 今回、おうちでの作り方を教えてくれるのは、スパイス料理研究家の印度カリー子さん。レシピやスパイスの開発なども行い、スパイスから簡単にインドカレーが作れることを広める活動を行っています。

インドカリー子流 3種類のパウダースパイスで作る特製スパイスカレー!

 まずは、スパイスカレーの素となる「グレイビー」作りから。あまり聞き馴染みのないものですが、使う素材はいたってシンプル。インドカリー子流スパイスカレーは分量がすべて1。細かく覚える必要はありません!

グレイビーの材料はこちら(2人分)
・玉ねぎ 1個
・トマト 1個
・にんにく 1かけ
・しょうが 1かけ
・サラダ油 大さじ1
・食塩 小さじ1
・スパイス 各小さじ1
 ・ターメリック
 ・クミン
 ・コリアンダー(粉末のもの)

作り方
1 サラダ油をフライパンに引いて、中〜強火で玉ねぎ・にんにく・しょうがを炒める(約10分)。 *Point しっかり水分を抜くようにして炒めます。水分を抜くと仕上がりで自然なとろみがつき、こげ茶色まで炒めると旨味やコクが出てきます。 2 トマトをペースト状になるまで炒める(約2分)。コチラはトマト缶でもOKです。 3 弱火にしてターメリック・クミン・コリアンダーと塩を加えて混ぜ合わせる。
*Point 粉末状のスパイスは焦げやすいので香りを飛ばしすぎないのがポイント。 → 各レシピの4に飛びます。

 ターメリックはカレーの色味とコクを与え、クミンは、最初に立ち上がるカレーらしい香り、そしてコリアンダーは香りに深みができバランスの良い味わいになります。
 この3つのスパイスは、素材を引き立てるのが上手いスパイスでもあるので、鶏肉に変えれば、全く違ったチキンカレーになりますし、鶏肉の部分を豆に変えれば全く違った豆のカレーになります。
 これで、スパイスカレーの素となる「グレイビー」が完成!

 ちなみに、このグレイビーは冷凍保存も可能。まとめて作り置きしておけば、次からあっという間にスパイスカレーが作れます。

 スパイスカレーの素ができたら、次は具材選び。
 今回選んだのは、なめことほうれん草。具材は1品か多くて2品まで。具材が多いと、まとまりのない味になってしまうそう。そして、具材が決まったら、全体の味をまとめるため、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を使います。濃厚な味にしたい場合は、生クリームやココナッツミルクがオススメ。

なめことほうれん草のカレーの材料はこちら(2人分)
・なめこ 1パック
・ほうれん草 1束
・水、牛乳 各100ml *お好みで牛乳をココナツミルクに変えてもOK

作り方
4 カレーの素となるグレイビーに、水、牛乳を加えて均一にしてから、なめこ、ほうれん草を加えて約2分煮る。 5 塩で味を調え完成。

 スパイスには味がないので、スパイスをいくら足しても味が落ち着くことはありません。塩を加えて味を落ち着かせることで素材の香り、スパイスの香りがどちらも引き立つ美味しいカレーが仕上がります。
 みなさんもおうちで本格スパイスカレー試してみてください!

免疫を高める!?スパイスカレー

 免疫を高めるスパイスカレーを作ることはできるのでしょうか?ターメリック・クミン・コリアンダーの効能について機能性食品の専門家に聞いてみました。
 ターメリックに含まれるクルクミンは、腸内で強い抗酸化物質であるテトラヒドロクルクミンに変化。解毒力を持ち、免疫を高めることにつながるといいます。
 さらにクミンは、抗酸化能力が高く肥満防止・生活習慣病の予防が期待でき、コリアンダーは、認知症の予防が期待できるとのこと。さすがは“食べる漢方薬”とも言われるスパイス。
 なかでもターメリックに含まれるクルクミンは、免疫機能を低下しないように保ち、過剰なときは抑える働きがあるそうです。しかし、クルクミンは“体に吸収されにくい”という弱点が。
 そこで、カリー子さんのレシピに専門家のアドバイスを加え、クルクミンの吸収率と免疫を高める具材と、スパイスを組み合わせた、目がテン流スパイスカレーを作ります!

クルクミンの吸収率アップを目指した牡蠣のペッパーカレー

材料はこちら(2人分)
・牡蠣 200g
・水、ココナツミルク 各100ml
・レモン汁 大さじ1
・砂糖 小さじ1
・ブラックペッパー(粉末のもの)

作り方
4 カレーの素となるグレイビーに、水、ココナツミルク、レモン汁、砂糖を加えて均一にしてから、牡蠣を加えて7分程煮る。最後にブラックペッパーを加える。 5 塩で味を調え完成。
*Point 何か物足りない?と思ったら食塩不足!!!スパイス不足ではありません。工程5で塩で味を調えて完成です。
 ポイントは、乳製品の代わりにココナッツミルクを使うこと。ココナッツオイルとして有名なMCTという中鎖脂肪酸油という油が含まれていて、クルクミンを非常によく溶かすんです。ココナッツオイルに溶けたクルクミンは、吸収促進効果が期待されます。
 ここまでの作り方は、先ほどと同じ。最後に加えるのは、黒胡椒。
 これにもワケが。ココナッツミルクは濃厚で深い味わいを持ってます。そこにアクセント的に入れるブラックペッパーを香らせることですごくバランスのいいカレーになります。
 この黒コショウの主成分がピペリンという辛味物質。動物実験で見つかった効果として、ピペリンを同時に与えると10倍以上吸収率が高くなるという論文が出て世界中で注目されました。黒コショウに含まれるピペリンをとるとクルクミンの吸収率が高まることが期待できるんです。

 そして、主役の牡蠣にはほかの食材と比べ亜鉛が特に多く含まれています。亜鉛が不足すると、免疫が働かなくなってしまうことがあるため、味覚がおかしい症状が出た時など不足がちな方にはオススメ!
 これで、牡蠣のペッパーカレー、完成です!

 また、今回、3種類のスパイスを使った「スパイスカレーカシューナッツ」も作ってみました!

スパイスカレーカシューナッツの材料はこちら(2人分)
・砂糖,油 各小さじ1 *砂糖はお好みで
・塩,ターメリック,クミン,コリアンダー 各小さじ1/8
・カシューナッツ 50g

作り方
1 カシューナッツ以外の材料を冷たいフライパンで混ぜる
2 そこへカシューナッツ合わせて弱火で3分炒めて完成
*Point 最後に十分冷ますとカリッと仕上がります。有塩ナッツなら塩は省き、ピーナッツでも作れます。