第1635回 2022.07.24 |
かがくの里 の科学 | 地上の動物 場所・建物 |
2014年11月。科学者達と共に、人の手が入らなくなった荒れ地を昔ながらの里山に再生させようと始まったかがくの里。地元の方の力も借りて、耕し整備をしていくと、今では、毎年ゆたかな実りに恵まれ、様々な生き物たちが暮らす、緑豊かな場所へ!
今回は、かがくの里で夏の昆虫調査!調べるのは、夏の昆虫の代名詞カブトムシとクワガタムシ。すると、次から次へと夢の昆虫が大量に!今回のかがくの里は、夏の昆虫調査スペシャルです!
昆虫調査のためにトラップ作り
6月下旬。集まってもらったのは斉藤先生とTokyo Bug Boysのお二人。すると斉藤先生がこんなことを。なんと、夏休みの昆虫採集の定番、カブトムシですが、実はオスは、6月下旬から7月中旬頃までがピークだそうで、8月に入ると、姿が見られなくなるといいます。同じくクワガタムシも、オスは6月下旬から7月いっぱいがピーク。これまで阿部さんがトライしていたのは8月。実は、採集のタイミングとしては遅かったんです!
カブトムシやクワガタムシは広葉樹のある森林に生息する生き物。海外では、人が住む地域から離れた、深い森の中にいることが多く、身近な虫ではありません。けれど、広葉樹が多く、薪として活用してきた日本の里山はカブトムシやクワガタムシにとってすみやすい環境で、数も多く、身近な昆虫になってるんです。昆虫採集の2大巨頭、カブトムシとクワガタムシを里で採集できるのか?
カブトムシなどを見つけるには、まず樹液が出ている木を探します。樹液を好む虫なので、そこにいる可能性が高いそうです。というわけで、里の裏山で樹液が出ている木を捜索!
奥の方へと進むと、樹液がでているコナラの木を発見!樹液は、昆虫がかじるなどして樹皮が傷ついた時、それを治そうと分泌されるもの。カブトムシやクワガタムシは、コナラやクヌギといった、里山に多い広葉樹の樹液が大好物なんです。
その時、樹液のそばで法師人さんが何かを発見。カブトムシと一緒に樹液を吸っていることが多いヨツボシケシキスイ。これはいい兆候!しかし、見て回った結果、かがくの里には、樹液がでている広葉樹はそれほどありませんでした。そこで!トラップを使うことに。カブトムシとクワガタムシが集まるトラップとは?!
※私有地に専門家監修のもと設置しております!
ライトトラップ等が禁止されている場所もあります。
用意したのは、バナナとイースト菌、ペットボトルとそれを吊るすためのヒモ。バナナだけだとただの果実なので、イースト菌で発酵させて、エサとして再現します。まずはペットボトルの上3分の1を切り、フタの部分も丸くカット。下のパーツに穴を開け、紐を通して上のパーツを被せます。次に、バナナをチャック付きの袋にいれ、発酵のため、イースト菌を少しふりかけ、バナナをつぶして混ぜていきます。それを常温で3時間、発酵させます。発酵させると香りに変化が。それをペットボトルの器にうつし、特製バナナトラップのできあがり。メンバー5人がそれぞれ作りました。
さらに、カブトムシやクワガタムシは紫外線に集まる習性があり、紫外線が出るブラックライトを使った「ライトトラップ」も同時に作ることに。光に集まってきた昆虫はクリアファイルの衝突板に当たって下に落ちます。材料はブラックライトやハンガーなどを使用します。まずはA3のクリアファイル1枚を開いて切り離し、片側の両端を折って止め、竹串を通します。これが、虫がぶつかる衝突板。もう1枚のファイルは角を丸く切り落とし丸く円形に切ってすり鉢状にして、底にコップをセット。それを竹串で、衝突板と合体。ライトを袋に入れハンガーにかけ、クリップで止めれば完成!
完成したトラップをそれぞれ、虫が来ると思う場所に仕掛けることに。平井さんが選んだのは、虫が飛んできやすいという小屋の近くの木。五島さんも近くのカエデの木に仕掛けました。残りの3人は間伐作業が進む裏山へ。阿部さんは裏山に入ってすぐの木。斉藤先生は中腹のあたり。法師人さんは、山の奥深くにしかけました。
トラップを仕掛け終わって、樹液がでていた木の近くを通ると、樹液を吸いに来た小型のコクワガタが!1匹目のクワガタムシをゲット!やはり樹液にも集まるようです。5人が思い思いの場所にしかけたトラップ。果たしてカブトムシとクワガタムシは入るのでしょうか?
調査用大型ライトトラップ
バナナとブラックライトのトラップの他に、より本格的な調査をするために仕掛けたのが、採集用の大型電球を使ったライトトラップ!ブラックライトのトラップよりも強い光で、より遠くの昆虫もおびき寄せることができるんです。以前から昆虫調査で何度か仕掛けているのですが、6月に仕掛けるのは初めて!
午後8時。トラップを確認してみると、集まってきた大量の昆虫の中にノコギリクワガタのオスとミヤマクワガタのメスが!さらに、超巨大ミヤマクワガタも!計測の結果、ミヤマクワガタでは最大クラスの68mmでした!
さらにこんな興味深い虫も!本州最大の蛾、シンジュサン!このシンジュサンには驚きの特徴が。なんと、シンジュサンの羽の先に、よく見るとカワイイヘビの顔が!ヘビに擬態して、外敵から身を守っているんです。かがくの里にはクワガタムシをはじめ、様々な昆虫がいることがわかりました。
仕掛けたトラップの結果は?
トラップをしかけて3時間後。まずは五島さんのものからチェック。五島さんのライトトラップに入っていたのは、ミヤマクワガタのオス!さらに、平井さんのライトトラップにもミヤマクワガタのオスが2匹!さらに!コカブトが!コカブトはその名からわかる通り、カブトムシの1種。日本、朝鮮半島、中国などに生息し、オスでもツノが短く体も小さいんです。
続いて裏山のトラップを確認。阿部さんのバナナトラップはゼロ。斉藤先生のライトトラップには、コクワガタが1匹。そして一番奥にしかけた法師人さんのライトトラップにはなんと、ミヤマクワガタのメスが2匹、オスが3匹も!わずか3時間でかなりの数のクワガタを採集できました!
さらに翌日!朝7時ごろにもう一度確認してみるとまたもや平井さんのライトトラップにミヤマクワガタが!平井さんがトラップをしかけた場所は見晴らしがよく遠くからでも光が見えやすかったこと、さらに近くにクワガタムシが好むカエデの木があったことで、たくさんかかったと考えられるそうです。
そして、絶対忘れてはならないのが、仕掛けたトラップの回収です。このまま放置するとどんどん虫が入ってきて、出られないので、悲惨な状況になるといいいます。
そして裏山にしかけたトラップにも、大小様々なクワガタムシが入っていました。
今回の昆虫調査では、20匹以上のクワガタムシを発見しました。一方、狙っていたカブトムシはコカブトのオスが1匹だけ。もちろん、採った昆虫は調査に必要な数以外、ほとんどをリリース。里に戻しました。
バグボーイズも驚くほどの数のクワガタムシ、それはかがくの里が昆虫にとっても住みやすい証拠。次こそは、カブトムシにたくさん会えるよう、調査を続けていきます。