感染症の専門家に、感染状況・対策の今後の見通しや、合併症と疑われている髄膜炎について聞きました。
今日の専門家:加藤哲朗(かとう・てつろう)医師(日比谷クリニック 副院長、感染症・呼吸器疾患の専門家)
■この流行は夏まで続く?
ーーWHO(=世界保健機関)によると、新型コロナウイルスについて「インフルエンザのように夏の期間に消滅するという考えは間違いである」と発言しました。これについてどう受け止められましたか。
加藤医師:一般的にウイルスは温度・湿度が低い環境を好むので、そういう意味では暖かくなって湿度が上がるとウイルスが苦手な環境にはなります。
しかし、例えば沖縄で5月ぐらいにインフルエンザが流行したり、現在の新型コロナウイルスも南半球の国や熱帯の地域でも出たりしています。
ゆえに、気候だけで症例が減ることは現時点では考えにくいです。
暖かくなったとしても流行が続いている可能性もあるため、引き続き感染対策の手を緩めずに対応していかなくてはならないと言えると思います。
■感染者が発症した「髄膜炎」とは?
ーーまた、新型コロナウイルスが原因の可能性がある髄膜炎を発症した方も出ました。髄膜炎を発症しているのは、山梨県内に住む20代の男性会社員。
県によると、男性は今月6日に病院に救急搬送され、7日に新型コロナウイルスの陽性が確認されました。男性は意識障害があり重症で、感染経路は特定できていないということです。
そして、男性が入院する病院はこの髄膜炎の原因について「新型コロナウイルスの可能性が高い」との見解を示しています。
そんな「髄膜炎」とはどんな病気なのでしょうか。
加藤医師:髄膜炎とは、脳を覆っている膜(髄膜)にウイルスもしくは細菌が感染をして炎症を起こすという病気です。
症状としては頭痛や発熱、嘔吐などがあり、本当にひどくなると意識障害が発生してしまうということが起こり得ます。
■新型コロナウイルスと髄膜炎の関係は?
ーーその髄膜炎の原因が「新型コロナウイルスである可能性が高い」ということについて、どのようにみていますか。
加藤医師:一般的に髄膜炎を起こしやすいウイルスがあるのですが、今回のコロナウイルスが髄膜炎の原因となっているというデータはほとんどありません。
その点で今回の報告は非常に注目すべき情報だと思うのですが、これだけを持って新型コロナウイルスが髄膜炎を起こしやすいかどうかという判断は、なかなか難しいと思います。
新型コロナウイルス感染症の合併症の一つとして、髄膜炎を起こしうる、という認識をもつきっかけになると理解しています。
ーー異例の一斉休校措置やイベントの自粛などが続いていますが、感染者が増えている現状についていかがお考えですか。
加藤医師:こういった対策の効果が出るのは少し遅れてからではないかと思いますので、
現時点での報告だけで判断せず、これまで通りの感染対策の手を緩めない必要があると思います。
ーー安倍総理は国会で感染者のうち300人以上が回復、退院したと述べていましたが、この点についてはどうでしょうか。
(3月9日時点の情報です)
加藤医師:今までの情報は感染した後に「こういう症状だ・こういうことが起こった」ということばかりが伝わっていましたが、
時間が経ってくると「治った」「良くなった」という情報があがってきて、一連の病気の流れや全体像が見えてくると思います。
こういう情報が蓄積してくることによって、新型コロナウイルス感染症の診断や治療、その他の総合的な対策が進んでくれることに期待をしたいと思います。
※3月9日放送 news every. 「ナゼナニっ?」より
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