DASH村 ~堆肥づくりと種まき~
福島県の山間にある葛尾村(かつらおむら)。
そこから直線距離で5kmの福島DASH村はまだ除染が進んでいないため、人は住めず、農業をすることも出来ないが、葛尾村は5年前、震災当時の土が剥ぎ取られ、人が暮らせるようになった。
しかし、荒れ放題の場所はまだまだ多い。だから今年はDASH村のすぐそばで荒れた田んぼを甦らせて、21度目の米作りを。
震災で手付かずの土を掘り起こすと「肥料を入れて土壌改良せんとあかん」と城島。
土壌改良に必要なもの、松岡には心当たりが。
シンタローと共に向かったのは、葛尾村唯一の食堂、石井食堂。DASH村から車で15分の場所にある。
震災前までは、住み込みで働いていたDASH村のスタッフだけでなく、明雄さんが大好きで農作業の後、週2回のペースで通っていたお店。
10年前の震災で葛尾村は全村民が避難。休業を余儀無くされたが、2011年秋には三春町の仮設住宅で営業を再開。
そして4年前、葛尾村に戻って来た住民のため、さらに復興作業にあたる人たちの力になりたいと元の場所で再開。
「DASH村の新人スタッフは、必ずここでチャーハンを食べてた。それが登竜門だった」と松岡。
というのも、使うご飯の量はなんと4合。お客さんに褒められていくうちにだんだん多くなっていったという。
松岡のお目当ては、この大盛チャーハン…ではなく、お米のとぎ汁。さらにトンカツを揚げた衣のカス。
「これも肥料になるんですか。へえ~」とシンタロー。
さらに、同じ葛尾村の石井食堂から車で10分の坪井さんの牧場へ。
湧き水が豊富で、夏も比較的涼しい葛尾村は、良い牛が多く育つことから畜産業が盛ん。
坪井さんは、黒毛和牛の飼育歴20年のベテラン。
「震災の時は牛を連れて避難した。避難解除したら戻って再開するつもりだった」
現在、葛尾村に戻ってきた元住民はわずか2割。
坪井さんは村の大切な産業を絶やさないよう、除染され安全が確認されたこの場所に、牛たちと一緒に戻ってきた。
頂きたいのは、牛糞。
牛糞の山をスコップでトラックに。「(牛糞を運ぶの)初作業ですよ」とシンタロー。
松岡とシンタロー2人で一生懸命トラックに乗せていると、坪井さんが「大変そうだから」とショベルカーを使って一気に!
「ありがとうざいます!」
材料が集まったところで堆肥作り。
田んぼに生えていたススキを敷き、そこに坪井さんから頂いた牛糞、石井食堂から頂いた米のとぎ汁と油かす。
これを交互に重ね、最後に、畜産農家の吉田さんから頂いてきた刈り取った羊の毛を入れる。
それを約2か月間寝かせて完成。
一月半ほど経ち、様子を見てみると、堆肥から湯気が。「この湯気が出てないといけないのよ」と城島。
すると、シンタローが何かを発見!「えっ!?ネズミじゃないですか!かわいい」
それは、身体がアボカドくらいの大きさのアカネズミ。普段は山の中の土に穴を掘って暮らす、野ねずみ。
「寝てたんだね。温かいから」
夜の冷え込みがまだまだ厳しいこの時期。アカネズミが布団代わりに潜っていたということは…
「42.5℃。ひっくり返してもっと発酵させて、さらに熟成させる」と城島。
「今思うとすごい経験ですね。東京だとやらないじゃないですか」と改めて思うシンタロー。
「田植えまであとひと月。太一が苗をしっかり育ててくれればな」
一方、田んぼに植える苗の準備は、220㎞離れた、東京・新宿の屋上で、太一と岸が。
「岸くん、これが僕らが育てたお米の種。お米の種は繋いでいかないといけないから」
TOKIOが繋いできたこの種、始まりは20年前。
白米にして食べる以外に、翌年の田んぼにまく「種」として一部を残して20年間繋いできた。
10年前、震災直後のDASH村から避難する時も種を守り続け、植える場所が変わっても繋ぎ続けてきた。
福島に行くことができなかった去年は、TOKIOやスタッフの家で苗を育て、都内の園芸高校で田植えをした。
そして、ただ繋ぐだけでなく、より美味しい米にするために…
「この中にも種にならない子となる子がいる。良い種を選別していく」
使うのは、樽一杯の水に塩20kg入れた塩水。この塩水に種を入れて浮いてきたものは戦力外。
中身が詰まった良い種は沈む。
「普段何気なく食べているお米が、ここまで手間をかけていると知られて楽しい」と岸。
それを聞いた太一は「俺の若い頃と全然違うわ。そんな前向きな人生じゃなかった」
太一が初めて米を育てた20年前は26歳で、今の岸とほぼ同い年。
当時の本音は「音楽で売れたかった。なんでこんなことしてるんだろうって」と思っていた。
でも、「色んなこと学んで米作りが楽しくなった」
続けて、この種を水に漬ける。「まずは水の中に浸けることで、種を徐々に起こしていく」
水分を十分に吸収すると、種は春が来たと感じ、芽を出す準備をする。
使うのは太一が作った循環装置。ハート池の水を風車で汲み上げることで、水を循環させて一定の水温を保たせる。
種がまけるようになるまで、およそ1週間。
「初めて知ったな、お米がここまで手間暇がかかるって」と岸。
「手間暇をかけるからどんどん美味しくなるんだろうね」と太一。
予定通り1週間で「すごいことになってますよ!もう種が膨らんでる」と岸。
水に浸ける前と比べ、プックリと大きくなっていた。
「ほら分かる?ここの白いのが芽なのよ」と太一。
いよいよ種まき。その為に、太一が岸に出していた宿題が。
それは1週間前のこと。
小さい穴の空いたポットに土を入れ、そこに一粒ずつ種をまくのが、美味しいお米を育てるこだわりの種のまき方。1本に栄養を集中させることで丈夫な苗になるが、大変なのは種をまく前の土入れ作業。
種をまく理想の深さはおよそ6mm(9割)。しかし、これがなかなかな手間のかかる作業であるのに福島の葛尾村で開拓中の田んぼに苗を植えるためには、最低でも2880個に土を入れなければいけない。
それを丁寧かつ迅速に入れられる方法を考えるのが、太一が岸に出した宿題だった。
「ちょっと考えたら、これだ!とピンと来て」という岸。
岸が編み出した道具は、竹の棒の先にサラシを被せ輪ゴムで止めただけ。
まず、土を全部入れ、トンボ代わりにスコップで余分な土を払う。この段階では穴は10割、土で埋まった状態。
そして、岸の作った道具を穴に押し込むだけで9割の深さに!
岸発案のやり方で、太一と岸がそれぞれ作業を進めていくと、岸が太一を上回る速さで次々と。
「岸くん早い!才能を開花させたね!これは岸君担当だね」
「これだけは任せてっていうのが、やっと胸張って言えます」と苗作り課・土押し係長に就任!
そして、黙々と土押し作業を続ける中、何か言いたそうにチラチラと太一を見る岸。
「太一さん、あの~実は何ですけど、今年の24時間テレビ(のメインパーソナリティ)、King & Prince でやらせて頂くことになりました」
この日はまだ発表前。知っているのはほんの一部の人だけだが…。
「なんで俺に教えてくれたの?」と言う太一に、「太一さんは師匠で、伝えなきゃいけない先輩なので」と岸。
その岸の言葉に、太一も「嬉しいな。手伝えることがあったら何でも手伝うよ」と約束。
そして、土押しの作業も終了。
9割の土が入ったところで、一粒ずつ種をまいていく。「一粒でまくことで根張りが良くなる」と太一。
「お米一粒一粒大事にしろっていう言葉が改めて分かる」と岸。
種を一粒ずつまいたら、この上にフルイで細かい土をふわっとかける。
ここに、水をたっぷりとかけて、直接日光が当たらない場所に置いておく。
「ここで芽が出てこなかったらリーダーキレるよ」と太一。果たして、芽は出てくれるのか?