放送内容

第1666回
2023.03.12
自然と近い暮らしSP 場所・建物 自然・電波・鉱物・エネルギー 食べ物

 脳科学者、養老孟司さんをスペシャルゲストに迎え、人と自然について考える目がテン、特別企画!
 まず、人と自然といえばかがくの里。寒さ厳しい冬に行われる昔ながらのスイーツづくりに挑戦。そして、アフリカタンザニアで自然と共に生きる、狩猟採集民族ハッザの暮らしを養老さんと見返します。
 今回は、「自然と近い暮らし」SPです!

かがくの里で厳冬のスイーツ作り

 去年12月。里山の達人、西野さんが自作したというストーブとセイロを使い、干し芋作りを始めていました。かがくの里がある茨城県は、日本一の干し芋の産地。国内で販売される干し芋の、およそ9割が茨城県産で大部分はかがくの里の近隣、ひたちなか市で作られています。ひたちなか市役所によると、干す作業が行われる冬場に晴れが多く、ミネラル豊富な潮風が吹き、おいしい干し芋が作れるんだそう。
 そんなひたちなか市の干し芋生産者で西野さんの友人、大内さんが、昔ながらの作り方を教えてくれるとのこと。使うのは、里で収穫したベニアズマ、べにはるかというサツマイモ。サツマイモは収穫した後、徐々にでんぷんが糖へと分解していきます。そのため、1~2か月貯蔵して甘さが増したこの時期が、干し芋づくりのベストタイミング。見た目の違いはほとんどなく、どちらも焼き芋にする“べにはるか”と“ベニアズマ”ですが。今回干し芋にするのは“べにはるか”だけ。

 2010年に品種登録された、比較的新しい品種“べにはるか”。最大の特徴は甘さ。加熱すると、酵素が働き、甘さが増しますが、加熱後の糖度がベニアズマよりも高く、強烈な甘みと、ねっとりした食感で大人気。

 これを干し芋にすると、まるでスイーツのようになるんだそうです!
 蒸すこと、1時間半!蒸し上がったべにはるかの皮をむきます。美しい黄金色!このままでもおいしそうです!

 続いて、大内さんが取り出したのは専用のスライサー!ぴんと張った何本ものピアノ線に通し、バラバラにして並べます。これを干し網いっぱいに並べて完成!甘い匂いに誘われた動物に食べられないようハウスに並べます。およそ1週間で太陽の光と冬の乾燥した空気で水分が飛び、甘さが凝縮するんです。
 調理科学の専門家、露久保先生にその出来を見て頂きます。露久保先生によると、干し芋は、ここで完成!という点があるわけではないといいます。甘みの元の糖が水をすごく引き付けておく力が強く、乾燥させるといってもカラカラにはならないんです。1週間程度干せば基本は完成。その後は、好みの歯ごたえまで乾燥させてもいいそうです。実は干し芋がこの世で一番好きだという露久保先生も高評価でした。

ハッザの人々と自然のかかわり

 広大なサバンナが広がる野生動物の楽園、アフリカ大陸、タンザニア!2019年、この地を訪れた、番組プレゼンターの金丸さんと都丸さん。ここに、古からの狩猟採集生活を、今も守り続けるハッザの人々が暮らしていたんです。
 挨拶をさせていただいたのは集落のリーダー、ハントラさん。よくみると男性ばかり。実は、伝統的にハッザは日中、男女別れて生活しているんです。女性たちは別の木陰にいました。ハッザは、男女10数人で集落をつくり動物を狩り、移動しながら暮らしているといいます。

 狩りに使う、弓矢。矢の先にはトウモロコシの芯。

 これは小鳥を貫通させずに捕らえる工夫。鉄の矢じりは、ヒヒやインパラなど中型動物を狙うときに使うんだそう。弓の弦はインパラの腱を乾燥させひも状にしたもの。
 そのとき小鳥を狙う少年が!なんと一発で命中。火を起こして食べます。摩擦で熱くなった木の粉を藁の中に入れます。火種に鳥を入れるといい匂いがしてきました。そして、小さな獲物でも分け合うのがハッザ流!

 集落には、乾燥した草で作った家が点在。家具などはなく、あるのは、狩りで使う弓矢くらい。ハッザは、獲物となる動物が近くにいなくなると集落の場所を変えるため、家は木と草で作る簡単なもので家財道具も少ないんです。
 日が暮れて、食事の時間。サバンナに住む、ウシ科の草食動物インパラの肉です。こうした大きな獲物が獲れると、干し肉にして保存。一週間ほど食べ続けるそうです。

 しかし、意外に食事の量は少なく、このとき一緒に食べていたのは、「ウガリ」というトウモロコシの粉をお湯で練ったもの。こちらが主食という感じ。そして、食事を終えると、夜は毎日焚き火をして集まります。文字や暦を持たないハッザ。こうして歌い語り合うことで、口伝えで歴史や文化を伝えてきたんです。
 翌朝。日が昇ると同時に狩りへ。狩猟犬も一緒に向かいます。鳥の鳴き声の方へ全力疾走!追いついた頃にはホロホロチョウというキジ科の鳥を捕まえていました。一方、食材集めはハッザの女性の日課。見つけたのは、自生しているイモです。

 別の日。この日は、狩りではなくハチミツを採りに行きます。集落を出て1時間。到着したのはバオバブの木。

 バオバブの木は樹齢を重ねると、木の内部に空洞ができ、そこにミツバチが巣を作っていました。すると、斧でバオバブの幹に枝を打ち付け登っていき、素手で巣を掴みだしました。
 さっそく採れたてハチミツを頂きます。さらに、そのままだと採りづらい位置に巣があるときは、枝ごと伐って落とすんです。金丸さんも恐る恐る手伝って沢山の蜂蜜が採れました。

 実はこれ、ダトーガという人々と物々交換するんだそう。集落を出て数時間。製鉄の技術を持つ、ダトーガ。

 街で手に入れた屑鉄を加熱して溶かし、矢じりやアクセサリーを作っています。さっそく物々交換の交渉。ハチミツを矢じり8本と交換することができました。

 他に塩なども物々交換で手に入れているそうです。
 アフリカの自然の恵みの中、狩猟採集生活を送るハッザ。彼らはそのとき手に入る食べ物を、手に入ったときに分け合って食べ、自由にそして楽しそうに暮らしていました。