放送内容

第1569回
2021.04.04
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物 植物

 今から7年前、放置され、荒れ果てていたこの土地を科学者たちの知恵と力で1から開拓。人と、自然や生き物が豊かに共存する里山再生を目指す長期実験企画、かがくの里!
 今年1月、阿部さんが1年目の新人スタッフと冬のかがくの里に住み込み!そんな住み込み生活中、ニホンミツバチの越冬の手助けに初挑戦!寒さをしのぐため寄り添って温まる、ミツバチが持つ驚くべき能力の撮影に成功!
 ところが、お世話していたニホンミツバチに大事件!一体なにが!?
 今回は事件勃発!ミツバチスペシャルです!

ニホンミツバチ大事件

 今年、かがくの里で初めて挑戦しているのが、ニホンミツバチの越冬の手助け。花が咲かず、ミツや花粉を集められない冬。野生のニホンミツバチは、春から秋にかけて集めたハチミツをエネルギー源に、翅を動かす筋肉を震わせて体を発熱させ、一塊になることで冬を越します。
 しかし去年11月の収穫祭で、2つの巣箱のうち1つから、ハチミツをいただきました。ハチミツは、ハチにとって冬を越すエネルギー源。ハチミツが足りないと、越冬できません。
 そして、ハチミツには重要な役割がもう一つ。ハチたちは体内に取り込んだハチミツからロウを作り、魚の鱗のようなロウ片として体の外に出します。そして、この小さなロウ片を使い、多数のハチの共同作業で巣版を作っていくんです。つまり、ハチミツが足りないと巣板を再生することができず、女王蜂は巣板に卵を産み付けるため、それが足り無ければ十分に産卵できません。

 なので、越冬するためにも、群れを増やすためにも人間の手助けが必要。そこで越冬を見守る2つの巣箱のうち、収穫祭でハチミツをいただいた方のハチの群れにだけ、その代わりとなるハチミツを少し混ぜた砂糖水を与えていくことに!
 砂糖水の減り具合をみてミツを足してあげる、という指示を受けた阿部さんは、ハチのお世話を頑張ってきました!
 しかし、越冬を見守って10日後、事件が!お世話している巣箱の入り口で起きていたミツバチ同士のケンカ。

 かなりのニホンミツバチが死んでしまっています。巣の中を調べてみると、砂糖水を入れていたボウルの中でも、かなりの数のハチが死んでいます。
 それでも巣の奥には、確かに以前に比べるとかなり数は減っていますがハチの姿が見られます。

 そこで砂糖水を補充し様子を見てみます。
 すると翌日。この日は、昨日のようなケンカは起きておらず、普通に活動しているように見えました。これで一安心…と思ったんですが、数日後、事態は急展開することに!
 巣箱の中をチェックすると、中はもぬけの殻。ついに群れごと姿を消してしまったんです。一体、ハチたちに何が起きたんでしょうか?

ニホンミツバチ大事件の真相

 なぜ群れは消えたのか?専門家の小野先生に聞いてみると、これは弱い巣に入り込んでその巣のミツを盗む“盗蜂”という行動だといいます。盗蜂は、花が少なく、ミツや花粉を集められない季節、冬なら比較的暖かい日に起きるといいます。働きバチも多く活発な群れでは、春を間近に控えて、女王蜂の産卵などの活動が始まっていて、ミツを奪うために数を少ない群れを襲うのです。
 今回襲ったと考えられるのがお世話していなかったもう1つの群れか、かがくの里近くの別のニホンミツバチの大きな群れ。エサやりが必要で、群れとして弱っているあのハチたちは、巣を守り切ることができず逃げ出したと考えられるんです。

 しかし、実はもうひとつ大きな謎が残された巣板にあったんです。それは、盗蜂の被害にあったはずなのに、なぜか巣板にはミツがたっぷりと残っていたのです。
 盗蜂に成功した群れにとって奪った巣のミツは、冬の寒さを乗り切る栄養源。しかし盗蜂の途中、一時的に気温が下がった日が続いたため、寒さでミツを運ぶことができなくなり結果的にあの巣箱のハチミツは残されたようなんです。
 残されたハチミツ、やっぱりもったいない…ということで、残されたハチミツは今後美味しく頂くため大事に貯蔵!そして、もうひとつの巣箱のハチたちが、“春”2つに分かれる分蜂ができるようにしっかり見守っていきます。

蜜源増やす活動に密着

 今、日本で出回っているハチミツ。それは、大きく2種のミツバチが集めたもの。ひとつは、かがくの里にもいる在来種ニホンミツバチ。そしてもう一種が、外来種セイヨウミツバチです。野生のニホンミツバチと比べ、長い間人間に飼育されてきたセイヨウミツバチは、飼いやすく流通している国産ハチミツの99.9%以上はセイヨウミツバチが集めたもの。実は最近、そのセイヨウミツバチに異変が起きているというんです。
 去年12月。番組スタッフが訪れたのは栃木県那須烏山市。セイヨウミツバチに起きている異変について、養蜂歴20年の柏さんに話を聞きました。
 すると、最近、セイヨウミツバチの数が増えなくなっている!というんです。実はセイヨウミツバチが増えないと、ハチミツが舐められなくなる…だけではありません!
 例えば、イチゴの値段の高騰。実はイチゴの栽培にはセイヨウミツバチの働きが欠かせません。

 柏さんたち養蜂家は、ハウス栽培がおこなわれる秋から春、イチゴ農家へミツバチを貸し出します。ミツバチは、イチゴの花蜜や花粉を集めるため、花の中をグルグル歩きその際、受粉します。すると、受粉したタネ一粒一粒の周りが膨らんで、果肉となるんです。
 しかし、ミツバチは冬の時期にハウス内で働くストレスなどで、何割か数が減ってしまうことが多く、そのため養蜂家は、農家から戻ってきたハチを、春から夏、外で飼って数を増やしていました。
 ですが、最近それが増えず、受粉用のセイヨウミツバチ不足が大きな問題になっています。つまり、ハチが不足した結果、受粉にかかるコストがあがり、イチゴの値段は上がってしまうというわけ。

 しかし、なぜセイヨウミツバチが昔に比べて増えなくなったのか?ハチの専門家、小野先生によると、天敵となるダニ類や農薬の影響など様々な要因が考えられるそう。その中でも大きいのが、蜜源植物の減少。日本で蜜源となる植物はレンゲ、クローバー、ナタネの一年草、樹木だとサクラやトチ、そして果樹のリンゴ、クリ、ミカン、ウメなど。例えば一昔前、田んぼで稲の収穫が終わるとレンゲソウの種をまき、花を咲かせたあと、すきこんで肥料にしていました。しかし最近は、コメ作り自体のやり方が変わり、蜜源だった春のレンゲ畑はほとんど見なくなりました。
 さらに異常気象や地球温暖化で、樹木の植生や開花期が変わったりと、ミツバチたちがミツを集められる場所が減ってしまっているんです。ミツはミツバチにとって生きる糧。それが減ってしまえば、数を増やすことはできません。

 この問題解決のため、養蜂家の柏さんは、山に新たな蜜源を作る試みを始めました!その計画は、2年前、ハチがミツを集められない杉やヒノキの針葉樹林だった山をすべて伐採。去年から、宇都宮大学の学生と共に、ミツバチがミツを集める広葉樹を植えています。しかも、植えている広葉樹の数々は、咲く時期が少しずつ違い、2月から8月まで、ハチがミツを集められる山になると言います。
 ハチにとってミツ天国ともいえる山ができれば、どんどん数が増えるはず!
 四季を通じて花が咲くよう植樹する、この取り組み。かがくの里でも参考になりそうです!