「KREVA」BLOOD SONGは久保田利伸の『Missing』と新曲『変えられるのは未来だけ』の2曲を披露
多くの若手アーティストたちが “キング”とリスペクト
まさに日本のHIPHOPシーンのパイオニア
「KREVA」
「BLOOD SONG」は…久保田利伸の『Missing』と
新曲『変えられるのは未来だけ』の2曲を披露
毎週1組のアーティストを迎え、彼らの中に今も血液として脈々と流れる思い入れのある音楽や、背中を追い続けるアーティストにまつわるトークを交えつつ、ライヴ映像で紐解く新感覚の音楽番組「MUSIC BLOOD」。今回のゲストはKREVAさんでした!トークでは、HIPHOPには不可欠なライミングについて熱弁し、またリスペクトをしてやまない”アニキ”こと、久保田利伸さんとアーティストとしての凄さ、さらには将来日本のHIPHOPシーンを担う存在と断言するラッパー・ZORNさんの魅力など、びっちりと語ってもらいました。ライヴでは新曲「変えられるのは未来だけ」と、久保田利伸さんの楽曲「Missing」を披露!ここではオンエアに入りきらなかったシーンを含めて、収録の裏側を徹底リポートします!
今回のゲストは、多くの若手アーティストたちが “キング”とリスペクトするアーティスト、KREVA。日本初のフリースタイルバトル「B-BOY PARK」MC バトルの初代王者にして、未だ破られない3連覇を達成。2006年にリリースしたセカンドアルバム「愛・自分博」は、HIPHOPソロアーティストとして初のオリコン1位を獲得し、当時の日本のHIPHOPシーンでは異例の20万枚セールスを達成。先週9/8に突如配信リリースした2年ぶりのニューアルバム「LOOP END / LOOP START」は9/15公開のオリコン週間デジタルアルバムランキング、ビルボードジャパンダウンロードアルバムチャートで、ともに初登場1位を獲得。同業者にも多くのファンを持つ、まさに日本のHIPHOPシーンのパイオニアなのだ。
KREVAさんは、聞いた言葉をすぐに母音に変換することができるという話題に。
早速、千葉さんから「『MUSIC BLOOD』を母音だけで言うと?」と振られると「ういうあお」と、即答します。千葉さんが続けて「”隣の客はよく柿食う客だ。”は?」と訊くと「おあいおあうあおうあいううあうあ。」と、こちらも瞬殺。これにはMC二人も大感激!
その後、”KREVA先生”によって、「おはよう」や「こんにちは」など、日常会話を全て母音に変換する講義が開かれます。苦労をする田中さんを尻目に、千葉さんはKREVA先生からも褒められるほど、スムーズに言葉が出てきます。「雄大!事前に練習しただろ?」と、田中さんから疑惑の目を向けられるも、「やっぱちょっと僕、KREVAさんよりなのかもしれないです」と、そんなクレームもどこ吹く風、ドヤ顔の千葉さんにKREVAさんも大笑い。
さらにここからは、KREVAさんの『MUSIC BLOOD』に迫っていくことに。KREVAさんが影響を受けたアーティストとしてあげたのが、久保田利伸さん。久保田さんは、日本のR&B、ブラックミュージックのパイオニア。1986年にデビューし宇多田ヒカル、MISIA、平井堅など、のちにデビューするR&Bシンガーたちの下地を作った人物と称されるアーティスト。そんな久保田さんの凄さをVTR映像と合わせて、KREVAさんが熱く語ります。
「自分が小学生だった80年代後半って、当時は世の中に今ほどラップがなかったんです。その時、自分はラップというものを知らなかったはずなのですが、ちょっと流れてくるラップにとても敏感に反応するタイプだったみたいで、それである時『TIMEシャワーに射たれて』を聴いてからむちゃくちゃ「何これ!? かっこいい」ってなったんです。昔は全体にラップが入っている曲が本当になくて、せいぜい1パートにラップが入っているとか、そういうものだったんです。『TIMEシャワーに射たれて』も、むちゃくちゃバラードみたいなところから急にリズムよくなって、ラップが入って歌うという構成。それを聴いて衝撃を受けて。僕にとってこの経験は血肉になっているので、自分の曲にもそういう要素が入っていると思います。久保田利伸さんが作る曲のラップのすごいところは、アクロバットを見ているようなところ。例えば、このリズムに対して、どういうふうにのれてくるかということで、ラップを成り立たせているんです。リズムよく何かを発することでラップを成り立たせるというか。最近みなさんの中で少しずつ浸透しつつあるものの中の一つで、ラップというものは韻を踏むものっていうのがありますが、実はそれを全くやってないんです。何語かわからないノリだけで、〜&%$#&$〜!〜というのを録って渡したものに、作詞家さんが詩をのせてくれているから、全く韻は踏んでないけど、それでもリズムでラップになっちゃうっていう」
わかりやすい先生の解説を聞き、MCの二人も驚愕!さらにKREVAさんは続けます。
「久保田利伸さんはブラックミュージックを昔からよく聴いていて、音に慣れ親しんでいたということと、自分の体の中にすでにあったリズム感とマッチしていたんだと思うんです。そうじゃないと、あんなアクロバット技みたいなことはできません。だって、料理の基本を何も知らないのに、作るのがすごい上手いのと同じことですから」
さらにKREVAさんには、アーティスト人生を変えるほどの大きな言葉をもらったことがあるという話に。それは尊敬してやまない、久保田利伸さんからの言葉。ここでもKREVAさんが語ります。
「2006年に突然、アニキ(久保田利伸さんのこと)からオファーがあって、コラボをすることになってツアーも開催したんです。この時に一気に距離が縮まり、アニキと呼ぶように呼ばせて貰うようになりました。そしてある時、アニキから“リズムのポケットを意識した方がいいよ”って言われたんです。アニキは、ものすごくリズムの後ろ側にのっかっていける人なんです。リズムの後ろにのっかっていけるとはどういうことかというと、例えば「音ゲー」ってあるじゃないですか。ワン、ツー、スリー、フォーってリズムよくやってく丸があって。その丸にぴったりはまるようにボタンを押していくっていうあれ。正解としてはジャストなタイミングを目指すわけじゃないですか。でもアニキはそうじゃなくて、正解のリズムの後ろのポケットに入っていくようなノリ方だよね、ということをおっしゃって。自分では今までリズムの後ろについていくという意識だけと言いますか、それこそノリだけだったのですが、初めて言葉にしてもらったことで一気にひらけたんです。例えば、(手で解説しながら)カン、ここが正解という部分があって、こんなに後ろがあるんだっていう。このくらい後ろまでいってもいいってことがわかったことで、よりリズムの自由度が増えるっていうか、リズムに対する向かい方が初めてちゃんとわかったんです」
高度な説明を耳にし、思わず「雄大わかった?」と確認する田中さん。これに対し千葉さんは「なんとなくその、音ゲーの話とかで目に浮かぶのですが、具体的にどうなのかというのが気になります」。すると田中さんが、「音ゲーの話でいうと、エクセレントのところをいくけど、グッドでいいってことですよね。グッドにすることで遊びを読んでいるっていう」と確認をすると「そうそう!」とKREVAさん。さらにつづけます。「後ろのグッドこそがエクセレントって感じだから、もしかしたら、アニキに音ゲーやらせたら、逆にほぼグッドでいくかもしれない。それがすごいことだと思うんです。よく「ご自身の人生を変えた言葉は?」って訊かれたときに、ひねり出したりするじゃないですか。でもこれに関しては、本当に人生変わったなって思っています」
その後もKREVAさんは、過去の映像などを交えて“リズムのポケット”について熱心に解説します。そんな中、久保田さんの楽曲の中で、特にリズムのポケットが詰まっている曲を訊くと、あがったのが名曲『Missing』。ここでも過去の映像を踏まえつつ、熱く語ります。
「普通の人だったらビビッちゃうような後ろに回って(確認)の歌い方と言いますか。例えばお芝居の時の”間(ま)”だったら、すごく間が長いんだけど、その後すごくいいタイミングでポンッて素敵な言葉を出してくる人みたいな。そういった部分はすごく感じられますし、何より自由を感じますね、久保田利伸さんの場合は。聴いていて気持ち悪いほうに行かず、めちゃくちゃ気持ちいいほうに行くのがすごい。しかもちゃんと正解も出せるわけですから」
さらにトークは今回歌ってもらう曲、『Missing』について。KREVAさんは、その理由を語ります。
「久保田利伸さんが歌う80年代後半頃に出したバラードは、今のHIPHOPやR&Bが持っているリズム感にすごく通ずる部分があるなって思ったんですよ。最近の音楽と遜色なく、同じようなノリで楽しめるところがあるので、久保田利伸さんのバラードを歌いたいなって思ったんです。でも俺はラッパーで、歌に自信があるとかじゃ全然ないですし、自分の声が好きとかもないし。だからどうしようかなって迷った結果、逆に、だからもう『Missing』という名曲を思い切り歌うことで、リズム感のこととかを考えながら歌うことで、面白さを感じてもらえるんじゃないかと思い、ちょっと選ばせてもらいました。僭越ながら。ファンのみなさん許してください(笑)」
そしてお待ちかね、千葉さんの曲振りの時間に。KREVAさんから「リズムのポケットを意識した曲振りって言った場合、リズムができないじゃないですか? なのでリズムのポケット、ズブズブな人くらいにポケットに手を入れて、ちょっとファンを失うくらい横柄な感じで曲紹介してほしいですね」と、難易度高めのリクエストが(笑)。
田中:じゃあ、いってみようか。それでは雄大くん、曲振りよろしくお願いいたします。
千葉:俺に言ってんの?チッ(舌打ち)。
田中:お願いします!
千葉:(テンション低めで)えー、KREVAさんで、『Missing』です。どーおぞ。
田中&KREVA:ははははは。
KREVA:すんげえポケット深え(笑)。さすが、最高っす。
続いて、KREVAさんが一目置いているという次世代ラッパーをあげてもらうことに。出てきたのがZORN。今年8月、アルバムがビルボードジャパンで名だたるアーティストをおさえて1位を獲得。東京葛飾区出身のラッパーで、メデイアへの出演は、ほぼ皆無。しかしその人気は凄まじく、今年1月には武道館でライブ。9月には横浜アリーナでもワンマンライブを開催。業界中が一目置くラッパー。KREVAさんがVTRを観ながら解説をしてくれます。
「ラップの歴史が色々とある中で、最近はちょっとライミングが軽視されていると言いますか、先ほどの久保田利伸さんの話じゃないですが、ノリが良ければ最後の1文字だけ音があってれば、韻なんて踏んでなくてもいいっていう。そういうラップが主流になっているんです。そんな中、ZORNは”そんなに踏むの?”っていうくらい、圧倒的な量とスキルで、新たなキングになりうるやつです。ただ韻を踏むのがすごいだけでなく、彼の言葉を借りると、“韻の飛距離”。どういうことかというと、韻を長い文字数で踏むだけじゃなく、歌詞の中で違う世界の景色をバンバンって同居させる感じが彼の中であるんですね。つまり、ものすごいフィクションの世界と思ってた中に、急にノンフィクションがバンッとくることによって生まれる、フィクションの世界とノンフィクションの世界の距離。これが遠ければ遠いほどいいっていう。彼はそれをすごく意識していて。HIPHOPの人じゃないとわからないようなこともあえてバンバンバン言って、最後が家庭や生活を感じさせる言葉で締めるっていうのが新しいところです」
その後、実際にZORNさんの楽曲『Don’t Look Back』をベースに、ホワイトボードを使い、さながらHIPHOPの授業のように、KREVAさんがZORNさんの曲の凄さを解説します。
そしてそんなZORNさんからKREVAさんへメッセージが届き
ナレーター:一番心に残っているKREVAのアドバイスは?
ZORN:クレさんのアドバイスに精神論は一切なく、いつもとにかく具体的で、それも心に残っていますが、強いて言えば、“ステージ上でお客さんの視線をきちんと引き受けること”です。ソロのラッパーのライブは、複数人いるバンドとは違い、お客さんの視線は歌い手に注がれ続けます。MC中にフラフラしているとき自信がないように見えるから、センターから動くなって言葉は、堂々とした佇まいを心がけなければと思わせてくれました。いつも上から目線のアドバイス、ありがとうございます。(笑)?
KREVA:(爆笑)
ナレーター:KREVAに次世代のキングと言われたときの心境は?
ZORN:次のキングだと言われたときは、素直に嬉しかったのと、でしたら早く引退してもらえませんか〜(笑)っと思いました。
(一同爆笑 拍手)
これを受けてKREVAさんが語ります。「嬉しいですね。バンドとかと違って、ラッパーででっかいステージ1人でやるって相当少ないんです。Creepy NutsもRIP SLYMEもKICK THE CAN CREWも、ラップで成功しているのは大体コンビかグループですから。彼は、武道館、横浜アリーナと着実に大舞台への階段を登って行くとなったときに、同じソロアーティストとして伝えてくれる人がいないわけです。自分には見てきた景色があるから、それは少しでも多く伝えてあげたいんです。「最後は気合いしかない」とか絶対に言わないで、こういうシチュエーションの時はこうしたほうがいいとか、なるべく具対的に、上から目線で言わせてもらっています(笑)?」
そして話は、ライヴで披露していただく新曲『変えられるのは未来だけ』について。
「この曲で自分が好きなのは、“何万ルクスも明るくする”ってところがあって。何万ルクスも明るくする、何万ルクスも明るくすると言うと同じ音になっているんです。そこだけ音の部分が好きなんですけど、そこに至る歌詞の流れも好きなんです。そして毎曲、なんらかしらの想いがあるんですけど、自宅待機とか、自粛期間中に家でも曲を作るようになって、どこにも行かないで、また寝て起きて、曲を作ってという生活を送っていると、どんどんネガティブになっていって行くというか。歌詞としてはすごくポジティブなものを打ち出しているので、明るい人間だと思われがちなんですけど、実際自分の性格的には真逆で。そういった意味で今回の歌詞は、自分のために書いたという思いが強いです。(自分としては)こうありたいとか、こういうときの自分ってすごくよかったよということをギュッと集めて作ったと言いますか。実際にこの曲を作っているときも、毎日が同じことの繰り返しで、精神的に結構参っちゃって、すごくネガティブになりかけたのですが、それではいけないと思い、まずはたくさん本を読んでみようと思って、色んなジャンルの本を読み漁ったんです。そうしたらどの本にも、まあざっくり言うと、過去はどうやったって変えられないよって話とか、これからの行動で未来を作っていく、つまり未来は変えていけるとかあったのです。であれば、ズバッと自分が変えられるのは未来だけって言っていこうと思って曲にしました。例えば、うがいするでも手を洗うでも、何でもいいから、とにかく動き出して先に進んでいくことで、人生を変えていこうっていう。本当に小さいことなんですけど、でもそれで自分は救われたところあったので」
これを受けて最後に、「今本当にそうあってほしいと思いますし、そうしていかなければいけないんだなって思うところもあるので、めちゃくちゃ力をもらえました」と、前向きに未来を見据える千葉さんが印象的でした。