放送内容

第1593回
2021.09.26
人類はこう作った!布 の科学 植物 物・その他

 人類の暮らしに欠かすことができない布。現代では機械によって大量生産することができますが、そもそも人類は、どうやって布を作っていたのか?
 目がテン!が発明の原点に立ち返る!人類はこう作った!
 挑戦するのは…数々の過去の技術を振り返ってきた石田剛太さん!
 実際にやってみると原始的な布づくりは想像以上に手間がかかる作業でした。
 というわけで今回の目がテンは、人類はこう作った!「布の科学」です!

亜麻を叩き繊維を取り出す

 古の布を再現する為、石田さんがやってきたのは自然豊かな都内の森。合流したのは東京造形大学の高須賀先生です。高須賀先生は自然の素材から、機械を用いない原始的な方法で布を作り出し、服に仕立てる研究をしています。
 高須賀先生によると、人類が初めて身にまとった植物の繊維は亜麻。亜麻は麻の一種でリネンとも呼ばれます。旧石器時代、人類は主に毛皮を身にまとっていましたが、旧石器時代の途中、少なくとも2万年ほど前には人類は亜麻を加工する技術を獲得。チェコにある旧石器時代の遺跡からも植物を加工した布の痕跡が発見されています。

 そこで、石器時代にかえって森の中で布を作ってみます。高須賀先生も初めての挑戦。ということで、東北大学の佐野勝宏教授に時代考証をお願いしました。 今回、北海道で亜麻栽培を行なっている亜麻公社さんにお願いして、乾燥した亜麻を分けてもらいました。

 最初に、亜麻から繊維を取り出します。早速、一握りの亜麻をとり、山で拾った枝で叩きます。一心不乱に叩いていると、布の原料となる亜麻の繊維が。叩くことで繊維のまわりの皮などが取れて、必要な繊維だけが残ります。

 大量の繊維を取り出すべく必死に叩き続けること40分。とれたのはたった一握りの繊維でした。これでは、あまりにも効率が悪いように思えます。実は、石田さんが叩いていたのは、乾燥させただけの亜麻でした。

 糸を取り出す工程として、レッティングという作業を行い発酵させた亜麻を使うと、手で揉むだけで、すぐに繊維が取り出せることが分かっています。しかし、レッティングの作業には2週間かかるので、今回は処理がしてあるものをもらってきました。さっそく叩いてみると、かなりほぐしやすい様子。
 佐野先生によると、旧石器時代の人類が意図的にものを発酵させる技術を持っていたかはまだ分からないとのこと。

 さらに地道に手でほぐしたり、木で払ったりしてゴミを取ります。すると、苦労の甲斐あってだいぶ綺麗になりました。ここからはスタッフも加わってスピードアップ!
 もくもくと亜麻を叩いてもんで4時間!ほんのわずかですが繊維がとれました!

亜麻の繊維を糸にする

 作業2日目。この日の作業は、繊維から糸を作る!繊維自体はとても短く10cm程度しかありません。これを糸にするのが紡ぐという工程です。
 繊維に回転をかける=撚りをかけると、繊維同士がねじれて巻き込まれることで糸になっていきます。

 石田さんも紡ぎに挑戦すると、意外にも糸作りの才能を発揮!と思いきや、手を離すと撚りが戻り切れてしまいました。これでは糸として使えません。
 実は旧石器時代の人類も同じ壁にぶち当たって解決策を見いだしていたかもしれないんです。その解決策が「スピンドル」。現代も糸紡ぎにも使われる道具です。
 佐野先生によると、旧石器時代の様々な遺跡から石や骨で作られた穴の空いた円盤が見つかっているとのこと。これを糸作りのスピンドルだったと考える研究者もいるんです。

 では、どうやって使っていたのか?
 まずは、適当な大きさの柔らかい石を探し、硬い石でほじり続けると穴を空けることができます。その作業は何日もかかってしまうため、今回はドリルを使って時短します。

 そして、まっすぐな枝をとがらせて、石の穴へと差し込むとスピンドルの完成です。スピンドルの芯にヒモを結びつけて、そのヒモに繊維の一端を絡ませてスピンドルを回すと、どんどん糸が紡がれていきます。そして、できあがった糸はスピンドルの芯に巻き付けていきます。こうすれば撚りが戻って糸が切れることもありません。

 石田さんも先生からレクチャーされながらスピンドルの使い方を覚えます。スピンドルが慣性で回り続けようとする力をうまく使いどんどんと糸が出来ていきます。
 日が沈むまで作業を続け、2日目にできあがった糸は、先生と石田さん合せて137mでした。

織り機を作り布にする

 作業3日目。糸をどうやって布にするかというと、先生から出た言葉は織り機。
 さっそく竹を割り、角を落としてなめらかにしていきます。時間の節約でナタやハンマーを使用。

 その竹を地面に打ち込みます。さらにもう1本の竹を1.5m離れた場所にも打ち込み、最終的には4本の竹を一直線に。この後、両端の竹に糸を往復させて、縦糸にします。糸を結びつけたら、その糸をそのまま20往復。合計で40本の縦糸がかかりました。
 テンションのかかり方を調整しながら縦糸を固定していきます。

 その一方で長い竹竿を地面に打ち込んで、そこへ縦糸を持っていきます。
 縦糸と竹竿を結びつけて、セッティング完了。これで横糸を通して織っていきます。

 織物というのは縦糸に対して横糸が、上、下、上、下と交互に交差していきます。そして、端まできたら先ほどとは逆の順番で、上、下、上、下と交差していくという構造をしています。なので、偶数番目の縦糸だけ竹串で持ち上げます。
 そうしてできた隙間に横糸を通せば、一気に交互に交差させることができるのです。帰りは奇数番を持ち上げて糸を通します。それを繰り返すことで布が織れていきます。

 石田さんが行ったのは、織り機と体とが一体化している、腰機と呼ばれる原始的な織物テクニック。実際、旧石器時代の人類がどのように布を織っていたのかはまだわかっていません。

 夏の暑さの中、黙々と続く単純作業。すると、開始から2時間。縦糸の順番を数え間違えて、織目がちぐはぐになってしまいました。しかし石田さん、手を抜かず、間違えた所まで戻ることを決断。蝉時雨の中、1歩も動かず布を織り続けます。
 その後も集中しながら作業を続けるうちに、日が沈み辺りは闇の中。最後に、竹串から布を取り外して、3日かかって旧石器布ついに完成です!
 温泉で布作りの汗を流した石田さん。作った布で体に着いたしずくを拭ってみると、見事に水分を取り去ることができました!