放送内容

第1570回
2021.04.11
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物 水中の動物

 今から7年前、放置され、荒れ果てていたこの土地を科学者たちの知恵と力でイチから開拓。人と、自然や生き物が豊かに共存する里山再生を目指す長期実験企画、かがくの里!
 これまで里の池にカルガモが現れたり、畑にはニホンノウサギの赤ちゃん、さらにフクロウが来た痕跡まで!里山が再生するとともに、動植物の多様性がどんどん増して、自然が豊かになっていくのを目の当たりにしてきました。そんな里の生き物たちを美しく撮影して後世に残したい!そこで立ち上がったのが!「かがくの里 図鑑プロジェクト」!このプロジェクトに興味を示し、生き物写真のエキスパート3人が名乗りを上げました!
 今回は、かがくの里図鑑プロジェクトスペシャルです!

里にやってきた生き物撮影のエキスパート

 かがくの里に生きる四季折々の、生き物たちを撮影し、命のつながりを一冊の図鑑にまとめるその名も図鑑プロジェクト!2月、写真撮影に挑む3人のエキスパートが里にきてくれました。
 まずは、トーキョーバグボーイズというコンビで生き物の撮影を行っている法師人さんと平井さん!

 写真担当の法師人さんは21歳。水生昆虫のゲンゴロウやタガメが好きだったことから、6年前、15歳の時に昆虫の写真家を志し、その後、カメラ片手に生き物を追い続け、セミやトンボが羽化をする決定的瞬間など様々な昆虫の姿を撮影してきました。培ってきた豊富な生き物の知識を武器に法師人さんには、里の昆虫を中心に撮影してもらいます。
 トーキョーバグボーイズ、動画担当の平井さん。生き物たちの生態や特徴、自然を生き抜く知恵を動画に記録することで、生物多様性の保全に役に立ちたい。そんな思いで、動画を取り続けているそうです。狙った生き物の、狙った瞬間を撮影するために、時には何日も待ち続けるそうで、その粘り強さが信条。平井さんなら、かがくの里に暮らす動物たちの凄い瞬間を、動画でとらえてくれそうです!
 そんなトーキョーバグボーイズの2人が去年、超貴重なある昆虫の姿を写真に収めることに成功したんです!それが、「アオヘリアオゴミムシ」というオサムシの仲間。実はこの虫、環境省のレッドリストには絶滅の危険性が極めて高い、絶滅危惧1A類に指定されています。東日本では50年もの間、確認されておらず、すでに東日本では絶滅したのではないかと思われていました。ところが去年、東日本のとある場所でこの虫を平井さんが発見。法師人さんがその姿をカメラで捉えることに成功したんです。

 そして3人目は、普段、タカなどの猛禽類や哺乳類など、動物の調査を行う会社に勤めている吉田さん。

 仕事で様々な生き物を調査するかたわら、簡単には見ることができない生き物をカメラで狙い続けています。それは、土壌動物。土壌動物とは、モグラやネズミ、ミミズなど生活のほとんどを落ち葉や土の中で過ごす動物の総称。学生時代から、趣味で様々な生き物を撮影。いまや、土壌動物について深く掘り下げた本を出すまでに。中でも、得意としているのが、 体長1cmに満たない、爪よりも小さな生き物の撮影!吉田さんには、土壌動物を中心に大きな生き物はもちろん、ミクロの生き物たちを撮影してもらい生態系のつながりをカメラで探ってもらいます!
 この3人で動き出した図鑑プロジェクト!どんな生き物が撮影できるのか?楽しみです!

生き物撮影のプロが里を視察!

 初めて里に来た3人。里がどんな場所なのかまずは案内することに。まずは、毎年稲が黄金色の穂をつけ豊かな里の恵みを与えてくれている田んぼ。農薬を使っていない里の田んぼに、珍しい生き物が来る可能性は高いそうです。
 続いては畑を案内。平井さんが近づいたのは、畑に置いたニホンミツバチの巣箱!実は大のハチ好きだそう。
 今までかがくの里では、貴重な蜂球行動を目撃したり、ニホンミツバチの分蜂も運よく撮影できましたが、平井さんが撮影したいという超貴重なハチの生態があるそう。それは、春にだけ起こる二ホンミツバチの交尾!女王蜂もオスバチも上空を飛びながら行われるため、夢と語るほど超難関の撮影ではありますが貴重な交尾シーン!是非カメラに収めてください!

 その後3人は、今どんな生き物が見られるのか?プロの目で調査!
 まずは、池の中の生き物!そもそもこの池は7年前。田んぼの用水として穴を堀り、裏山で発見した湧き水を引き込んで作りました。田んぼの豊かな栄養が流れ込む池には、オスが卵を背中で育てるコオイムシやカマキリと名前がついてますが、カメムシの仲間ミズカマキリ。さらに絶滅危惧種に指定されるタガメまでが見つかったんです。
 今、池には一体どんな生き物がいるんでしょうか?
 すると、見つけたのはヒメゲンゴロウ!ゲンゴロウは現在、“農薬”や、“外来種の影響による生態系の変化”で激減。日本にはおよそ140種いるゲンゴロウの中で今回見つけたヒメゲンゴロウはまだ大丈夫ですが、絶滅危惧種に指定される種類が増えつつあるといいます。
 その後も、池の水を飲みにやってきたニホンミツバチも見逃しません!撮影のプロたちは、池でも色んな生き物を見つけだしたんです。

里の裏山にはどんな生き物が?

 続いてはかがくの里の裏山。裏山といえば、阿部さんが、冬の住み込み生活の間に行った昆虫調査で、専門家が驚くマイマイカブリを発見していました!コツコツと間伐を行い、里山の整備を行ってきましたが、今、どんな生き物がいるのか?
 視察ですが、もちろんカメラも用意。ミクロ撮影が得意な吉田さんは樹皮の中を捜索。すると!早速ウズタカダニを発見。ウズタカダニは菌類などを分解し、土に戻す大切な役割を担う生き物。

 変わった習性を持っているそうで、自分の脱皮した殻を背中に背負っていくんです。
 平井さんは大好きなハチを試し撮り!すると、ひっくり返ったハチの撮影に成功。ハチの専門家小野先生によると、これは巣に帰ってきたハチと飛び立とうとしたハチの羽ばたきが、乱気流となりハチがひっくり返ってしまったといいます。

 そして法師人さんは吸虫管と呼ばれる、昆虫を傷つけずに捕まえる道具を使って昆虫採集。捕まえたのはアトキリゴミムシの仲間。法師人さんは数百種類にも及ぶ昆虫の特徴を覚えており、昆虫にあった方法で捕まえ、撮影するそうです。
 対抗心を燃やした阿部さんも生き物を探していきます!すると!なんと前回に引き続きマイマイカブリを発見!
 その後も里の裏山を探索していくと、法師戸さんが見つけたのはコクワガタの幼虫。

 この時期のクワガタは、氷点下でも体が凍らないように、不凍液という液体で体内を満たしていて、体が凍らないように冬を越す術を持っています。コクワガタの幼虫は朽木の中で越冬するのですが、この朽木は間伐した材木を山に置くことで出来たもの。間伐を行った結果、幼虫の生育にも役立っていることがわかりました。
 季節ごとに、色んな生き物を発見できそう!かがくの里図鑑プロジェクトお楽しみに!!