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「いま、人間性が試されている」――宮本 亞門、不安な個人の心に語りかける動画に込めたエール

2020年4月23日公開

新型コロナウイルスが猛威を振るう中、演出家・宮本 亞門さんの呼びかけで始まったプロジェクトが反響を呼んでいます。「心折れないで。希望を捨てないで」という思いが込められた「上を向いて~SING FOR HOPE プロジェクト」。第一弾として4月14日、著名人と一般の人が、坂本 九さんの「上を向いて歩こう」を歌う動画が公開されました。「この大きな災難を乗り越えていけるのか。それとも苛立ちや差別が出てきてしまうのか。人間性が試されている」と語る宮本さん。プロジェクトに込めた思いを聞きました。

上を向いて歩こう1

( https://uewomuite-project.squarespace.com/「上を向いて~SING FOR HOPE」公式サイト)

 

■不安を抱える「個人」に届けたい

 

新型コロナウイルスの影響で、自身が手がけるオペラをはじめ、演劇・舞台の上演が次々と中止を余儀なくされたことが、プロジェクトを始めたきっかけだと宮本さんは言います。

「残念ながら、今後、未来が見えずに、世の中の多くの人に精神的な不安が募っていくと思います。私たちだって舞台やコンサートが軒並み中止になり、歌やダンスも届けられず、困惑している人が多くいます。でも、だからこそ今、演劇人、アーティストたちが何かできることがないか、考えたのがプロジェクトを立ち上げたきっかけです。それで、みなさんにお願いしました。あなたの気持ちを「上を向いて」を歌って継いでください。孤独な人たち、不安な人たちに語りかけてください、と」

病床でウイルスと闘う人、医療従事者、物流・インフラなど生活を支える人、そして部屋で不安を抱え過ごす一人ひとりの「個人」に語りかけたい。選んだ歌が、坂本 九さんが歌い、いまなお世界中で愛される名曲「上を向いて歩こう」でした。

 

宮本亞門✖️上を向いて

 

「『上を向いて歩こう』の歌の素晴らしさは、ひとりぼっちなんです、全員が。「ひとりぼっちの夜」で自分が自分に語りかけている。過去、あの時は良かったなあと思いながら、今の苦しみから一歩踏み出す歌。つまりこの歌は、“個人”に語りかける歌なんです。ただ、みんなと手を繋ごうではなくて。一人ひとりが、人に言えない孤独と痛みを持っている。しかし、それを恐れないで、この重い雲の向こうには太陽が照って、いつかあなたを照らすんだ。ひとりぼっちの孤独と不安、だけど未来があるという歌の精神だと思います。」

 

■「心に語りかけることができる、それが僕たちの仕事」

 

動画では、大竹 しのぶさん・市村 正親さん・荒川 静香さんら著名人のほか、一般公募で動画を投稿した国内外の600人以上が、それぞれの部屋で「上を向いて歩こう」を歌う様子が編集されています。出演者・スタッフすべてが無償で取り組んでいます。

 

上を向いて歩こう2

 

「1人1人の歌を聞き、メッセージを聞いているうちに心が動く。やっぱり、全員が同じ人間なんだ、と。有名無名や国籍、障害の有無に関係なく同じように不安を感じ、同じように人に伝えたい、エールを送りたい。そして自分もここで宣言したいという方が多いんだということがわかったんです」

動画とともに添えられたメッセージでは、最前線でウイルスと闘う医療従事者や家族、仲間への感謝の気持ちなどがつづられています。動画の視聴回数は4月23日時点で110万回以上。SNSなどのコメントで多くの反響がありました。例えば、動画を見た看護師からこんなメッセージが届いたと言います。

『正直言うと精神的にボロボロ。自分たちがしていることは、命を救いたいということなのに非難もされる。だけど今、動画を見て勇気をもらったので頑張ります、これから夜勤に行きます』

宮本さんは力を込めてこう話します。

「やはり、心に訴えることができるのは芸術であり、アートであり。エンターテインメントというのが、最も必要になるだろうと僕は思っています。今、人の本当に心の奥に、『大丈夫だよ。頑張れ』っていう勇気を与えたりすることができるのは、心に語りかけることができるのは、やはり僕たちの仕事」

 

■「人間性が試されている」

 

今後の展開について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「みなさん肉体を持っているんですね。自分が生きていることの証明ということで、ダンスを何かの形でやっていきたい。「上を向いて歩こう」でみんなでラジオ体操ができてもいいし。とにかく、みんなが生きていることを、自分たちで『よし、そうだ』って、自分たちが自信を持っていけることを何かできればなと思っています」

 

宮本亞門

 

瞬く間に世界中に蔓延したウイルス。そのスピードだけではなく、国や人間の関係にまで影響を与えていることに恐ろしさを感じると言います。しかし、それを乗り越えられるのもまた、人間なのだと宮本さんは語ります。

「今は、人間性が試されていると思います、我々は次にどこへ向かうのか。この大きな災難を乗り越えていけるのか? それとも不安から苛立ちや差別を起こし、争うのか? とても大切で、貴重な時期なんです。誰もが先が見えない不安に悩む。だからこそ、この不安を少しでも希望に変えていくべきだと思います。歌ってください自分のために!もし、大きな声を出しちゃいけないんだったらマスクの中でもいいし。心の中でこの歌を一緒に歌って、はげみにしていただけたら嬉しいです」
 

 

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