放送内容

第1608回
2022.01.16
かがくの里 の科学 場所・建物 地上の動物 水中の動物 植物

 はじまりは今から8年前。放置され、人の手が入らず荒れ果てた土地を、多くの科学者たちの知恵と地元の方の力で切り開き、今や田畑は豊かに実り、様々な生き物たちが姿を現す、緑豊かな場所へとなったかがくの里!
 7回目を迎えた去年の収穫祭では、里の恵みを食べ尽くし、所さんも大喜び!でも、実はまだまだ色んな企画やっていたんです!
 今回は、盛り上がり過ぎて放送では入りきらなかった収穫祭の未公開映像とその後の最新映像。さらに、実は去年から再始動していた目玉プロジェクト!ウナギ養殖がどうなっているのか?全てお見せします!
 「かがくの里2022」未公開映像&最新映像大公開スペシャル!

裏山に空飛ぶ生き物&森の恵みのモーニング

 去年11月に開催された秋の大収穫祭!朝早くから 裏山でおこなったのは、生き物たちの痕跡“フィールドサイン”のチェック。まず、見つけたのはアナグマの穴。さらに、ムササビのフィールドサイン。

 里のカメラには、フクロウのつがいが頻繁に訪れる巣箱にムササビの姿が映っていました。そこで、ムササビが好む樹洞に似せて、穴が小さくて深い巣箱を手作りして、新たに設置。
 収穫祭の放送はここまででしたが、その後の12月上旬、貴重な映像が撮れていました!またしてもフクロウの巣箱に、ムササビが。しかも今度は、なんと2匹!オスとメスのよう。ムササビは冬が繁殖期。まさに今が交尾の時期!まだムササビ用の巣箱には入ってくれていませんが、今年こそはフクロウの子育てと、ムササビの子育ても期待できそうです!

 そしてここからが収穫祭の未公開シーン!所さんを待っていたのは、木材利用の専門家村田先生。村田先生といえば、里のシラカシやコナラのどんぐりでコーヒーを作るなど、樹木から得られる森の恵みの活用法を考え、さまざまな挑戦をしてきました!しかし前回の収穫祭で出したどんぐりコーヒーは、大不評!!しかし諦めない村田先生と阿部さん。今回挑戦したのが、まだ青い松ぼっくりから作るジャム!

 去年6月、阿部さんは、村田先生と樹木の専門家糟谷先生とともに、里の畑に生えているアカマツの木から松ぼっくりを収穫。作り方は簡単。松ぼっくりと同量の、水と砂糖を入れて煮詰めるだけ。何度も冷ましては煮詰めてを繰り返すこと1時間で出来上がり。
 松ぼっくりジャム、果たしてどんな味なんでしょうか?所さんに食べてもらいますが…渋い、エグイ!と反応はイマイチ。そして、どんぐりコーヒー2021バージョンも用意。2年前のリベンジをかけて、雑味の元タンニンを抜くため、ドングリを去年よりも長く木灰で煮詰め、流水につけました。果たして、その味は…なんと所さんから「悪くない」と高評価をいただくことができました!

かがくの里で南国フルーツを栽培!?

 去年の収穫祭で阿部さんがどうしてもお披露目したかった作物が、南国の果実、パイナップル!パイナップルは高温の環境を好み、その適温は24度~34度。ブラジルが原産で、暖かい気候の国で栽培されてきた果物。そのため国産のパイナップルはほとんどが沖縄産。しかし、家庭で栽培している人がいるそうで、冬の寒い時期でも温度を15℃前後にを保つなど気を付ければ、栽培はできるといいますそこで西野さんに協力してもらい、畑で育ててみることに。
 パイナップルは水に弱いため、竹暗渠を入れた真上、排水の良い場所を選び、肥料を撒いて苗を植えました。実は、パイナップルは、実を食べた後に残る頭の部分で再生栽培できます。

 普通は捨ててしまう頭の部分を水につけておけば、新たな根が出て苗になるんです。
 植えてから6ヶ月、どれくらい成長したのか?収穫祭で所さんにお披露目!植えた時と比べると、かなり大きくなったパイナップル。苗を植えた後、西野さんからアドバイスをもらい、雨よけと保温のためにビニールで覆いました。そして植えてから1か月後には、真ん中から新しい葉が!

 その後もパイナップルはすくすく葉を伸ばしていき、9月下旬、寒くなる前にハウスへ移動させるため、鉢に移し替えました。
 通常、沖縄では植えてから1年半後に花が咲き、2年で実がつきます。しかし、果樹栽培の専門家千葉大学の近藤教授によると、かがくの里のような寒い地域で育てる場合は、成長が少し遅くなるため、花が咲くのは植えてから2~3年後、さらにその後4~5か月で収穫となるそう。ということは、収穫は早くて来年の秋。そのためにも重要なのは寒さ対策。
 そこで収穫祭から1か月後。パイナップルは、10度以下になると成長が止まり、5度以下になると低温障害でダメになってしまいます。理想の温度はおよそ15度。そのため、かがくの里がある北関東で育てる場合、冬は温室でヒーターなどを使い温度管理することが一般的。しかし今回、西野さん指導のもと、昔ながらの方法で保温!冬越しに挑戦します!藁をすき間に敷き詰め、さらに農業用のビニールで四方隙間なく囲って二重にしてしっかり寒さ対策を行いました。温度を測ってみると、13度。果たして、冬を乗り越えられるのか。

ウナギプロジェクト最新情報

 2018年から行っている、かがくの里目玉プロジェクトのひとつ、ウナギの養殖。これまでも池や水路に水中カメラを入れ、ウナギがホンモロコを食べようと追いかける様子や、千葉先生が試しに入れたミミズを食べる様子など、貴重なウナギの姿をとらえることができました。
 そもそもこのプロジェクトによって、一般的な養殖場で育てると、ほとんどがオス化してしまうウナギが自然の環境に近い里のため池で育てると、自然の環境と同じく、ほぼ一対一の割合でメスになることが徐々に明らかになってきました。最終的な目標は河川への放流。放流したうなぎがマリアナ海嶺辺りで産卵、ウナギ資源の増殖に役立ってくれるはず!と、目標は大きいですが、確実に一対一の割合でメスになるのか?里ウナギが放流後、厳しい自然の環境で生きていけるのか?など調べる課題はたくさんあり、まだまだデータ不足。
 もっとたくさんのウナギを里で育て、調査を進めるため、去年、4回目となる放流をおこないました。今年も順調に大きく育ってくれますように!

 すると阿部さん、池でエビを見つけたよう。5年前にウナギと一緒に放流したスジエビが繁殖しているようです。

 スジエビは魚の死骸などを食べる池の掃除屋。なので死骸によって水質が悪化するのを防いでくれるんですが、増えすぎてしまうとスジエビの出すフンで植物プランクトンが大発生、池の酸素不足に繋がってしまうことも。しかし、池はスジエビは多いものの、酸素不足には陥っていないようです。その理由は、日本の在来種、環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類指定の貴重なマルタニシ。

 実はマルタニシ、コケや有機物を食べるため、植物プランクトンの大量発生を抑制します。そんなタニシを池に運んできたのは、ある意外な生き物。それは、時々水草を食べに池にやってくるカモ。タニシは水鳥の足にくっついて移動することがあり、それが里池に落ちて繁殖したと考えられるんです。
 8年前、何もなかったところに穴を掘り、裏山から湧き水を引き込んだため池は元々農業用に作ったもの。しかし田んぼと地下のパイプで繋がっていたことで、田んぼから池に栄養豊富な泥や水が流れ込み、光合成で植物プランクトンが増え、それを食べる動物プランクトンも増加。すると、養殖のため放流したモロコやドジョウ、ウナギは動物プランクトンを食べ、エサをやらなくても大きく育ちました。さらに、モロコやドジョウ、ウナギが死ぬとスジエビなどが死骸を食べて、スジエビのフンなどの有機物をバクテリアが分解すると、それをエサにした植物プランクトンが大量発生。今度はカモについてきたマルタニシが植物プランクトンの大量発生を抑える、という絶妙なバランスがとれているんです。始めは何もなかったこの池が、今やこんなに豊かな自然循環を生み出していました!