2005年07月19日
新規VOD事業「第2日テレ(仮)」について 記者会見要旨
1.事業計画について
司 会:日本テレビは、ビデオ・オン・デマンド事業に本格的に参入いたします。今回の事業計画とそのねらいについて、代表取締役社長執行役員久保伸太郎がご説明いたします。
久保伸太郎社長:私ども日本テレビでは、かねてからネット配信、ビデオ・オン・デマンド(以下VOD)のネット配信事業に興味を持ちまして、といっても相当古くからですが、ようやくそのインフラも環境が整ってきたのではないかという経営判断のもとに、本日の常勤取締役会で参入を決定いたしました。サービス開始の時期は、10月をメドに予定しており、原則有料で臨みたいと思います。
私どもとしては、かなり以前から、例えばキャリアのNTT東日本さんとB-BATという会社をつくるとか、あるいはトランスコスモスさんという全くの異業種と組んで、インターネット事業を独立させて、フォアキャスト・コミュニケーションズという会社をつくるとか、様々なブロードバンド環境の発展を見越して備え、いろいろ取り組んできており、このたびこうした新規事業をやってみようと決心しました。
司 会:続いて、事業統括する責任者としてメディア戦略局長(兼)コンテンツ事業局長高田真治から事業の内容についてさらに詳しくご説明いたします。
高田真治局長:具体的な事業モデルとしましては、有料コンテンツ配信と、広告収入の事業を考えています。この第2日本テレビ(仮)への入会は、無料です。入会後、有料コンテンツにつきましては、コンテンツ単位で配信しますが、1コンテンツの料金については、今後いろいろなところで議論して詰めたいと思っています。
配信方式は、ストリーミング方式です。スタート時のコンテンツは、鋭意ラインナップを揃えており、バラエティ、あるいはショートドキュメント、それから最新のニュースが流れるニュースパッケージなども提供していきたいと思っています。
コンテンツの長さにつきましては、従来のいわゆる番組単位で配信をするという形ではなくて、やはりVODのユーザーのニーズに合った形での長さ、あるいは内容を提供していきたいと思っています。この事業の窓口は、コンテンツ事業推進部、実務の責任者は、コンテンツ事業局次長土屋敏男です。
次に、広告モデルについてですが、地上波での広告収入とは違った形での展開になると考えています。会員さんの端末からは、ログインするときに、いわゆる個人情報には相当しない範囲内での属性を入力していただく。性別とか年齢とか居住エリアなどですが、この属性や視聴状況等をスポンサー各社に提示しますと、マーケティングデータとして必要なデータとして利用していただける。これによって、スポンサー各社から見ますと、商品のイメージにふさわしいコンテンツを選べるメリットですとか、あるいはストリーミング数を指定してCMを流せるという可能性ができてくる。あるいは視聴者の属性を指定してCMを流すことができる。こういったことでターゲットにピンポイントで訴求する効果的なCM展開が可能になるということです。我々としては、とにかくたくさんのユーザーに来ていただけるサービスを提供して、それによって有料収入もさることながら、広告収入も獲得していきたいと考えています。
私どもが行いたいVODサービスは、従来のいわゆる番組を提供していくという考え方ではなく、新たにVOD用のコンテンツをクリエイティブしていくというのが基本です。コンテンツの内容につきまして、コンテンツ事業局次長土屋敏男から詳細を説明致します。
2.提供される映像コンテンツについて
土屋敏男局次長:私はこの映像コンテンツの商店街と定義づけております。第2日本テレビという名前を仮につけていますが、これが第2日本テレビという映像コンテンツ商店街のトップページのイメージです。
まずこの絵を描くところに至った経緯を簡単にご説明をさせていただくと、2年前にコンテンツ事業推進部長になったときに、コンテンツとは一体何だろうというところから、考え始めました。そして、私が一応たどりついた結論は、「映像コンテンツとは、人の心を動かすもの」との思いです。
そこからこの商店街の構想が出てきました。手前が商店街の広場です。喜通り、怒通り、哀通り、楽通り、つまり喜怒哀楽。例えばむしゃくしゃしたからちょっと笑いたいな、ひと笑いしたいなとか、例えばちょっと悲しいことがあった、こんなときに一層悲しいものを見て、泣きたいなということのために映像コンテンツはあるのではないかと。もちろん、キラーコンテンツと呼ばれ、たくさんのアクセスをよんで、広告価値を得るということは、二次的にはありますが、映像コンテンツを長くつくってきた者としては、やはり人の心を動かすということ、そのために何があるのか、と考えることがスタート地点になりました。 こういった形でコンテンツをジャンル分けして、笑いたいのか、怒りたいのか・・・というのはあまりないかもしれませんが、泣きたいのか、それとも楽しみたいのか、という感情に分けるというところが、コンテンツ屋として、コンテンツを長くつくってきた人間としての発想と思っています。ですから、この商店街の商店街会長を私がやらせていただこうかと思っています。
商店街ですから、ここにバス便や、電車便を通していただく、それはつまり、いろいろな配信路であり、たくさんの道がこの街につながってくれると嬉しいです。私どもがつくるのは、あくまでも映像コンテンツの商店街であり、例えば、この「喜通り」ですが、『電波少年』などを考えています。1コンテンツの長さは、3分から15分を予定しています。番組のパッケージである30分とか1時間ではなく、いわゆる、テレビでいうところのサブ出し(※番組内のコーナーで流すVTR)の長さですね。例えばアポなしで、どこかに行ったとか、例えばワニが本当に強いのか確かめに行ったり、『電波少年』では過去にいろいろなことをやっています。そういったものを1つ見るというのが、3分から15分といった長さなのかなと。それがひと笑いという単位になるのではないかと考えています。
ただ、いわゆるアーカイブだけではなく、新しく笑えるものを開発してつくっていくことは当然考えています。私だけでなく、日本テレビのいろいろなクリエイターたちが送り出す、笑わせるコンテンツが、この喜通りにはたくさん並んでいると思いますし、もちろん世界中の、社外の様々なクリエイターたちに、広く呼びかけてご協力いただきたいと思っています。
「怒通り」というのは、一体何なのか。例えば、『報道特捜プロジェクト』、様々な企画取材がありますが、例えば"イマイ記者の振り込め詐欺業者への追求"、こういったものが通りに並べることができるのではないかと考えています。
「哀通り」は、基本的には泣けるものということで、例えば『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』という番組がありましたが、その中のシリーズにあった"ドーバー海峡横断部"、チームとしてドーバー海峡を泳いで渡ったという企画です。こういった、感動の涙のようなものも18万本あるライブラリーから見つけられるのではないかと思います。哀通りというのは、泣ける、泣きたいときにこの通りに入ってみたら、そんな気持ちになれますよという通りです。
「楽通り」ですが、これは非常に楽しいということですから、多岐にわたっていると思います。例えば『伊東家の食卓』、番組で紹介した裏技をパッケージでお出しすることができると思いますし、これこそ日本テレビに何百人もいるクリエイターたちが、今の番組、それからVODならではのオリジナル、そして過去の番組、いろいろなところからビデオを提供していくことができるかと思っています。
さらにこの広場には、ニュース速報版があります。報道局と連携し、ニュースの素材がクリックすると出ていくという形を考えています。ニュースの映像を項目で分類したものであったり、きょうの最新ニュースのパッケージであったり、これはテレビ局ならではの大きな武器ではないかと思っています。今後、報道と相談をして新しい形を模索していきたいと思っています。
この商店街はトップページですから、街に入って見るためには、会員になっていただきたいと思います。左側の掲示板には、会員登録のフォーマットが書いてあったり、例えばブログのようなものも置きたいですね。商店街の会長というのは、一応想定で私ですが、商店街の会長として、ユーザーの皆さんとブログでやりとりをしていくようなことを、この掲示板でやっていきたいと思っています。テレビではなかなかできない、いわゆる双方向性を生かした取り組みをぜひやっていきたいなと思っています。簡単に説明をさせていただきました。
3.質疑応答
記者
配信するコンテンツの本数は?1本当たりの値段のメドは?
高田局長:本数については、現時点で具体的に何本というところまではいっていません。これからひとつひとつ長さも含めて検討していきます。
土屋局次長:社内の制作現場のクリエイターたちから、それだったらこんなものができる、こんなものがあるよ、というアイデアをたくさん出してもらうことが、これからのコンテンツの増加につながると思っています。
高田局長:値段については、とにかく我々としては、まずこの商店街にたくさん来ていただくというのが大切ですので、最初はかなり障壁の低い形での料金設定にしたいなと考えています。当初段階では、無料のインセンティブをつけるとか、そういった工夫をしていきたい。そういう中で、最終的なコンテンツのクオリティー、あるいは数をにらみながら料金は決めていきたいと考えています。
記者
1本100円ということか?
高田局長:100円もひとつの目安だと思いますし、もう少し安くてもいいのもあれば、もう少し上でもいいものがある。若干幅を持った考え方をしています。
記者
収支の見通しは?黒字化のメドは?
高田局長:黒字化のメドについては、これもいろいろなシミュレーションがありますが、まずできるだけ早く会員100万人を突破するというのが第一目標です。可能な限り早期に獲得するために、地上波の番組と連動しながら、会員になっていただくことを促進していきたいと思っています。具体的な数字は現段階ではなかなか申し上げにくいところです。
記者
地上波と連動とは、どういうことをするのですか?
土屋局次長:今、わが社では「GO!SHiODOMEジャンボリー」というイベントをやっていますが、これと同じように、いろいろな形で地上波と連動ができると思っています。また、「第2日本テレビ」という地上波での番組をつくりたいと、今編成と相談中です。いろいろな形でトライしていこうと思っています。
記者
第2日本テレビと地上波の役割分担は?
久保社長:地上波が引き続き、私ども日本テレビにとっての収益の主たる源泉であるということは、将来も変わらないと思っています。このネット配信事業に関しましては、当初のスタートはあくまでも補完という位置づけです。しかし、伝送手段や圧縮技術その他の技術革新、あるいはブロードバンド環境のインフラ整備も非常に早いスピードで進んでいます。将来は主たる収益の源泉たる地上波を追い抜くというようなことは、私はなかなか想像しにくいとは思っていますけれども、少なくともスタート時点の補完以上の地位を占めるという可能性は秘めているものだと思っています。
記者
「第2日本テレビ」のサイトは、日テレホームページの中になるのか?
視聴手段はパソコンモニターか?決済手段は?
高田局長:サイトは、まず第1には、日本テレビのホームページがあって、そこから第2日本テレビに入っていくというのが基本です。視聴手段は、パソコンの画面です。
決済手段などにつきましては、これからいろいろなところと提携関係を組んでいきたいと思いますが、私どものグループ会社フォアキャスト・コミュニケーションズやB-BATにはこれまでにさまざまなノウハウの蓄積があるので活用していきたい。これらのグループ会社で行える部分と、外部の企業と組んで行うことと、両方でシステム全体を構築したいと考えています。
記者
スタート時には、ネット配信専用のコンテンツを用意するのか?喜怒哀楽4つのジャンルのコンテンツの配分は?
土屋局次長:ここでしか見られないものという要求に応えたオリジナル・コンテンツを用意したいと思っています。コンテンツの重点については、私のやってきたことにもよるのですが、やはり笑いを重点的にやりたいと思っています。寝る前にひと笑いしたいということもあるのではないでしょうか。
記者
系列ネット局の反応は?ジャイアンツ戦について、何か可能性は?
高田局長:ニュースについては、私どもNNNという全国の放送局とネットワークを組んでいますが、まだ具体的にいろいろな協議をしたというところまでいっていません。しかし、当然これをやるにあたっては、各局さんのご理解とご支援が必要です。そういう意味では、この商店街は、単に東京汐留の商店街だけではなくて、私どもがネットワーク結んでいる全国各局の商店街ともつながる仕組みがつくれると思っていますので、これからネット局各局とは、十分話し合って、一緒に展開できればと考えています。
久保社長:ジャイアンツ戦については、もちろんこれは権利を持っているのは、巨人軍でありその業務委託を受けているのは読売新聞社ですから、これからお話し合いをすることですが、これまでの経緯から言うと、ジャイアンツ戦をいろいろな露出の機会を通じて、できるだけ大勢の方に見ていただこうという基本的な考え方は一致してきたと思っています。したがって、例えばCS放送の中で、あるいはモバイル放送、ここにも私どもの映像が配信されて見られるようになっています。したがって、基本的には露出する機会を増やすということで話を巨人軍及び読売新聞社と進めたいと思っています。例えば、イースタンの試合等も、G+という、私どものCSで放送していますが、そういうものはこの対象になるのか、ならないのかとか、特定のスターに絞った追いかけとか、そういうものができるのか、できないか、等々についても、また検討していきたいと思います。私どもの姿勢は基本的にはそういうことです。露出の仕方等について、権利をどのように与えていくかは最終的には先方が判断されることで、現時点では、お話はしていきたいと思っています。
記者
地上波の視聴者がネットのほうに流れテレビを見なくなってしまう懸念はないか?第2日本テレビで地上波の番組をつくる、というが、ネットの世界とテレビをつなぐ具体的なイメージは?
久保社長:私たちテレビ局は、24時間の時間を買っていただくという商売です。国民のテレビ視聴調査等々を見ても、この10年間地上波の視聴時間ほとんど変わりません。そうした中で、携帯電話をはじめ、あるいはパソコンその他、伝送手段の発達によって、動画映像、映像媒体が非常に増えてきたということであれば、我々50年間映像媒体、動画配信の仕事をしてきた人間としては、いつでも、どこでもニュースや天気予報が見られるというような形で、視聴者の皆さまを追いかけていくこと。ただ一方的に電波を送り出して見ていただくというビジネスから、追いかけていく。それを追求していくというのは、まさに正道であり、地上波の時間帯を食うということではなくて、それにプラスアルファしていくということの1つだと思います。
高田局長:私どもは放送を見る人も、ブロードバンドでインターネットをつないで楽しむ人たちも、全く同じだと思います。この2つが別の物という感覚ではなくて、両方のサービスを楽しんでいる、あるいは必要としている方々が増えていると思います。
記者
一連のライブドア問題の影響は?
久保社長:通信の世界の方々と何か一緒にできないかということについては、ブロードバンドという文字が登場した頃から、日本テレビとしては、相当意欲的にいろいろ取り組みをしてきたつもりです。したがって、あの一件があって、私どもとして事業を急いだということではありません。B-BATという会社をつくったり、フォアキャスト・コミュニケーションズという会社を立ち上げた当時、あるいはその前後、それから幾度となく社内でネットとの融合という言葉が適切かどうか・・・何かいろいろ一緒にやってみたいというような提案、試み、あるいは私的なささやきなどが、社内にはたくさんありました。
実情を申し上げますと、まだ環境が整っていなかった。その環境というのは、主としてインフラの環境ですね。ということで、特にこういうアイデアを考えてきた現場の諸君、特にネット配信等に興味を持っている若い諸君からは、なかなか踏み切ってくれないと、あるいは不満があったかもしれませんが、ひとえにブロードバンド環境ですね。やはりインフラの環境が相当進んできたということと、技術の進歩も相当早いということで、この辺が1つのタイミングではないかと決断したということです。
(了)