放送内容

第1597回
2021.10.24
再生栽培 の科学 植物

 本来は捨ててしまう野菜の一部を育て、植物が成長する様子を楽しむ再生栽培。
 その魅力とは何なのか?野菜ソムリエの渡辺裕太さんが自宅でチャレンジ。小さなかけらからも芽吹く野菜の生命力の謎に迫ります。
 今回の目がテン!は植物の神秘に触れる再生栽培の科学です!

野菜の一部から再生する再生栽培

 再生栽培、一体どんなものがあるのでしょうか?訪れたのは、再生栽培歴10年の大橋明子さんのお宅。webを通じて、再生栽培のやり方を公開したり、本も出版するなど再生栽培のスペシャリストなんです!

 早速どんなものを育てているのか見せてもらうと、ペットボトルの容器に入っていたのは玉ねぎの芯。中心の部分だけを切って残したものです。私たちが普段食べている玉ねぎは、実は白い葉の部分。玉ねぎの根、茎がある中心を残すことで再び芽を育てることができるんです。

 同じように紫たまねぎの中心部分を残して育て約2週間たったものを見ると、長く生えた緑色の葉が。この部分も薬味として美味しく食べることができるんです。
 根の部分以外は水に浸かると腐りやすくなってしまうため、ペットボトルの口を利用して、根だけを水につけています。さらに、この苗をホームセンターなどで売っている培養土に植えると再び玉ねぎに成長するんです。

 そして、バルコニーを覗かせてもらうと、もっと驚きの再生栽培の野菜が!裕太さんが見つけたのは、古くなった鷹の爪の種から育てたという唐辛子。
 十分に湿らせた培養土に、タネを多めにまくのがポイント。1週間程度で発芽するので、成育の良い苗を1、2本残します。2、3ヶ月後には花が咲き、花が落ちた後実がつきます。

 そして、ミニトマトもタネから同じように育てることができます。トマトのゼリーの部分にはアブシシン酸という発芽を抑制する植物ホルモンが含まれているので、タネをペーパータオルになすりつけて、ゼリーを取り除いてから土に植えます。すると1週間程で芽が出て約4ヶ月後には実がなるんです。

 さらに、わざわざタネから育てずとも再生できる不思議な力が植物にはあると言います。実は、山芋は皮を使って再生栽培ができるんです。3かける6cmの板状に切った山芋の皮を腐りにくくするため、1日ほど天日干しして土に埋めます。ひと月ほどで発芽。米のとぎ汁などを肥料とし2週間ごとに追肥をします。夏場には、つるがぐんぐんと成長し伸びていくんです。

 なぜ植物にそんな能力があるのか?京都産業大学の木村成介教授に聞きました。
植物を増やす方法には、タネから増やす種子繁殖のほかにも、根や、茎といった器官の一部から新しい個体を作る栄養繁殖があります。挿し木や接ぎ木なども栄養繁殖の一つなんです。

 さらに、山芋の茎であるわき芽が肥大化した部分であるムカゴも。芋と同様に食べることができます。他にも、余ったポップコーンから爆裂種とうもろこしを育てたり、芽が出てしまったニンニクのかけらを再生栽培し、生にんにくとして楽しんだり、エンドウ豆の若葉である豆苗からは、絹さややエンドウ豆まで育ててきました。これまで大橋さんが育てた再生栽培の野菜はなんと70種類以上!

 大橋さんは、野菜の一部が収穫にいきつくまで立派に成長していくのを見ると、野菜の生命力を感じられる!そのあたりが一番の魅力といいます。

渡辺裕太が再生栽培にチャレンジ!

 一つ目のポイントは、新芽が出てくる場所を残した野菜を選ぶこと。  茎の先端に対し、葉と茎の境目から出る芽のことをわき芽といいます。植物は細胞分裂が盛んで、葉や茎の成長を促す分裂組織が茎の先端や、葉と茎の境目にたくさんあります。再生栽培では、この分裂組織がある場所を利用して、葉や茎を成長させているんです。つまり茎の先端か、脇芽を残した野菜を選ぶと良いということなんです。

 2つ目のポイントは、根を残した葉野菜を選ぶこと。
 今回選んだのは、茎からニョロリと伸びてくる葉の部分を収穫して食べるニンジンと、しっかりと根のついた葉野菜であるコマツナをゲット。
 ということで、いよいよ再生栽培に挑戦します!

 まずは、ニンジンを上から2cmほど切り落とします。続いて切った部分をお皿にのせて、切断部分が、しっかり浸かる程度に水を注ぎます。後は、毎日こまめに水を取り替えるだけです。

 続いてはコマツナ。根元を切るときにあるポイントが。根元から3cmほど茎を残してカットし、このとき中央にある小さな葉っぱを残すのがポイント。根の部分だけを水に浸し、半日から1日放置します。植物を元気にし根の再生を促す効果もあります。

 そして、プランターの中に、ホームセンターなどで売っている鉢底石を敷いて、培養土を深さ15cm程度入れます。10cm~5cm程間隔を空けて、コマツナを植えていきます。植え終わったらたっぷりと水を与え、根付いて成長するまで、2、3日陰に置き管理します。

 今回は、2週間ビデオを回し、観察。コマツナは、3日目には早くも成長し、葉が立ってきたので、以降は日向に置き管理。土の表面が乾いたタイミングで水をあげていきます。しかし、6株から1株だけ生き残るという結果に。

 一方、ニンジン葉の再生栽培。3つ準備しましたが、残ったニンジンは1つだけ。ただ、唯一残ったニンジンは、見事な形に!
 もっと上手に育てるにはどうすればよかったのでしょうか?

 大橋さんによるとニンジンの失敗の原因は、水に雑菌が繁殖してしまったこと。とくに暑い日は、直射日光を避け、小まめに水をかえてあげると良いそうです。
 コマツナは、根元が浮いていたのがひとつの原因。最初に挿すとき、土を株ギリギリまでしっかり密着させてあげると良かったそうです。
 ちなみにコマツナが順調に育っていくと、大きな葉をつけ、春まで育てると、綺麗な菜の花を拝むこともできます。

再生栽培の野菜を生かした調理法

 再生栽培の野菜を生かした調理法を再び大橋さんに、教えてもらいます。

 まずはニンジンの葉をあしらったラペを作ります。
 まずは、調味料を合わせドレッシング作り。次に塩を振って水気をだした、千切りのニンジンをしぼります。ニンジン葉は細かく刻んで混ぜてもOK。ドレッシングと和え冷やしたニンジンの上に大きめのニンジン葉を乗せればニンジンのラペの完成!

 次は、コマツナの味噌汁。かろうじて1本とれた少量のコマツナは、油揚げと一緒にお味噌汁の具に加えます。

 つづいては、ムカゴごはん。お米、水を入れた釜に塩小さじ1杯加え混ぜます。今回は色づけのために赤米も加えます。米2合に対し、ムカゴを120gほど加えて炊いたら完成です。