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カズレーザーと学ぶ。

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『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは『記憶』!なぜ人は思い出せたり忘れたりするのか?最新研究により記憶に関する新事実が続々と明らかに!謎に満ちた記憶の正体に迫る!

2023.02.21 公開

なぜ人は思い出せたり忘れたりするのか?
最新研究により記憶に関する新事実が続々と明らかに!
謎に満ちた記憶の正体に迫る!

『忘れるものと忘れないものの違いは? 記憶を食べる“グリア細胞”』

人間の記憶は、少なく見積もっておよそ140億個の神経細胞が1万個ほどのシナプスでそれぞれつながって形成されているものであり、数値にすると、少なく見積もっておよそ17.5 テラバイトほど、と名古屋大学教授で脳神経学者の澤田誠は語る。これは、計算の仕方には色々あるものの、ざっと地上波テレビ番組を録画するとおよそ143日分に換算される。

実際、脳が記憶をする時というのは、視覚、聴覚などを通じて、脳の海馬という場所に短期記憶として蓄えられるが、この短期記憶は数分〜数日で消えてしまうものである。これが俗に“記憶”として扱われる長期記憶に置き換えられるには、大脳皮質の方に移し替えられる必要があるといわれている。

長期記憶には主に以下の3種類
1.経験や出来事など個人の思い出の「エピソード記憶」
2.自転車の乗り方など体で覚えた「手続き記憶」
3.言葉の意味、数式などの「意味記憶」

この中でも「意味記憶」は覚えづらく、印象に残った思い出や出来事など、ストーリーのある「エピソード記憶」は残りやすいという。

その理由を、澤田はこう明かした。人間は、記憶を選別し必要なものだけを長期記憶に保存し直す“記憶の固定化”を睡眠中に行っており、自分や子孫が生き残るのに必要なものが優先されるとされている。その基準として、喜怒哀楽(感情)が大きく動いたものを重要と脳は判断しているからである。

感情が揺さぶられることで脳の辺縁系と呼ばれる部分が活性化されるが、うれしい情報だとドーパミンが分泌され神経細胞が活性する。また神経細胞は、強い刺激が来ると持っている神経伝達物をたくさん出すため、これが続くとシナプスが大きくなったりすることも。そうなると、通常の弱い刺激が来ても強い刺激が来た時のようにたくさんの伝達物質を出す。これが記憶とか学習のメカニズムであり、「長期増強」と呼ばれている現象。いわば、感情がどれくらい動くかによって記憶の重み付けがなされているというわけである。

試験勉強などで記憶する際、疑似的にでも“うれしい”と思うことは重要であるとも語った。ただ同じ感情でも「怖い」感情の方が記憶に残りやすいと付け加えた。

その後、脳内で不必要な記憶を保管しているシナプスを食べちゃう“ミクログリア”という細胞について紹介。脳は神経細胞以外にもその90%をグリア細胞と呼ばれる細胞で満たされている。中でもミクログリアは、脳が生きる上で得な記憶を判断し、損な記憶を食べて消すことで、脳の神経回路を整理し必要な記憶を保護している。不要とされるシナプスでは、細胞のゴミや不純物が生まれるためそれを探知して削除しているのではと考えられているようである。

また、“つらい記憶”は脳にストレスになるためミクログリアがそれらを食べちゃうこともあるとした。そして、ミクログリアによる記憶の整理を積み重ね、蓄積された記憶を “マインドセット”と呼び、今までの経験、記憶をしてきたことで、脳の中に仮想世界のようなものが作られるという。その1人1人違う、マインドセットが、諸々の判断基準や反応につながるわけで、それが人格や性格につながっていくと明かした。

毎日のルーティーン、同じことの繰り返しでも、相手によって反応が変わったり刺激につながる。散歩をしていても四季の違いからわかる環境の変化に注目し、印象に残るようにするだけで、記憶力の増大になると語った。

名古屋大学教授で脳神経学者・澤田誠

 

『“嫌な記憶”も書き換え可能!? 驚異の技術“オプトジェネティクス”』

最初に、名前は覚えてないけど、どこへ行ったとかは覚えているという現象に関して、東京大学 准教授の奥山輝大はこのように解説した。

海馬が得意としているのは、エピソード記憶だが、“いつ”“どこで”といった時間・空間の記憶と、“誰”というような人の記憶は、海馬でも別の部分で蓄えられていることがわかってきたという。

さらに、これらを応用することで、記憶を人為的に思い出させたりとか、消したりとか、書き換えたりとかということも一部で可能になり、感情さえもコントロールできると話した。

それが可能になったのは、“オプトジェネティクス”という新技術が大きく関係しているという。脳には、いろんな働きをしている神経細胞が集まっているが、これまで、どの神経細胞がどの記憶を保持しているかは、わかっていなかった。しかし“オプトジェネティクス”という技術により、それがわかるようになってきたという。

ここで、マウスを使った実験を紹介。
マウスも人間と同じように“友達”を覚えることができる。実験によると、マウスは、“友達マウス”と“知らないマウス”がいた場合には、“知らないマウス”に積極的に近づいていくという性質がある。それにより、マウスは“友達かどうか”を確認しているという。マウスの脳内の神経細胞を見てみると、マウスが友達だと認識したタイミングで、神経細胞の特定の場所が光り、その場所が活発に働いていることがわかった。

友達を認識する脳の場所を可視化した、この実験に続いて、海馬の形を1本のバナナに喩え、上の方には、時間や空間、下の方に友達(人物)の記憶が蓄えられていると解説した。

そして、神経細胞の操作について“チャネルロドプシン”というタンパク質の働きが大きく関わっていると語った。“チャネルロドプシン”は細胞の表面で機能する光を当てると開くゲートのようなもので、光を照射してゲートが開いたタイミングで細胞を活動させるためのプラスのイオンが流れ込み活発に働くと、その仕組みを明かした。神経細胞に光を当てることでコントロールできる、この技術が“オプトジェネティクス”である。

もし時が経って忘れてしまっても、記録していた神経細胞に光を当てることでその人を思い出すことが可能になるという。

そして、記憶を思い起こさせるだけでなく、記憶の書き換えも可能になると語った。
マウスを使った実験を例に挙げ、電気ショックを与えたマウスに、オプトジェネティクスでその恐怖の思い出を思い起こさせると同時に“異性に会って楽しかったな”という記憶を付け加えると、いつの間にか“電気ショックの恐怖の記憶”を“楽しかったという記憶”に上書きできるという。

これを人間で考えた場合、倫理的な部分は別にして、あらゆるネガティブな感情を消したり、多幸感を上書きするのが果たして本当に幸せなのか? という問題や、特定の神経細胞を操作することで、変えたい記憶以外の他の影響も出る可能性もあるとのこと。

ただ、早期のアルツハイマーには、オプトジェネティクスによって、長期増強などで記憶を強くしたりすることで、平常の記憶が取り戻せることもあり、将来的に治療に活かせる可能性があるという。

東京大学准教授・奥山輝大

 

『意識・記憶・人格 ブレインテックから探る  “我々は何者か?”』

以前番組に出演し“意識のアップロード”の実現について講義をした、東京大学准教授、脳神経学者の渡邉正峰がいうには、「本当の本当は“意識を解き明かしたい”」とのこと。

まず、癲癇(てんかん)の治療のため、内側側頭葉(ないそくそくとうよう)を手術で削除した男性の事例を紹介。切除した内側側頭葉には記憶を司る海馬の一部が含まれていたため、以前の記憶は残っていたが、新しい「エピソード記憶」ができなくなるということが起きた。ただ、新しい記憶は残らないにも関わらず、鏡越しに見ながら難解な図を書くという実験を実施したところ、初日よりも2日目の方が上手くなってるという結果が出た。このことから「手続き記憶」は、脳のまた別の部分が担っていることがわかった。

他にもサブリミナル効果を応用した実験や、睡眠学習を例に挙げ、意識と記憶は別であると展開した。

続けて、ロジャー・スペリーという神経科学者により行われたノーベル生理学・医学賞を取った“分離脳”の研究も紹介。癲癇治療のため、左右の脳をつなぐ脳梁(のうりょう)という部分を切った人に、右半身と左半身がまるで別人格かのようにバラバラの動きをする異常行動が見られたという。これは右脳、左脳にそれぞれ意識が宿るために起こるというのが、スペリーによって証明されている。

このことから、右脳と左脳が神経繊維でつながれていることで1つの意識が成立しているとも考えられており、この要領で生体脳をコンピューターと接続できれば“意識のアップロード”も可能になるとし、まだ研究は必要だが“10年くらいでできれば”と語った。

ただ、記憶を移し替えても、コンピューターの記憶と自分や子孫の生き残りを考える人間の記憶とは、その目的も違う。例えば人は自分や子孫が生き残るために記憶を使う。しかし、コンピューターは生き残りを考えないので、機械脳は“記憶”を活用できないのではないか、神経細胞は一対多であり複雑に影響しあっている、と澤田誠が“意識のアップロード構想”に異を唱える場面も見られた。

東京大学准教授で脳神経学者・渡邉正峰

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