放送内容

第1590回
2021.09.05
かがくの里 の科学 地上の動物 場所・建物

 今から7年前、放置され、荒れ果てていたこの土地を科学者たちの知恵を出し合い、緑あふれる場所へ。人と、自然や生き物が豊かに共存する里山再生を目指す、長期実験企画かがくの里。
 里山再生の一環として、2年前から始めたのが、かがくの里にフクロウを呼ぼうプロジェクト。森の生態系の頂点にいるフクロウが減ると、エサとなるネズミなどが増えてしまい里山全体の生態系のバランスが崩れてしまうといいます。そこでフクロウにすみついてもらうため、巣箱を裏山に設置。定点カメラを仕掛けたところ、ついにフクロウの姿をカメラに収めることに成功!そして今回、ついに!巣箱の中に卵があった!?
 今回のかがくの里は、フクロウの巣箱に卵を発見?!スペシャルです!

フクロウの貴重な姿を捉えた!

 かがくの里にフクロウを呼ぼうプロジェクト!2年前、コツコツと間伐を行い、少しずつ整備してきた里の裏山を、フクロウ研究のスペシャリスト守山先生に見てもらい、フクロウが住みやすい環境になった里の裏山にフクロウの巣箱を設置。

 去年7月。巣箱をチェックしたところ、ヒナが食べた鳥の羽根!そう、フクロウが子育てを行っていたんです!巣箱を仕掛けた年にすぐフクロウが入るのは、専門家守山先生も驚くラッキーな展開!しかし、フクロウが里に来ている形跡こそあったものの、この年その姿を見ることは叶いませんでした。
 そこで今年1月。いつ子育てが始まっても、撮り逃さないよう、夜間撮影が可能な定点カメラを設置!24時間体制で撮影した映像を1ヶ月間保存できるというすぐれもの。これでフクロウの姿をねらいます!

 そして今年の3月末。カメラに撮りためられていた動画をチェックしているとついにこの時が!巣箱を映す定点カメラが揺れたと思った瞬間!去年、子育ての痕跡があった巣箱にフクロウが!さらに、もう1羽フクロウが飛んできて、しかも巣箱の中に入っていったんです!
 さっそくこの映像を守山先生に分析していただくと、去年子育てを行った形跡があった巣箱に、今年もそのつがいのフクロウが戻って来た可能性があるといいます!このまま順調に行けば子育ての撮影が出来るかもしれません!

 そして4月。前回、撮影に成功した日から2ヶ月半後、同じ巣箱につがいのフクロウが戻ってきたんです!さらに5月、明け方5時の映像にもフクロウが!陽が出ている時に撮影できたのは初めてです。フクロウは夜行性のため、エサを取るなどの活動は夜。朝方に見られたフクロウは狩りを終えた後に巣箱の様子を覗きに来たのかもしれません。

 フクロウは3月から5月が繁殖期。そろそろ卵を産んでいてもおかしくありませんが、カメラを設置している、去年子育てを行った巣箱を含む3つの巣箱には卵を産んだ形跡はありません。
 しかし、巣箱は全部で7ヶ所。5月末、阿部さんと西野さんは他の巣箱で子育てをしていないか確かめる事に。一番里に近い巣箱には入っていませんでした。しかし、次の巣箱を見ると、なんと巣箱の中に卵が!?カメラで巣の中の卵を撮影すると、なんとそこには羽毛に隠れた卵が!果たしてこれはフクロウの卵なんでしょうか!?

巣箱の中に卵を発見!!

 フクロウの巣箱を探索していると、そこには卵が!しかし、親鳥の姿がなかったため、後日、再び来てみることに。
 6月。卵を抱く親鳥の撮影をしようと、カメラを棒にくくりつけ、そーっと巣箱を覗いてみると、巣にいたのはなんとフクロウではなくオシドリ!「おしどり夫婦」の由来となったカモの一種。
 オスは頬から肩にかけてオレンジ色の羽毛がありカラフル。一方、メスは全身灰褐色で目の周りが白いのが特徴。でもなぜオシドリがフクロウの巣箱で卵を温めていたのか?

 6月中旬、守山先生に見てもらいました。すると、フクロウよりも珍しいといいます。オシドリの繁殖期は4月から7月。水辺の草むらなどに巣を作るマガモやカルガモと違い、自然界では水辺に近い高い木の樹洞と呼ばれる木の穴で、卵を産み、子育てを行います。かがくの里のような人里に近い森で巣作りするのはとても珍しいことなんだそうです!

 それはそうと、肝心のフクロウの卵は見つかりません。繁殖期が終わってしまったフクロウですが、なぜ今年は卵を産まなかったんでしょうか?
 守山先生によると、明確なことはわからないが、おそらくメスの体の成熟度合い、栄養の状態によって決まるといいます。中には、毎年産む個体、2年に1回産む個体、場合によっては3年に1回ぐらいで産む個体もいるそうです。
 フクロウの生態は未だ分かっていないことも多く今年は残念ながら卵を産まない年だったようです。フクロウは来年に期待して、今年はオシドリの子育てを見守るために離れた場所に定点カメラを仕掛け、オシドリの撮影を行うことになりました。

卵を育てるオシドリの観察

 6月中旬。オシドリ観察に気合十分の阿部さんは野鳥撮影のプロをお呼びしました。野鳥撮影40年!茨城県在住の写真家 小曽納久男さんとアシスタントの宮本さん。小曽納さんのライフワークは、水戸市を中心に行っているハクチョウの撮影。着水のシーンや飛び立つ瞬間を何時間もかけシャッターチャンスを待つそうです。
 今後、かがくの里図鑑プロジェクトの一員として里ならではの、野鳥の撮影をお願いします!

 早速、オシドリ撮影の準備開始!里山の風景の中に溶け込むブラインドと呼ばれるテント。この中に隠れて、望遠レンズを使って撮影を行います。警戒心の強いオシドリから姿を隠す、写真家の技です!
 この後、オシドリの撮影をするべく、巣の下見に行くと、予想すらしなかった光景が!
 なんとオシドリが入った巣箱に大きなヘビが!本州では最大の大きさになるアオダイショウ、最大全長2メートルになります。なんと、アオダイショウがオシドリの巣を襲い、卵を食べた直後のようです!お腹は確かに卵型に膨らんでいます。予想もしなかった出来事。

 いつアオダイショウが来たのか?仕掛けていた定点カメラを確認してみると、なんと、アオダイショウが来たのは阿部さんたちがこの巣箱に来る1時間前のことでした。
 オシドリの卵は全て食べられてしまったのか?確認してみると、やはり卵は全て食べられてしまっていました。アオダイショウも生きるために捕食しなくてはなりません。オシドリの巣に起きたこともまた、厳しい自然の営みなのです。