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WHO上級顧問に聞いた① 「イタリアより少ない 日本の人口あたりの集中治療ベッド」

WHO上級顧問に聞いた 「イタリアより少ない 日本の人口あたりの集中治療ベッド」

【目次】 

1)医療従事者を守ることが重要 

2)実は日本の集中治療は手薄  

 

英国にて WHO事務局長上級顧問を務める渋谷健司氏(以降A)に、感染が広がる欧州からみた新型コロナウイルスと今後の見通しを聞きました。 

取材:NNNロンドン支局・古谷記者(以下Q) 

WHO上級顧問の渋谷健司氏

1)医療従事者を守ることが重要 

Q ヨーロッパで爆発的に感染者が増えた原因をどうみていますか? 

A ひとつは初動の遅れだと思います。実は中国・韓国などアジアで非常に広がっている状況の中で、対岸の火事的に見ていたと思います。 

特にイタリアなどは、既にウイルスが国内に入っていて水面下で爆発的に広がり、検査を始めたら次々に(感染者が)出てきて、気がついたときには重症者で病院があふれるという状況だったと思います。 

 

Q 最近イタリアにおける感染者の8%が医療従事者だったという情報がありますが、 日本でもこうしたことが課題になりますか?  

A おそらく医療者側が元々ウイルスを持っていたというよりは、急激に患者さんが増えて医療機関に殺到することで(患者から)感染してしまったのだと思います。  

もちろんいろいろな防護をすると思うのですが、次々に患者さんが来たときにはそればっかりやっていられない。

そうした感染リスクと医療従事者は常にありますので、本当にまず医療機関を破綻させないために医師、看護師など医療従事者という人を守るというのは大原則だと思います。 個人の防護服などが足りないのは一番医療従事者にとってのリスクです。 

今イギリスでは、いわゆる抗体検査というものを行い、どれだけ免疫がついているかということをまず医療従事者から始めようとしています。 

免疫がついていれば、感染リスクは非常に低くなりますので、ついていない方に関してはきちんと防護すると、なによりも医療従事者を守るということは非常に大事です。  

 

Q 医療が出来なければそれだけ対応も遅れますよね  

A (医療従事者を守れなければ)医療機関はシャットダウンというか崩壊になりますから、本当に医療従事者を守る一番リスクのある人々を守るということはまず大前提だと思います。  

  

Q イタリアで死者数が多いのは高齢化ということもあるかと思いますが、医療が手遅れになっているということが大きいのでしょうか? 

A 大きいと思います。やはり急激に高齢者の重症患者が殺到すると、呼吸器や人工心肺の装置など、かなり集中治療でも負荷のかかるものが必要となります。 

装置があるだけではダメで対応する人が必要になりますから、(患者が殺到すれば)人の対応というのもなかなか難しいです。  

関連:「新型コロナ」医療現場のトップ 3つの訴え

 

実は日本の集中治療は手薄 

2)実は日本の集中治療は手薄 

A 日本の場合さらに懸念されるのは集中治療のベッド数が、実は人口10万人あたりイタリアより少ないことです。実は集中治療においては日本は手薄なところがあります。  

 

Q 病院の数が多い印象が強いのですが…  

A ベッド数は多いです、ただ日本のベッド数が多い理由は精神病棟とか療養病棟が多いからです。

実際、今回の重症者に対応できるような集中治療ベッドというのは実際には日本はイタリアより人口あたりの数は少ないんです。  

ですからそうした対応に関しても地域で連携をして、人々のやりとりとかリソースをどうするかということを、まさに今やっているところだと思います。 医療機関が破綻したらそれだけで終わってしまいますので。  

  

Q これは感染者増加と医療機関のいたちごっこになってしまいますね。  

A そうですね、ですから急激に感染者が増えますので、それをどうやって緩やかにしていくか、そして”医療的な需要”と”社会経済的なインパクト”を鑑みながら、都市の大きさも考えながらやっていくということで、これは非常に綱渡りではないけれど、見通した戦略を立てないといけないと思います。  

  

Q キャパシティを超えないように適切な対応をとっていくということですね?  

A ただそうは言っても予想できないこともあります。急激に増えてイタリアのようになってしまうこともあります。そうなってしまえば、言い方は変ですけど命の選択的なところも議論になってしまう可能性もあると思います。 

 

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