4月17日公開
■ネットカフェ難民4000人はどこへ?
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京都などで幅広い業種が「休業要請」の対象になっています。ネットカフェや漫画喫茶が対象になり、寝泊まりする場所をなくす人も。生活困窮者の自立支援活動を行うNPO法人「もやい」理事長の大西連さんに話を聞きました。
――各地で休業要請が出されています。ネットカフェなどで寝泊まりしていた人たちが心配されていますね
都が2018年に公表した調査によると、職業も安定せず固定した住居を持たない「住居喪失者」、いわゆる「ネットカフェ難民」が1日平均で約4000人いると推計されています。
所持金次第では、しばらくはカプセルホテルなどに泊まれる人もいるかもしれませんが、多くの人がいきなり行き場を失うことになります。
都は以前から、生活困窮者の自立支援ために100人分の宿泊環境を提供していますが、今回の事態を受けて、アパートやホテルの借り上げや都営住宅の空き室を利用して、400人分を追加で用意しようとしています。また、神奈川、千葉、埼玉も施設を開放するなどして、受け入れ態勢を整えています。しかし、東京についていえば、それでも足りないのではないかと思います。
――どのような相談が寄せられていますか?
都の休業要請(4月10日)が出た週末から翌週にかけて、面談と電話で、それぞれ2回ずつ相談会を行いました。面談の相談は47件、電話相談が109件ほどありました。
面談の件数は、普段に比べて大幅に増えているわけではありません。一方、電話相談は、通常の1.5倍から2倍ほどに増えています。ただ、相談の内容が変化しています。まず、初めて相談したという人が増えている。さらに、緊急性の高い相談よりも、万が一生活に困った時のために、あらかじめ支援情報を知っておきたい、という相談が多くなっています。例えば「来月の給与が大幅に減りそうだが、30万円の現給付は、自分に適用されるのだろうか?」といった相談です。
■事態はリーマンショックの時よりも悪くなる・・・
――今後、どのような状況が想定されますか?
すぐに生活に困る人というのは、ネットカフェで生活していたり、日雇いで生計を立てていたりと、もともと生活困難に近い人たちです。一方、今後困る人というのは、地方の工場で派遣で働いて3月末で雇い止めになりました、というような人たちで、そういった人たちの生活が苦しくなるのは4月ではなくて5月以降です。
イベント関係者たちは、2月から自粛要請が出されていて、すでに生活に困り始めているわけで、業種や働き方によって生活が苦しくなるタイミングに、タイムラグが生じてくるわけです。その意味で、見えにくいんです。いろいろな業態から困る人がじわじわと増えてきて、5月、6月時点でコロナの状況が収まっていないと、かなり多くの人たちが生活困難な状況になるだろうと感じています。
――リーマンショックの時と比較すると?
リーマンショックの時よりも状況は悪くなるのではないかと思っています。リーマンの時は自粛する必要はなかったし、お金は使えたし、飲みにも行けました。消費行動が抑制されたわけではないんです。しかし今回、これだけ街が止まるのは、危機的な状況だと感じています。
リーマンショックの時に多くの生活困窮者が出たことがきっかけのひとつとなって、その後「生活困窮者自立支援制度」という制度ができました。この制度は、基本、直接現金を渡すのではなく、地域の力、NPOの力、ボランティアの力などを通じて就労支援や生活再建を目指す、寄り添い・伴走型の支援です。国の財政が苦しい状況で、どうにか編み出されたネットワーク型の支援だったんです。
今回は、このコンセプトが、機能しません。就労支援と言っても、雇用がありません。また、感染拡大が課題ですから、寄り添い・伴走型の「子ども食堂」とか、「地域の居場所作り」、「共助社会」など、「場」を作る形の支援が、今回は難しくなっています。生活困窮者自立支援制度は、いわば「平時」の支援制度で、制度が想定していなかったことが起こっているんです。
*2008年12月 リーマン・ショックの影響により生活困窮に陥った人々のために開設された「年越し派遣村」
■生活に困った時、まず、役に立つ3つの支援制度
――実際に生活が苦しくなった時に助けとなる制度は?
主に3つあります。まず、社会福祉協議会が窓口となる、「生活福祉金貸付制度」、次に生活困窮者自立支援制度の「住居確保給付金」、そして、「生活保護」です。
窓口は、各自治体の福祉事務所、生活困窮者自立支援窓口、市町村の社会福祉協議会、NPO、など制度ごとに異なりますが、それぞれが連携しながらやっている自治体もあります。 「生活保護」や、「生活福祉金貸付制度」がスピード的には速いですが、状況によって変わるので、まずは相談に行ってほしいと思います。
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大西さんが理事長を務めるNPO法人自立生活サポートセンターもやいでは、新型コロナウイルスの影響で住まいを失ったり、収入が減ったりしている人たちを支援するために緊急の相談会を、4月中の毎週、火曜日と土曜日に行っています。
火曜日は11時~17時にもやい事務所(新宿区山吹町362番地)、
土曜日は14時~15時に新宿都庁前(都営大江戸線「都庁前」駅E1出口)
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