2020年4月19日公開
“靴のインソール”素材で作った布マスクをどうぞ――。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、深刻なマスク不足が続く中、靴のインソールに使う素材から作った布マスク1000枚を、介護施設に無償で提供する取り組みが始まりました。
(写真:インソール素材で作った布マスクを持つ岡部さん)
取り組んでいるのは、日本では数少ない「足」を中心とした予防医学を専門とする総合診療医・岡部大地さん。AIと3Dプリンターでつくるオーダーメイドインソールの開発などを手がけるジャパンヘルスケアの代表も務めています。岡部さんはこう話します。
「大小に関わらず、“自分はこれができる”っていうことをみんなでし合うということが大事だなと思い行動に踏み切りました」
きっかけになったのは、最前線で新型コロナウイルスに感染した患者の治療・対応などにあたる医療従事者たちが、使い捨てマスクの入手に苦労しているという現状。一般の人にマスクを提供することで、少しでも医療従事者に使い捨てマスクが届くような環境を作りたい。岡部さんは医師として、そんな思いから行動を始めたと言います。
インソールの素材に使われているのは「和紙繊維」。「越前和紙」で知られる福井県に工場を持つ企業「キュアテックス」が独自に開発・生産しています。和紙繊維は、調湿性に優れていて蒸れにくく、天然素材で抗菌作用があり臭いにくいことなどが特徴だといいます。
(写真:福井県に工場を持つ「キュアテックス」が手がける和紙繊維)
和紙繊維から作った布マスクは、洗って繰り返し使うことが可能です。「キュアテックス」社は数年前からマスクの開発を進めていましたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し、取引先から依頼があったことから「今できることを」と量産に踏み切りました。その動きを知った岡部さんは1000枚を買い取った上で、無償で提供することに。
(写真:靴のインソール素材「和紙繊維」を使った布マスク)
より必要としているところに届けたいとSNSで提供先を募ったところ、介護の現場から「スタッフが1週間で1枚のマスクでしのいでいる」などの声が多く寄せられました。布マスクを提供することで、より安心して介護に当たってもらいたいと岡部さんは言います。
「1000枚で社会の何が変わるかって言ったら、大して変わらないとは思うんですけれども、一人ひとりが自分のできる範囲で行動するっていうことに価値があると思う」
現在、東京・大阪などの施設への提供が決まっていて、5月下旬に届ける予定だということです。
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