7月22日 中島芽生

朱色の漆塗りの文箱に入れられた「おじいちゃんからのラブレター」。

祖母が大切に保管していた、箱いっぱいに詰められたその手紙には、想像もしていなかった2人の歴史がありました。

 

生前は「2人の思い出だから」と手を付けられなかったその手紙。

7年前に祖父が、今年になって祖母が亡くなったことをきっかけに、家族会議の末、せっかくだからと祖父が残した言葉を紐解いていくことになりました。

手紙を読み進めていくと、働き始めて間もない祖父の他愛もない日々の報告や

よく「土曜日に京都駅西口11時」で待ち合わせをしていたこと。

時には疲れて半分眠りながら書いているのか、だんだん字が読めなくなっていくような手紙や、祖母が体調を崩して入院している病院宛に送られた体を心配する手紙もありました。

そんな中でも何より驚いたのが、2人の結婚はどうやら反対されていたということです。

結婚話に暗雲が立ち込め始め、ちょっと弱気になっている様子の祖母を、祖父が何とか説得するような言葉も見られ、「おじいちゃん、がんばれ!!!」と応援したくなるような一幕も。…もちろん結果は分かっているのですが。

 

「全てを捨て去ってでも自分のところに来て欲しい」

今の私よりもずっと若い祖父が、どんな覚悟でこの言葉を祖母に送ったのか。

そう考えていると、ふと、80歳を超えて足が悪くなってきた祖母の手を、しっかりと祖父が握って歩く姿がよみがえってきました。

私の知らなかった祖父と祖母。私の知っているおじいちゃんとおばあちゃん。

それらが合わさって、手紙を読み終えるころにはひとつの映画を見たような気持になりました。

 

あの時に、反対を押し切って結婚してくれてありがとう。

家族みんなへたくさんの愛情をありがとう。

改めて2人に伝えたいと思いました。