新宿DASH ~アナグマ~
343日間の巨大プロジェクト、始まりは2年前。
東京都庁からわずか3㎞、大学屋上のDASHのベース基地に、岸が初めてやって来た2020年7月のこと。
太一が岸を連れて行ったのは、ベース基地からわずか420mの所にある鎌倉時代から続くお寺、「真言宗豊山派 薬王院」。そこに6年に渡って追いかけ続けていたのが…「タヌキですか?」
タヌキの巣穴前に設置していたカメラの映像を確認すると、60cm程のタヌキが3匹も!おそらく兄弟。
60㎝のタヌキが3匹も入るほどの大きい穴だが、タヌキは深い穴を掘る事はできない。では、一体誰が巣穴を?
「妖怪・魔魅(マミ)です」と川上先生。
街頭もなく、夜は真っ暗闇の江戸時代。タヌキなどの野生動物たちは、人を驚かす不気味なイメージとして全国各地で妖怪に例えられてきた、中でも、ひっそりと穴の中に住み鋭い爪を持つ妖怪・魔魅(マミ)は、夜な夜な男をたぶらかす“魔性の魅力"を合わせ持つことから、その名がついた。
そのモデルとなった生き物は、かつては新宿にもいたが、戦後の昭和20年以降、絶滅してしまい、妖怪・魔魅がかつて掘った巣穴だけが残ったと思われる。しかし…「おそらく東京23区外までは戻ってきているかもしれない」
「それは探さないとダメだな」「見たいですね“魔魅(マミ)"とやらを」
そして、2021年4月。魔魅(マミ)の専門家がいるという事で3人がやって来たのは、新宿駅から京王線特急で25分の府中駅から、歩いて15分の所にある東京農工大学。
東京ドームおよそ6個分の広大な敷地で、植物や生き物について学ぶことができる。
「このキャンパスの中にマミちゃんが定住している」と話すのは、自身も農工大の学生だった頃から、マミちゃんを追い続けること33年の金子弥生先生。国内における、マミちゃん研究の第一人者。
そんな金子先生に案内されてやって来たのは、大学の敷地の隅にある、テニスコート約2面分の雑木林。
しかし、すぐ脇を車が走り、人通りの多い住宅街に囲まれている。この場所に、妖怪マミは本当にいるのか!?
大学の中でも金子先生など限られた人しか入れないその雑木林を、今回、研究のために特別に許可をいただき、太一、岸、金子先生という最少人数で調査。すると、岸が草むらに隠れた巣穴を発見!
金子先生も「すごい良い巣穴だ」というその穴は、新宿・薬王院で見つけた巣穴と形や大きさがそっくり。
「こんな所に巣作る?」と太一。なにしろその巣があったのは、道路からわずか3mの場所…。
巣穴を見つけてからわずか3分だが…「匂いに敏感なので人が来たのに気付いてる」
マミは夜行性。これからの時間活発に行動するというので、巣穴の前にカメラを設置して、様子を観察する事に。
日没後、20m離れた場所で観察を開始するが、マミが巣穴から出てくる気配は一切ナシ。「果てしない挑戦だね…」
と、30分後、巣穴の中からこちらを覗くように目が光った!しかし、警戒しているのか巣穴から出て来ず。
その姿を見るまでは帰れない。そんな長丁場の張り込みのために、太一と岸が作って来たのが、「屋上ピー」。
醤油味とピリッとした辛みのアラレにピーナッツを合わせた国民の定番お菓子「柿ピー」を、全て屋上産で手作りした。マミちゃんが姿を表すことを期待しつつ、皆でポリポリと頂く。「めっちゃ美味しい」
「屋上ピー」を食べながら観察を続けたが、結局この日マミちゃんは姿を見せてくれず、唯一確認できたのはマミちゃんの鋭い眼光だけだった。
そして翌日からスタッフが3日ごとにバッテリーとカードを取り替え、何日も繰り返し、3か月もの月日が…。
再び、マミちゃんの巣穴を見に太一たちがやってきたが…「巣穴埋まってません?」
確かに3か月前はあった、横幅40㎝ほどの穴が、完全に埋まってなくなっていた。
一体何があったのか?3か月分の定点カメラの映像を確認してみる事に。
前回ロケ終了後から、3時間。人の気配がなくなったのを見計らったのか…「あ!出てきてない!?」
マミちゃんの巣と思われる穴から出て来たのは、体や顔の形などからタヌキと思われるが、暗くてその姿をハッキリと確認することができない。その翌日のデータを見てみると…「タヌキだ!」
しかも、マミちゃんの巣穴に棲むのはタヌキだけではなく、ネズミも。
そう、マミちゃんが掘った巣穴は、まるで、「シェアハウスだ。最近流行の」
「これ面白いよ。16話まで続くよ」と太一が言うように、この後、まるで連続ドラマのような展開に。
そして、第4話目は、別の日の夜。とうとうマミちゃんの正体が明らかに!「超カワイくない!?」「これが噂のマミちゃんですね!」
かつては新宿にも生息しており、その鋭い爪と、夜な夜な男をたぶらかす姿から、「妖怪・魔魅(マミ)」と言われていた生き物。その正体は?「アナグマですね」
正式名称はニホンアナグマ。全国各地でマミやササグマなど様々な呼び名があるが、狢(ムジナ)とも呼ばれ、タヌキと同じ巣に棲み、人に化けて悪さをする事から「同じ穴の狢」ということわざも。
だが、都市化により東京23区では絶滅。緑がまだ残る北多摩地域でも、準絶滅危惧種に。
その3日後を捉えた第5話では、そんな貴重なマミちゃんの昼間の姿が!金子先生によると大きさからマミちゃんはメスで、アナグマの特徴でもある穴を掘るための長い爪がばっちりと。
その巣穴は、深さ約4m、部屋の数は50室に及ぶことも。中には、寝室やトイレ、子ども部屋など様々な部屋が。
そんな巣作りの様子は、第6話・第7話で。
巣穴から落ち葉などをかき出して外に出したかと思えば、今度は新しい別の落ち葉を集めて巣穴の中へ。
アナグマは、寝室に敷く落ち葉を雨が降るたびに交換するほどキレイ好き。
そんなマミちゃんのドラマを観続けていくうちに「ちょっとマミちゃんに恋してるかも」と早くもハマり気味の太一。
そんなマミちゃんの物語は中盤戦へ。
冬毛が抜けて夏毛へ生え変わって細身になったマミちゃんを観ていると、専門家の金子先生も驚く行動に!「なんだ?おしっこ?」
マミちゃんが、後ろ片足を上げておしっこを!「これは珍しい。撮れたの初めてかもしれない、学会報告レベル」
おしっこをわざわざ巣の近くで行う理由は、5月はアナグマの恋の季節であり、フェロモンが含まれているおしっこをすることで、遠くにいるオスにアピールしていると考えられる。「ラブストーリーが!」
落ち葉などで寝室を作り、オスを呼ぶためにアピールをする。全て、自らの結婚準備のため!
第11話目には、恋の予感が。マミちゃんに近付いてきたのは、オスのアナグマ。
しかも、普通なら出会ってすぐは威嚇して仲良くはならないが、すでに顔見知りの様子。つまり…
「もう出会ってたの?俺らが知らなかっただけなんだ」「マジでこのドラマ面白い」
互いに毛づくろいをするグルーミングをしている事から、すでに仲が良いと思われ「カップルになってるのかな」
しかし、まだ巣穴の外で会っている事から同棲はしていない様子。
東京府中アナグマ・ラブストーリー。オスの名は「ユウタ」に決定。
そして、第12話には、ユウタの猛烈なアピールが!
巣穴の前でイチャイチャするマミちゃんとユウタの姿が。「仲がいいなあ~」
すると、ユウタがマミちゃんを噛みだした!これは交尾前行動と呼ばれ、交尾に導くための行動と言われる。
ユウタが少し強引に行き過ぎたか、マミちゃんは巣穴の中へ…
「デートを繰り返さないといけないのに、ユウタは慌てちゃった」「こういう失敗で恋愛を知っていくんですね」
と、すっかりアナグマ・ラブストーリーにハマった太一は「ライバル来てほしい。ユウタのライバル、シゲル」
すると、この後の第14話で、太一の理想の展開に!
マミちゃんと一緒にいるのは、ユウタではなく、別のオスのアナグマ!つまり「シゲルだ!来ちゃった!」
「これマジでドラマ化できますよ」と興奮気味の岸。恋のライバルが出現し、物語はラスト2話。
そして第15話では、マミちゃんを巡るユウタとシゲルの恋の結末が…。
翌日、マミちゃんの巣穴に入っていったのはシゲル。そして、強引にマミちゃんを誘うシゲルの姿が。
マミちゃんとシゲルが巣穴に入っていくと、それを知ったか知らずか、ユウタが巣穴のすぐ横に来ていたものの、中には入らず。「シゲルの存在を知ってるのかな?」
そして、ユウタが立ち去ると、巣穴からシゲルが顔を出し、シゲルの跡を追うように後ろからマミちゃんが…。
「あー!切なすぎる」
東京府中アナグ・マラブストーリー、マミちゃんを争う三角関係は、シゲルに軍配が。
そして、最終回の第16話。まさかの展開が。巣穴から出てきたのは小さいタヌキ。
タヌキが出て行ったあと、姿を現したシゲルが、なんと巣穴を埋め始めた!
再びタヌキが戻って来ると、あったはずの巣穴が無く、困惑した様子。戻ってきたタヌキは計4匹。
「タヌキは穴を掘るのが上手じゃないから、埋まった穴を掘り起こせない。」「もしかしたら、マミちゃんは妊娠してるかも」金子先生によると、出産に集中するために、巣を整理した可能性があるという。
アナグマが掘った巣穴の中で、タヌキやネズミなどが生活していたが、出産準備のため、他の動物が入って来ないよう、その入り口となる玄関を埋めたと思われる。
でも、タヌキの気持ちになってみると「こんな急に家なくなるのやだな…」
この後、アナグマは秋の終わりごろから冬眠に入り、春になると出産する。つまり「最終回じゃなかったんだ」
「この後どうなるんだろう?」「season2が始まるんだよ」
そして、次回、東京府中アナグマ・ラブストーリー完結!
そこには予想だにしない、衝撃の結末が…!