初モノ奪取 ~桜えび~
「初物七十五日」と言われ、江戸時代、『初物を食べると寿命が75日伸びる』と信じられていた。
そんな初モノを求めて、今年3月30日、現在51歳で体中にガタが来ている城島と、20th Centuryの坂本昌行がやってきたのは、日本一の深さを誇る駿河湾。今回、狙うのは駿河湾でしか獲れない宝石。
それが、かき揚げとして食べたり、料理に載せたりして香ばしさと彩りを加える、桜えび。
「国産の桜えびのほぼ100%が駿河湾産」「そうなんだ。知らなかった」
そもそも桜えびは、日中水深2~300mで暮らす深海のエビ。
駿河湾以外にも、東京湾など他の海にも生息していると言われるが、駿河湾がほぼ100%を誇る理由は、その地形。
陸からわずか1kmで、桜えびが生息する、水深200m以上に。さらに、富士山からの雪解け水が、山の養分と共に流れ込み、餌のプランクトンも豊富。そのため、この沿岸に桜えびが居ついてくれている。
明治時代から120年以上にわたり、この地の名物となり、人々の生活を支えている。
駿河湾では、春と秋に年2回漁を行っており、やってきた3月30日は、まさに今年の春漁の解禁日。
今回、お世話になるのは、静岡県桜えび漁業組合の組合長の実石正則さん、石川さん、和田さん。
実は、2年前、関ジャニ∞の丸山と城島が訪ねたことがあったが、波が強くて漁ができなかった過去が。
桜えび漁は少しの波でもできなくなる繊細な漁。漁期のおよそ120日の間で漁に出られるのは40日ほど。
あれから緊急事態宣言発出で漁に参加できず…。
しかし、各地で様々な漁を見てきた海の男として、城島が全国の人に知って欲しいことが…
「桜えびを獲らずに漁を見送ったことがありましたよね?」
というのも、2000年頃を境に、桜えびの漁獲量は徐々に減り続け、4年前には最盛期の1/20に。
元々、桜えび漁を営んでいた漁師達も生活にならないと、ここ10年で20人ほどが辞めてしまった。
そこで苦肉の策として、駿河湾の漁師たちは、桜えびの数を増やすため、この地の名物を守るため、120年の歴史の中で初めて桜えびの漁の中止を決断した。
「なんでそんなに獲れなくなった?」と城島。
様々な専門家が調査に乗り出したものの、温暖化による影響か、人間による乱獲なのか、未だ解明されていない。
それでも、「この漁はずっと続けていかなくてはいかない」と桜えび漁歴25年の石川さん。
さらに、「地元でも桜えびを待っている人がたくさんいる」と実石さん。
次世代や自分の家族のため、そして地元の名物を守るため、初めて秋漁を完全停止させたが、その後も数は減少。
しかし、昨年ようやく回復の兆しが見え始め、久々の出港に燃えているのは彼らだけではない。
桜えびの初漁に出る漁船は120隻。その船長全員が集まるのが船長会議。
そこで共有されるのがそれは、解禁日ならではのルール。広大な駿河湾、今年はどこにどれだけいるのか?
120隻が4班、川の河口中心に4つのエリアに分かれて調査する。
実際に網を入れるのは、石川さん始め、各班2隻のみ。
「これだけ漁師さんがいたら、船ごとに水揚げ量が変わる?」と城島。
「桜えびはプール制といって、全ての漁船が一緒に出漁して、水揚げ代金を均等に分配します」と石川さん。
つまり、駿河湾の漁師たちは運命共同体。
漁解禁の午後5時まであと15分を切ると、漁師たちがあわただしく出航の準備を始めた。
大事な初日、船に乗せていただく以上はできる限りのことを、と城島・坂本も準備を手伝う。
今回お世話になる石川さんの船には、漁師暦50年以上の石川さんのお父さんから、漁に出て5年目の若手 太田さんまで、総勢6人の駿河湾の男たち。
17時のチャイムが鳴り、いよいよ待ちに待った2022年の漁が解禁!
石川さんの船を含む2班の船は20隻。そのグループで漁場へと向かう。
魚群探知機を使い、広い駿河湾にいる桜えびを探しあてるが…
「春だと7時くらいまでに見えてこないと」「それがタイムリミット?あと1時間ちょっとじゃないですか」
桜えびは夜行性で、餌を求めて浅い場所までやってくるが、春は7時を過ぎると、網が届かない深い場所へ戻ってしまう。
すると、別の船の和田さんから「港沖で70~80mのところにポツンと反応が」と連絡が入った。
しかし、反応は微弱で網を入れるほどではないという。
網を入れるのは1度きりで、網を引けるのは20分だけというのが、桜えび漁のルール。
「桜えびを獲りすぎないようにと、漁師の間で決めたルールです」
そして午後6時25分。タイムリミットまで35分。
水深110m付近に反応が!1度きりの漁のチャンスは今!と石川さん。
桜えび漁は、2隻がワンチームとなって網を引く、曳き網漁。
海中で漂う群れを狙い、巨大な網を2隻で引き、捉える。
ただし、船の速度が遅すぎると群れの下に網が潜ってしまい、早すぎると群れの上を越えてしまう。
しかも、海の中は目視できない。桜えび漁でコンビを組んで15年、共にこの町で育ってきた石川さんと和田さんの阿吽の呼吸で桜えび漁開始!合図とともに網を海へ落としていく。
城島と坂本も漁のお手伝いを…と思ったが、荒れる船の上で2隻の船の間に網を落とす作業は難しく、漁業歴13年の城島でも手を出すことができない。
とはいえ、乗せてくれた以上、できる限りのことをと、「すごいチームワーク。すごいな、みんな気合入ってて。
この日のために1年かけて臨んできた。手伝うレベルじゃない、これは」とできる限りのリポート。
今年を占う大事なひと網。かつては、このひと網で10t獲れたことも…
4年前には桜えびの反応がなく漁の中止に至った。今年はどうか?
石川さんと和田さんの船の網が繋がり、2隻の船が同じ速度で並走して網を引いて、桜えびの群れを一網打尽に!調査目的の解禁日とはいえ、ここで群れごと捕獲できなければ、今年どれだけ獲っていいのか、目安にならない。
網を引くこと20分。2隻が再び近づき、網を絞る。すると…「ロープが引っかかった」
巨大な網は、水の抵抗もかかり、推定3t以上の重さ。漁師たちがすぐに対応し、いよいよここから、巨大なウインチで、網が絡まらないよう、巻き上げていく。
イワシやバラムツが先にかかり、網をどんどん引き上げていくと…「いた!桜えび!」
あとは網にどれだけ桜えびが入っているのか?網にホースを入れ、中の桜えびを吸い取り、一箱でおよそ15㎏入るカゴへと送り込まれる。「すごい!大量の桜えび!初漁!桜えび解禁!」
目標は、復活の兆しが見えた去年の解禁日の、16箱。今年は、去年より少ない9箱だった。
「全然少ないけど、一応桜えびがいるって確認できただけでも良かった。5月の旬に向けて出てくれるといいな」
そして港に戻ってくると、漁師仲間や家族だけではなく、桜えび漁の取材に来たスタッフの姿も。
港についてもできる限りのことを、と水揚げのお手伝い。その様子が翌日の地方ニュースにも。
この獲れた桜えびは、鮮度を保つため、明日の出荷まで冷蔵庫へ。
結果、初日は全体で、計0.9t。去年の半分ほどだった。
しかし、そんな貴重な桜えびを「どうぞ」と石川さん。
これは、最後、カゴに収まりきらなかった、ハンパな分。つまり、「一番新鮮な初モノの桜えび」
桜えび水揚げから20分。ここ駿河湾から、年間281t以上が、日本中に流通するおそらく最初の一口を…。
「いただきます!美味しい!桜えびの風味があるけど、生の桜えびこんなに美味しいんですか!」
これで、城島・坂本ともに寿命が75日延びた。
と、そんな二人に、桜えびの美味しさをもっと伝えたいという石川さんのおすすめがあるという。
地元で旅館を営む、松永さんに教わりながら作ったのが、桜えびの沖上がり。
豆腐、わけぎ、ひげをとった桜えびをちょっとあまめの割下でひと煮立ちさせた、漁で冷えた体も温まる一品に。
ご飯の上に贅沢にかけていただく。
「めしゃくちゃうまいですね!」「味付けとわけぎと豆腐に、桜えびの味が全然負けてない。美味しい!」
そして漁解禁から一ヵ月。ひと網で68箱獲れた日も…
このあと豊漁に転じてくれることを願って、今年の初物を皆様も是非!