放送内容

第1594回
2021.10.03
かがくの里 の科学 地上の動物 植物 場所・建物

 今から7年前、放置され、荒れ果てていたこの土地を科学者たちの知恵を出し合い、緑あふれる場所へ。人と、自然や生き物が豊かに共存する里山づくりを目指す、長期実験企画かがくの里。
 5年前から取り組んでいるニホンミツバチ養蜂プロジェクト!里に巣箱を設置し、日本の在来種で近年数が減っているニホンミツバチを呼び込もうというこの企画。去年の収穫祭で、たっぷりとれた貴重なハチミツ。12月から、とった蜜を補うために砂糖水の給餌をおこない、ニホンミツバチの越冬を見守ってきました。そのミツバチたちは今、どうなっているのか? 実は想像以上にすごいことに!ハチの巣が、かがくの里史上最大の大きさに!なんとそのおかげでスモモが大量に?
 今回は、ニホンミツバチ養蜂プロジェクトの今を大特集します!!

越冬後のハチたちの現在を大特集

 4月中旬。無事、冬を乗り越えたニホンミツバチの巣で分蜂が。分蜂とは、ハチの数が増えて巣がいっぱいになると起きる現象。女王バチが新たな女王バチを産み、巣と働きバチの半分を譲り、残りの働きバチを引き連れ新たな巣をつくるため旅立ちます。群れが2つに分れるので分蜂というんです。

 ちょうど里に来ていた昆虫写真家の平井さんと法師人さんは、ハチの群れの中に女王バチを発見!
 他のメスと比べると、大きさや色が違うんです。興奮のあまり、ハチまみれになるのも気にせず、平井さんが撮影していると、さらに目を疑う光景が!

 今回、同じ巣で分蜂がなんと2回も起こったんです!
 群れが大きい場合は2回分蜂することもあるそう。その場合、1回目の分蜂は母親の女王バチ、そして2回目の分蜂は長女の新女王、元の巣では二女が後継者となるそうです。二つの群れは、先遣隊のハチが新たな巣を見つけてくるまで、近くの木で一時待機。

 そこを里の達人、西野さんがそっと確保。それぞれ用意した巣箱に入ってもらうと、その後ちゃんと定着してくれ、せっせと花粉や蜜を運んでいます。
 この分蜂から1か月後。分蜂した群れを確認してみると、巣板の数は3枚と少なめ。
 一方、すごかったのは、もう一つの分蜂群!中を覗くと、鏡越しに巣板が巨大になっているのがわかります!

 なぜ巣の成長に差があるのか?
 ハチの専門家小野先生に話を聞きました。2回分蜂が起きましたが、最初の分蜂はお母さんの女王、2回目の分蜂は娘の女王による分蜂。ミツバチの場合、新しい女王の方の産卵が非常に活発だと言われており、その産卵力の差がそのあとの成長の差につながっていると考えられるというんです。
 たしかに、今年かがくの里で起こった2回の分蜂のうち、今成長が早い群れは、2回目に分蜂した群れの方。若い女王バチの方が、働きバチが早く増えるため、巣が大きく成長していたんです!

 すると数日後、西野さんはまだまだ巣は拡大すると予想し、成長が早い方の巣箱を増築すると言います!
 中には、巣板の落下を防ぐための棒も4本!早速一段追加するため巣箱を持ち上げると、ハチたちはたっぷりと下まで!1段追加し、巣の拡大に備えました。
 しかし驚くのはまだ早かったんです!その1か月後、再び巣箱の増築をする必要が出てきたんです!中を覗くとすごい数のハチが!ということで急いで増築!巣板とハチは箱の下ギリギリまで来ていました!この段階で巣箱は全部で5段に。
 さらに1か月が経った7月下旬には巣はとんでもないことに!巣板の長さを測ってみると、分蜂してからわずか3か月でハチたちは巣板を65センチにまで大きくしていたんです!

 でも、なぜ今年は巣が大きくなったのでしょうか?
 小野先生によると、女王バチが持っているポテンシャルを発揮させるためには、巣箱の外の豊かな自然環境がないといけません。今年、かがくの里のニホンミツバチの巣の成長が非常に良かったのは、かがくの里の周りの自然環境が良かったと伺い知る指標として使えるといいます。

ハチのおかげでスモモの実が大量に!

 せっせと花粉や蜜を集めるハチたちのおかげで、今年里にある変化が!それは、巣箱の横に生えていたスモモの木にたくさんの実が!スモモは、昆虫が受粉を媒介する虫媒花。ミツバチが近くにいたから、たくさん実をつけたと考えられるんです。

 これは、かがくの里で自然循環ができている証拠!そこで!スモモが熟すのを待ち、大量のスモモを一気に収穫!およそ400個ほど取れました!
 せっかく取れたスモモ、400個全部生では食べきれないということで、調理科学の専門家露久保先生に相談!

 露久保先生がおすすめなのは、シロップ。ということで早速調理スタート。
 実はシロップ作りはとっても簡単!氷砂糖とスモモを煮沸消毒した瓶に交互に入れていき、最後に風味づけと菌の繁殖を防ぐためのりんご酢を足したら、あとは氷砂糖が溶けるのを待ちます。
 そして7月下旬、1か月ほど置いたシロップを使いカキ氷作り!ハチの恩恵を受けたスモモシロップを満喫しました。

かがくの里 ドローン&西野さんリポート

 8月。阿部さんやスタッフがまたもや行けなくなった里から最新映像が。なんとドローン映像。実は、図鑑プロジェクトで活躍している、茨城在住の野鳥写真家小曽納さんは普段からドローンでの撮影をしており、素敵に撮ってくれたんです。そこには、西野さんをはじめ、地元の方々に美しく里を管理していただいているありがたい様子が!

 そして、ドローンだけでなく西野さんの最新リポートも!まずは、2年前、雨よけが欲しい!と阿部さんがお願いし、西野さんたちに作ってもらった屋根付き作業スペース。収穫祭でも毎年大活躍していますが、今回、西野さんや地元の方々の手によって、雨や日差しを避ける庇や、おしゃれな格子まで取り付けられグレードアップ!
 さらに!畑の雑草刈りや、収穫祭には欠かせない里の作物たちもしっかり見守ってくれています。

 そして気になる稲の様子。今年の稲は、苗を種もみから田んぼで育てる苗代に初挑戦し見事成功!
 6月、無事田植えを終え、それからおよそ3か月。イネは順調に背を伸ばしています。

 そして、アスパラガスも元気よく育ってます。最後に見た時と比べるとずいぶん成長しています。
 そして、今年初めて挑戦したワタ。種を蒔いてから4か月で、とんでもなく伸び、小さな花も。地元の皆さんが、こまめに世話してくれているおかげで、作物はとっても順調のようです。

 続いては、ソバ。ソバといえば、かがくの里2年目の時、常陸秋ソバを栽培し、みんなでいただきました。西野さんと阿部さんは、今年初めて栽培に挑戦している自然薯と合わせて、収穫祭でとろろソバを出したいと、秋ソバをまく予定でした。しかし、県境を越えられない今、阿部さんを待っていたら間に合わなくなる!と西野さんたちが畑に秋ソバをまいてくれました!

 まずは凸凹になってしまっている畑を鳴らすところから。そのあと、種をまく目印となるラインを引き、秋ソバの種を入れた種まき機で何往復も畑に種を蒔いていきます。巻いた種の上にはしっかりと土をかけ、さらに鳥よけを付けます。キラキラのテープなど、普段見慣れないものがあると、鳥は最初、警戒して近づかなくなります。そのうち、鳥は慣れて、テープを気にせず畑に来ますが、すでに種が芽を出しているので、食べられる心配はありません。一時的に鳥よけするための対策なんです。

 皆さんの努力で蒔き終わったソバは1週間後、芽を出し順調に成長。また1週間後にはさらに伸びて、秋の収穫祭は期待できそうです。
 そしてソバに欠かせない自然薯も、6月に植えた頃と比べると葉が生い茂り、こちらも順調な様子!
 西野さんたちを中心に、多くの地元の方々の協力で、かがくの里は阿部さんなしでも、素敵にバージョンアップしているんです。