放送内容

第1599回
2021.11.07
ダンボール の科学 物・その他

 ネット通販の普及で、より身近になったダンボール。 リサイクル率およそ95%以上、これまで木やプラスチックだった梱包材もダンボールに代わることで環境保全になると注目されています。
 知らぬ間に進化を遂げるダンボール。超、強力なダンボールで300kgのピアノや40脚140kgの椅子が一気に運べる!?その秘密とは!?さらに、工作やアート作品など自宅でダンボールを使って自宅で楽しむ人が増えているんです!そこで、酒井さんもダンボール工作に挑戦!所さんのお役に立つこと間違いなしのダンボールグッズとは!?
 今回は、進化するダンボールを科学します!

なぜダンボールは丈夫なのか?

 ダンボールの特性について知るため訪れたのは埼玉県入間市。迎えてくれたのは、ダンボール資材の設計を担当する青木さん。こちらの会社では、ダンボールなどを使って、緩衝材や梱包材を作っています。
 ダンボールの強みは、強度と外部からの衝撃を和らげる緩衝性の高さ。ダンボールは2枚の紙の間に波型の中芯があります。中芯は3点で上と下の紙と接しており、連続した三角形で結合していることをトラス構造といい、このトラス構造がダンボールの強みを生んでいます。

 三角形の連続構造は本当に強いのか?パスタで2種類の橋を作り比較しました。一方は三角形の連続するトラス構造の橋、もう一方は四角形が連続する橋。重しを乗せてその強さを比較します。四角形が連続した橋は、合計150gで橋が歪み崩壊。一方のトラス構造の橋の記録は190g。パスタが折れてしまい終了となりました。

 四角形の場合では角の部分に力が加わると、水平方向に大きく形が崩れますが、三角形は頂点に力が加わっても左右に力が分散され、安定性を保つことがでるんです。そのため、東京タワーや鉄道の鉄橋、建て直された歌舞伎座の梁などに、このトラス構造が採用されているんです。
 このダンボールの強さと衝撃を受け止める力をアピールするため、実験用にこちらの会社で作ったのが、生卵をダンボールで守るプロテクター。ダンボールの特性と緻密な設計により、高さおよそ12mからダンボールを落としても、卵にヒビ1つ入っていませんでした!

 このダンボールの強さと、衝撃を受け止める力を生かして他の会社からは、ダンボール製、防災用帽子が。ダンボールの特性を生かすことで、ヘルメット並みの強度を持っています。折り紙の工学的な技術を応用して考案され、内部の6角形を並べたハニカム構造と表面の蛇腹カバーが上部からの衝撃を効率良く吸収するんです。折りたため、1個160g程度と軽量で、普段から持ち運びが可能。ヘルメットに変わるものとして、保育園や介護施設などで導入が進められています。
 このように、ダンボールは丈夫で軽いという利点から、梱包材はもちろん、被災地での簡易ベッドやパーティション、トイレなど、今ではさまざまなものに活用されています。

進化した強化ダンボール!

 進化したダンボールがあると聞き、向かったのは愛知県にあるダンボール製造工場。ダンボール販売歴37年の大山さんに話を聞きます。こちらでは普通のダンボールと3倍以上の強度がでるダンボールを開発したそう。

 一見、見た目に違いはありませんが、3kgの鉄球をダンボールに落としてみると、普通のダンボールは大きく凹んだのに対し、強化ダンボールはびくともしません。
 このようなダンボールを作ったのは、木材からリサイクル可能なダンボール包装への変化を目指しているからだといいます。ダンボールの主な原料は古紙。使われたダンボールはリサイクルされ、新たなダンボールに生まれ変わります。リサイクルシステムが確立されており、およそ95%以上と高いリサイクル率を誇っているんです。
 かつての木箱包装から、現在は強化ダンボールに変わっているものがあると言います。それは、300kgのピアノを運べるようになったダンボール箱。

 ピアノはこれまで木箱で運んでいました。ピアノメーカーのYMAMAHAによると、木箱からダンボールにすることで、輸出時の燻蒸処理が不要になり、梱包後の重さの軽量化、梱包時の作業効率のアップなど、たくさんの利点があるそうなんです。さらに、荷物を入れコンテナに積まれるパレットボックス。釘も使わず組み立てられ、空になったボックスだけを運ぶ時には折りたたむことができ、スペースが5分の1に!また、軽いので燃料費が抑えられるという木箱にはないダンボールならではの利点が!飛行機用の椅子など、複雑な形のものを運ぶ際には、ものの形に合わせて箱を設計。一部を固定するだけで、輸送時には動かないような設計になっているんです。
 製造工程を見せてもらいました。70℃の温度をかけて、中芯を波型に変形させ、裏紙と貼り合わせます。この中芯、通常のものと比べてみると、強化ダンボールの中芯は、繊維が高密度で分厚く頑丈な紙でてきているんです。そして、全ての紙をはり合わせる工程。材料の紙には180℃の熱で硬くなる熱変性樹脂(リサイクル可能で環境に配慮した材料)が含まれているので、加熱することでより強度を出すことができるんです。
 強化ダンボールは、高密度で分厚い紙を使った中芯と、180℃の熱で硬くなる熱変性樹脂を使うことで、これまでにない強度をもつダンボールになっていたんです。

 この強化ダンボールの強さを伝えたいと立ち上がったのは設計部の福岡さん。福岡さんが今回挑戦するのは、ダンボールだけで出来た橋。設計から完成まで2週間。出来上がったのは、全長5mのダンボール橋!支柱無しの5mの橋、果たして渡ることはできるのか?1人、2人と乗っていき、なんと6人目。体重の合計およそ400kgに。6人乗っても壊れませんでした。ダンボールで作った橋実験大成功でした!

今熱い!ダンボール工作・アート

 今、家にたまるダンボールを工作やアートに使う人が増えているんです。番組で取材させていただいた姉妹が作ったのは、ダンボールドラム!

 太鼓やシンバルはダンボールで、スティックはチラシを丸めて作っています。フットペダルやシンバルを動かすにはゴムを使い、細かいところまで再現。他にもダンボールで、回る中華テーブルで外食気分を味わったり、マイクとヘッドフォンを作ってスタジオで収録する気分を味わったりとダンボールを駆使してお家時間を楽しんでいたんです。
 広島に住む会社員の島村祥太さんは、細部までこだわったリアルな昆虫や甲殻類を作っています。細部の動きまで本物をよく観察し、そっくり仕上げている島村祥太さん。羽を広げると今にも飛び立ちそうなカブトムシ。薄い羽の部分は、ダンボールの表面を剥がして使い、薄い羽の繊細な模様も色の違うダンボールで再現しています。他にも、これまた見た目も動きも忠実に再現された伊勢海老。頭と胴体を分解できるという仕掛けがあるんです!

 いま熱い、ダンボール工作。そこで、酒井さんも、ダンボール工作に挑戦!酒井さん、ダンボールの波型がギヤの歯の部分に見えると言い、ダンボールのギヤで動く仕掛けを作るとのこと。先ずはギヤのベースを作り、そこに、波形が出ている片面ダンボール貼り付けていきます。ギヤを2つ作り噛み合わせてみると、なかなかいい出来。そこで、このダンボールギヤを使い、もっと複雑な装置に挑戦します!作るのは、所さんに接触せずにものを届ける装置。
 スタジオには、酒井さんが1週間かけて作った渾身のダンボール装置が登場。最初に登場したのは所さんにおしぼりを渡すためのダンボール製マジックハンド。

 そして、お茶とお菓子を運ぶダンボール茶運び人形「メガダンちゃん」!

 見事大成功!とはなりませんでしたが、その出来栄えに、所さんも大満足でした!