放送内容

第1609回
2022.01.23
人類はこう作った!古代パン の科学[前編] 食べ物 物・その他

 ふんわり、しっとりした食感が大人気のパンですが、人類はもともとどんなパンを食べていたのか?
 目がテン!が発明の原点に立ち返る、人類はこう作った!
 パンの謎に迫るのは、数々の技術を振り返ってきた石田剛太さん。パン作りの道のりは、小麦粉づくりはもちろん、かまどに使うレンガ造りからのスタート。果たしてパンにありつくことができるのでしょうか!?
 というわけで今回の目がテンは、人類はこう作った!「古代パンの科学」です!

かまどを作るための日干しレンガ作りに挑戦

 人類が小麦を栽培し始めたのは、今からおよそ1万年前の西アジアでした。しかし、考古学者の馬場先生によると、そのころのパンは、おそらく発酵していないパン。当時のパンは厚くするとカチコチで食べられないので、薄く伸ばしたパリパリのパン。その後、パンは進化を遂げて、古代エジプトまで到達。古代エジプトの遺跡からパンがいくつもみつかっており、恐らく現代と同じようなフワフワのパンを食べていたのではないかといいます。
 そこで、石田さんが古代エジプトのふわふわパンの再現を目指します!

 最初の指示は、「パンを焼くかまどを作る」。
 というわけで、まずは森の斜面で材料となる粘土を掘り出します。馬場先生によると、古代エジプトでパンを焼いていたかまどは、直径1m・高さ80cmくらいのサイズだったそう。これを、同じく古代エジプトで使われていた、日干しレンガを材料にして作ります。
 そもそも粘土とは何か?土の建築物の研究を行っている早稲田大学の山田准教授によると、有機物や色々なものが混ざったものを土と呼び、その中で粒子の細かい成分を粘土と呼ぶとのこと。砂は、水を含んでいると団子などを作ることができるが、乾燥するとボロボロになってしまう性質があります。それに対して粘土であれば、水で煉り合せて形を作ることができ、それが乾燥したときに粒子同士が凝集して固まるという性質があります。なので、日干しレンガには粘土が必要なんです。石田さん、掘り続けること2時間。かまどを作れるほどの粘土があつまりました。

 続いての指示は、「粘土に切りワラと砂と水を加え混ぜる」。
 まずは、ワラを長さ15cm程度に切っていきます。続いては粘土をほぐしながらワラと混ぜ込んでいきます。さらに水も足し、粘り気を出します。ワラをいれると、レンガが割れてバラバラになるのを防いでくれるのです。程よい粘り気になったところで、次は粘土を型枠に入れて成型。

 そこで、20cm×10cm×6cmの大きさのレンガが作れる枠を作成することに。

 木枠が出来たら、レンガを作る場所に砂を敷きます。砂を敷くことで、レンガが張り付かなくなります。そして、この木枠に勢いよく粘土を叩きつけ、枠の隅々にまで粘土がいきわたらせます。枠から粘土を抜き取ればレンガの整形が完了。これを繰り返すこと2時間。今回できたレンガは76個。成型できたレンガを、雨が当たらない場所で4週間乾燥させます。パンのかまどに使う日干しレンガはできるのでしょうか?

古代麦の実を砕いて小麦粉作り!

 続いての指示は、「小麦粉を作る」。
 まずは、小麦の殻を割り胚乳を取り出します。用意されていたのは臼と杵。

 遺跡から発掘された人形から、古代エジプトでも臼と杵を使って小麦をくだいていたことが分かります。そして、今回つかう小麦は、「古代ムギ」の仲間、スペルト小麦2kg。
 私たちが食べているのは、小麦の胚乳と呼ばれる部分。周囲を覆っているふすまとも呼ばれる表皮は、不味く硬いので取り除きます。
 それでは、胚乳と表皮を分けるため小麦の実を杵で叩いてみます。叩くごとに、実が砕けていくのが分かります。

 実はこれが、小麦を粒のまま食べない理由。小麦の断面は複雑な形をしており、表皮が胚乳に食い込んでいるため簡単に取り除く事ができません。さらに、小麦は表皮に比べて胚乳部分が柔らかいので、表皮を叩いてはがそうとすると胚乳が砕けてしまいます。そのため小麦はパンなどに加工されるのです。
 小麦を叩き始めて5分。砕けた小麦をふるいに入れます。古代エジプトでも植物製のふるいを使っていたと考えられます。石田さん、小麦粉を作ることができましたが、取り除いた小麦の表皮を見てみると、食べられる部分が残ってしまっています。

 そこで次の指示、サドルカーンで粉にする。サドルカーンとは大小の石でできているいわゆる石臼の原型。これを使えば、残ってしまっている胚乳を綺麗に取り出すことができるのです。
 考古学者の馬場先生によると、パンを作っている実際に出土した古代エジプトの壁画や模型で、サドルカーンを使って重労働の作業をしてるのは女性。パン作りはエジプトの家庭内で行われており、男性は外で仕事、女性は家庭の仕事をする。そういうすみわけが描かれているのだといいます。
 そこで、石田さんがレンガ作りをしている間、都丸紗也華さんにサドルカーンを担当してもらいます。

 先ほどの胚乳が残っている表皮をサドルカーンに乗せて、石どうしをこすり合せます。ふるいにかけると、大量の小麦の粉を取り出すことができました。黙々と作業に取り組み、サドルカーンを擦り続けて5時間!2kgの小麦の粒から、414gの小麦粉が取れました。

 一方、石田さんのレンガ作り。初日に1950gだったレンガが、次第に水分が蒸発し、4週間後には30%軽い1350gになりました。

 山田先生に見てもらうと、かまど等での使用だったら十分だということです!