放送内容

第1656回
2022.12.25
科学ニュース2022 物・その他 地上の動物 水中の動物 人間科学

 日々大量に発表される、科学にまつわる新たなニュース。優れた研究は数あれど、実は私たちの耳にまで届くことは意外と少ないんです。
 そこで!科学番組として、放送34年目に突入した目がテン!が、2022年の偉大な科学ニュースをお伝えします!
 今回の目がテン!は、毎年恒例スペシャル企画!「もっと知って欲しい!科学ニュース2022」です!

サメは魚たちの「便利な道具」だった!?

 哺乳類の多くは、よく毛づくろいをしますが、その理由の一つは、体についた寄生虫を取り除くため。寄生虫は、命を脅かす危険な存在でもあるため、入念に取り除きます。しかし、マグロのような遠洋にいる魚たちは、手足もなく、体を擦り付ける砂地や岩場もありません。
 では、どうするかというと、泳いでいるサメに近づき、体を擦り付けて、寄生虫をとっているんです!サメの肌を拡大すると、皮膚が「皮歯」という小さな歯のようなウロコで覆われてヤスリ状になっています。これが寄生虫を取るのにちょうどよかったんです!
 このような魚たちの行動は、以前からよく観察されていましたが、それが寄生虫を取る行為だということは、あくまで推測でした。
 西オーストラリア大学マリン・フューチャーズ・ラボの研究―チームは、この謎多き「こすりつけ」を徹底観察。7年間、36か所で撮った数千時間にも及ぶ海中カメラの動画を分析しました。その中で、マグロがサメにこすりつけるのが、ほとんどの場合、目や鼻孔、エラなど、寄生虫が付きやすい部分だと判明。これにより、魚たちのこすりつけ行動が、寄生虫を除去するためだという推測が、確信に近づいたのです。
 ちなみに、みんなにブラシ扱いされているサメですが、自分の掃除はどうしているのか?実は、サメはサメ同士でこすりつけあっていたんです!

タコには利き腕がある!?

 アメリカ、ミネソタ大学の研究チームは、タコの「利き腕」について調査しました。タコの腕は8本。それぞれの役割を調べるため、研究では、タコの中心の2本腕から左右に1、2、3、4と番号を振り、狩りの様子を観察。
 すると、真ん中から2番目の腕を使っていたことを確認。また別の狩りでも、獲物のエビに伸ばしているのは2本目の腕だったんです。
 ちなみに、獲物を右目で見ていたら、2番目の右腕、左目でみていたら、2番目の左腕を使うとのこと。さらに、2番目の腕は、他の腕に比べて、ちょっと長いそう。研究者によると、それぞれの腕の役割を解明することで、次世代の高度操作型ソフトロボットを開発するために役立つということです。

赤ちゃんが、泣き止んで寝てくれる方法を解明!?

 理化学研究所 脳神経科学研究センターなどの国際研究グループは、科学的根拠に基づく赤ちゃんの泣き止みと寝かしつけのヒントを発見しました。
 赤ちゃんを抱っこして歩くと、ほとんどの場合泣き止みます。これは、哺乳類の赤ちゃんに備わる、「輸送反応」という本能。危険が迫ると、親は赤ちゃんを安全な場所に移動させますが、そのとき親の邪魔をしないよう、運ばれる赤ちゃんはおとなしくなるんです。
 しかし、これまでの検証では、親が歩くのをやめると、また泣き出してしまいました。そこで、方法と時間を増やして検証。その結果、泣きやんだ上にベッドに寝かせても起きにくい効果的な方法を発見したんです。
 それは、泣いている赤ちゃんを抱っこして5分間一定のペースで歩く。眠ったら、抱っこしたまま座って5〜8分待ってからベッドに寝かせる。これで赤ちゃんは起きず、より深く眠る可能性が高いという結果に。

 研究チームによると、赤ちゃんの頭や体がぐらつかないよしっかりと支え、一定のペースで、躓かないよう段差のない場所で歩くなど注意が必要とのことです。今後は、それぞれの赤ちゃんに合った寝かしつけのタイミングをお知らせするアプリの開発を目指しているそうです!

かがくの里3年連続受賞!

 目がテン「かがくの里」の取り組みが、環境省が主催する第10回「グッドライフアワード」実行委員会特別賞森里川海賞を3年連続受賞しました!
 かがくの里専任プレゼンターの阿部健一さんが授賞式へ。他の受賞者の方々とも交流し、今後の取り組のヒントになりました。

愛想笑いができるロボットが誕生!?

 開発をした京都大学を訪ねたのは石田剛太さん。お会いしたのは、開発チームの京都大学大学院情報学研究科助教、井上昂治さんと自律型アンドロイドERICAさん。ERICAさんは相手の笑い声に合わせて一緒に笑うことができるロボット。
 相手に会わせて笑うのは、「同調笑い」といい、相手が大笑いしたら自分も大笑いする、軽く笑ったら、自分も軽く笑う、というように、相手の調子に合わせた笑いのこと。
 これをロボットで実現するため初対面の人による会話データを収集しその中から同調笑いを抽出。それがどんな種類の笑いか、声の周波数で判別するシステムを作り、ERICAに統合しました。
 その結果、ERICAは、相手の音声の特徴から、大笑いで返せばいいか?社交的に笑えばいいか?もしくは、相手が失敗談など自虐的に笑った場合は笑わない、というような判断ができるようになったんです。
 これまでのAIは、相手の言葉を聞いて適切な言葉を返すものでしたが、相手の調子に合わせて「笑う」のは、世界初なんです。
 あくまでも、相手の笑いに合わせたということで、内容を理解して笑っているわけではありません。将来的には、福祉の現場で人との温かい交流を目指しているそうです。

小学生が歴史的偉業!トゲナナフシに関する発見!

 愛知県田原市の小学6年生・森下泰成くんを訪ねたのは、澁谷アナウンサーと昆虫撮影のエキスパート、トーキョーバグボーイズの法師人響さん。
 トゲナナフシとは、世界に数千種いるナナフシの仲間の1種。木の枝の節のような姿で、擬態することから名前がつきました。トゲナナフシは、体にたくさんのトゲが生えているのが特徴。
 5年以上飼育し、トゲナナフシが大好きだという泰成くんですが、実は法師人さんも、自宅で飼っているほどのナナフシファン!年間通して数種類のナナフシを飼育中なんです!
 もともと昆虫が大好きな泰成くん。小学1年生のときに、昆虫採集のキャンプで、一匹のトゲナナフシをもらったのが始まり。家に持ち帰り、飼ったところ、そのトゲナナフシが卵を産んだのです。泰成くんは、卵をちゃんと孵化させ、その子孫を5年間、一度も途切れさせることなくずっと飼育しているんです。今ではその数100匹くらい!

 ところで、最初は1匹だったトゲナナフシ。どうやって繁殖したのか?実は、トゲナナフシは、1匹だけで自分と全く同じ遺伝子を持ったクローンを生む「単為生殖」をするため、基本的にはメスしかいません。
 しかし、2022年6月。1匹のトゲナナフシが泰成くんの目に止まりました。おシリや体の形が、明らかに違っていたのです。直感した泰成くんは、専門家に相談。すると、その形から、これまでに国内で数例しか報告されていない「オス」だと判明。専門家も驚く大発見となったのです。

 泰成くんが相談したのは、岐阜市の名和昆虫博物館。発見したオスは、こちらに寄贈したということでしたが、、、残念ながら、もう寿命を迎えていました。
 さらに、泰成くんとお母さんが観察していたところ、オスがメスの背中に乗って、おシリを近づけ交尾行動をしていたんです。実は、その交尾をしたオスとメスは、現在、標本作成中。ピンは刺さず、体に添わせるようにして形を保ち、1年かけて冷凍しながら乾燥させます。
 そして、メスが産んだ卵も生きた状態で保存。本来メスだけで繁殖できるトゲナナフシにとって交尾行動が意味のあるものだったのか、孵化する子どもを調べれば、わかるかもしれないんです。日々の熱心な観察がもたらした大発見でした。