第1602回 2021.11.28 |
かがくの里 の科学[収穫祭3] | 場所・建物 地上の動物 食べ物 |
2週にわたってお送りしてきた秋の大収穫祭!前回は、里で撮影した昆虫の写真や標本、さらに生きた実物で、かがくの里昆虫博を開催!そして今回はクライマックス 。里の恵みがギュッと詰まったニホンミツバチのハチミツ!さらに、里の稲を所さんが脱穀!すぐに精米して炊きたてをいただいちゃいます!
かがくの里7回目の大収穫祭スペシャル!
ニホンミツバチ養蜂プロジェクト
今年4月。唯一、里で冬を越した巣箱で分蜂が。分蜂とはハチの数が増えて、巣がいっぱいになると起きる現象。女王蜂が新たに生んだ女王蜂に、巣と半分の働き蜂を譲って、残りの働き蜂とともに新たな巣をつくるため出て行き、群れが分かれること。巣から出た蜂の群れは近くでひとかたまりになり、その間に先遣隊が新しい巣の場所を探すのですが、今年は、予想外の展開に!
なんと同じ巣で、2度、分蜂がおこったんです!群れが大きい場合などは、2回分蜂が起こることがあるそう。1回目の分蜂は母親の女王蜂。そして2回目の分蜂は長女の新女王。二女が元の巣の後継者になるそうです。
分蜂した二つの群れは、里の達人西野さんの力も借り、新しい巣箱へ移すと見事に定着し、せっせと蜜を集めるようになりました。つまり、里の巣箱は、お母さん女王の巣箱、長女女王の巣箱、二女女王の巣箱と、全部で3群に!
そして1ヶ月後。小屋の近くにある長女の巣が大変なことに!巣の中を覗くと、巣箱のなかいっぱいに巣が巨大化!これは、長女の女王が最も産卵能力が高く、たくさんの働きバチを産んだから。
働きバチはまず、花粉や花の蜜を持ち帰り、ハチミツにして蓄えます。ミツバチは貯蔵したハチミツを食べ、お腹の蝋腺からロウを出しそのロウを材料に巣を大きくするのですが、10gほどの花の蜜から作り出せるロウはわずか1g程。巣の巨大化は、里で常に花が咲き、たくさん花の蜜を集めることができた証。ですが、このままだと、巣箱が手狭になり、引っ越しをしてしまう可能性があるため西野さんと巣箱を増築!
さらにその1ヶ月後。またまた巣箱がいっぱいに!というわけで2度目の増築。さらに1ヶ月後。蜂の数はとんでもないことに。そこで3度目の増築。最終的に巣板は、85cmにもなりました!
そしてハチたちがかがくの里で活発に活動することで、こんな恩恵もあったんです。
今年、里ではスモモが豊作!
スモモは昆虫が受粉する虫媒花。ミツバチが近くにいるからたくさん実をつけたと考えられるんです!これはかがくの里でいい自然循環が生まれている証拠。そんな超優秀な里のミツバチ!中でもたっぷり蜜を貯めている高層巣箱から、すこーしだけハチミツ、頂きます!
巣板は巣箱の天板にくっついているため、まずはそこを切り離します!巣箱には1段ごとに落下防止の棒が入っているため落ちません。落下防止棒の上をワイヤーで切って1段目のハチミツを頂くのですが、去年の収穫祭では、落下防止棒の近くを切りすぎ、巣板が全て下に落ちてしまいました。しかし、今年は切り離し大成功!
85cmの巣板の上から20cmだけ、ありがたく頂きます!
巣穴にギッシリつまったハチミツを取り出し、巣板ごとサラシでくるみ、西野さん自作の絞り機でプレス!!色々な花から蜜を集めたニホンミツバチのハチミツは、「百花蜜」と呼ばれます。
後日、小野先生の研究室で香り成分を分析してもらうと、去年より香り成分の量が多いことが判明。今年は四季折々の多くの花が咲き、日々消費する蜜を大きく上回る量を集め、たくさん貯蔵に回せたよう。去年より熟成の進んだ蜜に仕上がり、香りも豊かになったと考えられるそうです。まさに、里の周りにたくさん咲いた花々にミツバチが受粉した証拠。
ハチの恵みで豊作だったスモモが絶品のジャムに
天気に恵まれた収穫祭。所さんは、「小屋の中の小屋」で一休み。今年も西野さんの友人、中野さんが里の周りの植物で飾り付けしてくれました。
休憩のお供は、露久保先生が持ってきたスモモジャムとパン。
今年7月。ニホンミツバチのおかげで受粉が進み、豊作だった里のスモモ。熟した頃合いに収穫し、その数400個以上!
種をとったスモモを鍋にいれ、そこにスモモと同量の砂糖。そして、ジャムにするのに大事なのがレモン汁。露久保先生によると、酸と糖とスモモに入っている成分でとろみが出るのだそう。それを15分ほど弱火で煮込めば、かがくの里スモモジャムの完成。
そしてそのジャムに合わせるパンは、今年、里で育てたもち麦と小麦、里米で作ります。お米を使うことでモチモチ食感に!できた生地を焼き上げれば、かがくの里の材料だけでパンが完成!
さあ、スモモジャムとの相性は?所さんも「すごいうまい」と大絶賛。
リフレッシュした後は、畑で一仕事!豊作だった落花生や、ししとうなどを収穫したら、いよいよ今年のメインイベント!はざかけした里米を精米します!
里米を所さんが脱穀&精米
今年5月。西野さんに教えてもらいながら、苗を田んぼで育てる伝統的な“苗代”に初挑戦し、お米を作るうえで最も重要な苗づくりは大成功。6月、田植えを行い、西野さんたちが手塩にかけて、育ててくれました。
10月。籾が入り頭を垂れた稲穂。収穫の合図です。みんなで、手で刈り取りはざかけに。2週間、天日と風によって乾燥した稲は黄金色に。
現在は、機械で乾燥させるのがほとんどですが、ゆっくり天日干しすると、米の主成分のデンプンの損傷が少なくなり、おいしくなるという報告もあります。
この稲から、食べられるお米にするには、3つのステップがあります。
まずは稲から籾を外す脱穀。今回は、昔ながらの足踏み式の脱穀機を使います。ツメの部分を足で踏んで回転させ、稲から籾を取り外す仕掛け。現在は機械で行うのが主流です。
稲から籾を取り外せたら、続いての工程は「もみすり」。“もみすり”とは籾から皮をはぎ、玄米にする工程。籾摺り機の中に回転のスピードが違う二つのローラーがあり、籾がローラーの間を通るとき、殼が取り外されるしくみ。
そしていよいよ精米。玄米を精米機に入れていきます。精米機の中で、玄米はロールに沿って回転し玄米同士がこすれます。すると、ぬかが取れ白米に!
所さん自ら脱穀、精米した里米を調理科学の専門家、露久保先生が心を込めて炊き上げました!
その前に、所さんがつまんだ味噌!実はこの味噌、3年半前に大豆から育て、それを発酵させて作ったものなのですが、今回の収穫祭の前にみてみると容器の中にカビが!
しかし肝心な味噌の部分をみてみると、問題なさそう。
かがくの里で長期間保存していたら、空気に触れた部分がかびてしまったんです。しかし、この味噌には適度な塩が入っていて、菌が繁殖しにくい状態になってます。風味を損なうカビを取り除き、保管に気を付ければ長期保存できます。里の味噌は1年目と比べると、熟成が進み、色濃くなりました。
里米のお味に、所さんも「うまい」と絶賛!そして里の味噌で作った里芋とカボチャのお味噌汁にも大満足!