第1600回 2021.11.14 |
かがくの里 の科学[収穫祭1] | 場所・建物 地上の動物 食べ物 |
かつて日本人が、自然から恵みを貰いながら整備を行い、暮らしてきた里山。2014年11月、初めて訪れたこの土地は、水はけが悪く、農地に向かない荒れ地でした。この荒れた土地を、科学者たちと地元の方たちが力を合わせ、土の改良など少しずつ手を加えて、まる7年!今や、田畑が豊かに実り様々な生き物たちが姿を見せる、緑豊かな場所へと生まれ変わったんです。そんな人と自然が、共生する里山づくりを目指す、長期実験企画、かがくの里に、今年も所さんがやってきて、7回目の収穫祭を開催!
今年も収穫祭は盛りだくさん!田んぼ、畑に今年の恵みがぞくぞく!収穫祭ならでは!採れたてのおいしいものも!かがくの里7回目の大収穫祭スペシャル!
フクロウが暮らす里の森を見学
まずは、今年大きな展開があったフクロウプロジェクト!フクロウ研究のスペシャリスト守山先生と訪れたのは、里から100mほど離れた、フクロウがよく来る巣箱がある森の中。
この巣箱で、フクロウの姿を始めてとらえたのは、今年3月末のこと。その後、フクロウのつがいが毎月のように姿を表し、5月末には早朝にハンティングを終えて、巣の様子を見に来たつがいの姿を捉えることに成功。カメラに姿が映るたび、期待が高まりましたが、今年は残念ながら卵を産みませんでした。
しかし、子育ての時期が終わっても、つがいは里にたびたび現れていることから、この辺りを縄張りにしているそう。先生によると、来年には卵を産む可能性が高いといいます。そこで、来年こそフクロウに卵を産んでほしい!と、いつもフクロウが訪れる巣箱から、およそ50m奥の人の気配が少ない場所に新しい巣箱を設置しました。これでフクロウが安心して子育てを行う確率もあがるはず!来年に期待です!
そしてこの森には、フクロウだけでなく、様々な動物たちも姿を現していました!4月に映っていたのは、タヌキ!これは近くに巣がある可能性が高いといいます。その他にも木の洞穴、樹洞を使う生き物のイタチ科のテンや、リスなどの小動物が巣箱近くで観察できました。
そして今回、裏山で見つけたのはニホンアナグマが掘ったと思われる穴!!
穴掘りが得意で、土の中のミミズや昆虫の幼虫などを食べるニホンアナグマは日本の在来種。クマではなくイタチの仲間です。普段は地中に深さ4m以上にもなる巣穴を掘って生活しています。今回見つけたアナグマの穴は巣に繋がっておらず、少し掘って放棄してしまった穴だったようです。
そしてフクロウのつがいが出入りする巣箱にこんな生き物が!それはムササビ!前足と後ろ足の間にある皮膜を広げることで120m以上滑空できる、空飛ぶ哺乳類!そんなムササビが里に残した痕跡を、今回発見しました!
杉の木をよーく見てみると、皮が剥がれています。
ムササビは、木の皮を剥いて、巣材に使ったりすることがあるそう。フクロウのつがいがたびたび訪れる巣箱に姿を現したムササビ。ムササビは樹洞と呼ばれる木の穴に巣材を持ち込み巣にするのですが、残念ながらこの巣箱にはすみつかず、ほかの場所に巣を作って、里の杉の木の皮を巣材として使っているようです。そこで!里には樹洞がある木が少ないことから、西野さんが新たにムササビが入れる巣箱を作ってくれました!
来年、裏山の動物たちの、どんな姿が撮影できるのでしょうか?
今年の田畑は風情あふれる姿に
いよいよ、豊かに実った里の畑へ。今年、夏から様々な作物が収穫できた畑。その秘密が、長年苦しめられた水はけの悪さを改善するために行った竹を使う暗渠排水工事。
暗渠排水とは水はけが悪い原因となっている固い層の上に、管を埋めて横から排水するというもの。里ではパイプの代わりに竹を使いました。この工事のおかげで前日に雨が降っても見事に水が消えています。そこで!トウガラシ、オクラ、シシトウ、ワタ、落花生、自然薯や夏には金のたまごと呼ばれる品種の黄色いスイカなど少量他品目生産。水はけがよくなったおかげで、様々な作物がたくさん実ってくれたんです。
今年、初挑戦した自然薯はどうでしょうか?自然薯はヤマノイモ科ヤマノイモ属に分類される日本の在来種。本来は山の中で自生していて、イモは下に伸びるため、掘るのが大変。そこで、自然薯を畑で育てる上でカギとなるのが筒状のシート!自然では真下に伸びる自然薯が、この筒のおかげで横へ伸びるため、楽に収穫することができます。続いて大事なのが山砂。栄養が少ない場所で育つ自然薯は、山砂で囲い、肥料が直接当たらないようにします。自然薯の種芋をパイプに植えて、つるを巻き付け、山砂とワラをかぶせれば後は収穫までほったらかし!夏、葉っぱが青々生い茂り成長は順調そうでしたが、今年初挑戦の自然薯!その出来は…プロも認める大成功!
さらに今年は、所さんにとろろそばを食べてもらいたいと、西野さんが地元の名産、常陸秋そばを畑にまいて、10月末そばを収穫。収穫したそばは、天日で一週間乾燥。乾燥したそばの実を取り出して、機械にかけて皮を剥き、石臼で砕き、そば粉に!常陸秋そばはとても香りに優れており、食べると甘みを感じる「玄そばの最高峰」!その粉で、地元のそば打ち名人須賀川昭二さんが十割そばを打ってくれました!
取れたての自然薯をすってとろろにすれば、里の恵みが詰まったとろろそばの出来上がり!
自然薯のそばには、「うまい!」と大満足の所さんでした!