第1598回 2021.10.31 |
かがくの里 の科学 | 場所・建物 地上の動物 水中の動物 |
人と自然が豊かに共存する里山づくりを目指し続ける長期実験企画、かがくの里!
今年初め新たに始動した、里にいる生き物たちを撮影し、命の繋がりを一冊にまとめる図鑑プロジェクトにビッグニュースが!なんと里の生き物図鑑の出版元として、図鑑を作り続けて半世紀の学研が名乗りを上げ、来春の発売に向け担当編集者が里を訪れました!
これまでトーキョーバグボーイズの2人が主に昆虫の写真や動画を、野鳥写真家の小曽納さんと宮本さんが主に鳥の撮影を進めていました!そこで今回は、これまで撮影してきた貴重な生き物満載の写真や動画を一挙まとめて公開!!図鑑プロジェクト!祝!出版社決定スペシャルでーす!
出版社決定&来春発売へ
今年10月、かがくの里に来たのは、里の生き物図鑑を担当してくれる学研・図鑑編集部の石塚麻衣さん。環境教育にも役立つ図鑑にしたいという番組の要望を受け、着々と内容が決まってきています。田んぼや池、裏山など、エリアごとに生き物をまとめた図鑑にしていくそうですが、図鑑にのせる生き物はどのくらい撮れているんでしょうか?
図鑑プロジェクトの撮影が本格的にスタートした4月!里の水辺を下見がてら探すと、環境の変化などが原因で減りつつある準絶滅危惧種、ゲンゴロウの一種、シマゲンゴロウをパシャリ!池では、さらに減少が進む絶滅危惧Ⅱ類に分類される、ミズスマシ!そんな水の上をスイスイ泳ぐミズスマシを平井さんがスローで撮影!実はかがくの里の図鑑、動画も図鑑のQRコードで読み込んで見ることができるんです。
さらに、準絶滅危惧種のカブトムシ亜目ガムシ。ガムシは、泳ぎは得意じゃありません。それは、ゲンゴロウやミズスマシと違い、脚を交互に動かしているのと、遊泳毛と言われる水を捉える毛もゲンゴロウほど発達していないから。ゲンゴロウやミズスマシは肉食で、エサを狩るのにスピードが必要!でもガムシの成虫は、主に水草を食べるためそこまでスピードが必要ないんです。その後も、ヒメイトアメンボやタイコウチ、ミズカマキリなど今や希少になってしまった水生昆虫が続々と里で見つかり、撮影できました!
実は、里の水辺に希少な生き物が多い理由のひとつが、ザリガニがいないこと。外来のザリガニが増えてしまうと生態系を破壊してしまうんです。ハサミで水草を全部切ってしまい、小さな生き物が隠れる場所、産卵場所もなくなってしまい、死の池になってしまうんです。
外来ザリガニがいない場所は、水草が生え色んな生き物がいる。そんな水生昆虫にとって、理想的な環境と言える里の水辺。7月には超大物が!田んぼの王者とも言われ、水生昆虫最強の肉食タガメ。東京や神奈川では絶滅したとされる絶滅危惧Ⅱ類です。タガメは環境変化に敏感で、エサが減ったり、水が汚れたりするとより良い場所を求め、内側にしまった翅を広げ飛び去ってしまいます。
学研の石塚さんが来た10月。法師人さん、今もタガメが里にいる証拠である痕跡、フィールドサインを見つけたようです。それは、ふにゃふにゃになったドジョウ。タガメというのは口から消化液を獲物の体内に注入してその筋肉をドロドロに溶かして吸います。タイコウチやミズカマキリも同じようなエサの取り方、狩りをしますが、ドジョウは小さいサイズでもかなり大暴れするので、タイコウチとかミズカマキリではドジョウの力に勝てないんです。動物学者のシーボルトは、『フィールドサインを丁寧に辿れば見つからない生物はいない』と断言しています。
後日、バグボーイズの2人は、タガメがドジョウを捕食したシーンの撮影に成功!すでに、ドジョウを捕獲済みのタガメ。前足の爪でガッツリと獲物を捕らえ、ドジョウの体液を吸っているようです。レアな生き物たちのレアな瞬間、図鑑にたくさん載りそうです!
里の美しい生き物と人気の生き物たち
学研の石塚さん、色がキレイな生き物などを図鑑に載せたいとのこと。色がキレイな生き物と言えば、野鳥写真家、小曽納さんと宮本さんのカメラが捉えた、尾羽が非常に長く、目の周りのブルーが特徴の美しい野鳥サンコウチョウ。冬は熱帯地域の森に住み、夏の間繁殖のため日本にやってくる渡り鳥。
さらに同じ日、小曽納さんが撮影していたのは、オオムラサキ、日本の国蝶です!青紫色の美しい羽根を持つのがオス。メスは一回り大きく茶色い羽根を持っています。
7月、バグボーイズの2人も、ある美しい昆虫を狙っていました。それは、月の妖精といわれるオオミズアオ。その月の妖精が、夜9時ごろ、休憩スペースに仕掛けたライトトラップに現れました!美しい、透き通るような薄緑の蛾。オオミズアオは成虫になると口が退化し、何も食べられません。そのため、1~2週間、交尾のためだけに生きます。そんな命の瞬きを図鑑の一枚に!
学研の石塚さんからは、カブトムシやクワガタムシなど人気にある昆虫も載せたいと要望が。カブトムシは今年撮れませんでしたが、7月、裏山のライトトラップに現れたのは、深い山、ミヤマに生息するミヤマクワガタの撮影に成功。さらに、メスのミヤマクワガタも撮影。
実はその後、人気のミヤマクワガタと美しい国蝶オオムラサキが同時に現れるという奇跡的な1日があったんです!その日、里にいたのは阿部さんと、野鳥写真家のお2人。そして西野さんです。昼過ぎ、ふいにオオムラサキらしき蝶が現れました。そしてなんとその先に、交尾しようとしているミヤマクワガタが。ミヤマクワガタ、カップルの熱い瞬間をパシャリ!!
さらに、オオムラサキもオスメスでいます。すると、オスがなにか出しました!これ、オスの腹部の先にあるゲニタリアという生殖器を、メスに向かって突き出す、オスの求愛行動!
メスがOKなら、オスがメスの背後に回り込み交尾が始まるんですが、どうやら、このオスは拒絶されたようです。それでもオスは、何回も何回も諦めることなく、ずっとメスを追いかけ続けましたが、交尾の様子を見ることはできませんでした。 ミヤマクワガタとオオムラサキの共演。まさに自然豊かな里山ならではの一日となりました。
哺乳類&夜の生き物
里図鑑の懸念、それは哺乳類が少ないこと。以前、たまたまニホンノウサギの子供が畑に現れたものの、警戒心が強い哺乳類を見ることは、ほとんどありません。
しかも、野生の哺乳類の多くは夜行性。野鳥や昆虫のように、狙ってバッチリ写真を撮ることは難しい。
でも実は、春先から里の畑や裏山など、あちこちに、夜間でも撮れる定点カメラを設置し、夜中に行動する哺乳類の撮影にも挑戦していたんです。仕掛けたカメラ台数は、合計13台!果たしてなにが撮れたのか?
4月。畑に仕掛けた定点カメラに映った動物は、タヌキ!
里の畑に現れたのが、1頭なのか何頭もいるのか?そこははっきりしませんが何度も映り込んでいました。
雑食で農作物を食べることもありますが、里の畑が被害に遭っていないのは、エサとなるムシやカエルが豊富なためと考えられます。タヌキは夕方、裏山を歩く姿も!近くに巣がある可能性が高いんです。
6月。今年フクロウがツガイで入った巣箱にやってきた意外な生き物が。それは、ムササビ!
前足と後ろ足の間にある飛膜を広げることで、120m以上、滑空することができる動物。このムササビはその後、巣箱の中へ!一体どうしてムササビが巣箱を?里山生物の専門家、守山先生に見てもらうと、ムササビは基本的に樹洞、木のほらを使う生き物なのでフクロウの巣箱もよく使うといいます。里の山に樹洞の代わりになる巣箱ができたことで喜んでいる生き物が結構いるんだそう。
その他にも、木のほら穴“樹洞”を使う生き物として、イタチ科のテンやリスなどの小動物が巣箱近くで観察できました!
また、ムササビ、リス、フクロウなど樹洞を使う者同士のバッティングもあるといいます。そのため、バッティングしないようにフクロウ用とは別に、ムササビやリスなどが住む小さめの巣箱を付けて樹洞が足りない分を補うことは里全体として考えればプラスとのこと。
樹洞を住みかとする小動物が数多くいることがわかり今後、フクロウのものより小さな巣箱を樹洞の代わりに設置、小動物にも住みやすい場所にしていく予定です。