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カズレーザーと学ぶ。

毎週火曜よる10時00分〜11時00分 放送

『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは『ストレス』

2023.05.09 公開

自覚なく体をむしばむ『マイクロストレス』、『うつ病』を引き起こすヘルペスの正体とそのメカニズム、『睡眠時間』と躁うつ(そううつ)の関係、などストレスにまつわる事象を徹底研究!

 

『自覚なく心むしばむマイクロストレスの正体』

自覚できるような大きいストレスではなく、自分でも気づかないような繊細なストレスを『マイクロストレス』と呼び、この蓄積によってうつ病や心の病気になってしまうと慶應義塾大学 満倉靖恵教授は解説する。

ストレスを感じると、脳の中心にある感情の処理に関わる扁桃体(へんとうたい)に信号が届き、ここから2つの経路が存在する。1つは、脳幹に伝わり、セロトニンの分泌が減ることでイライラや仕事への意欲低下などの精神的な症状につながるという経路。そして、もう1つは、脳下垂体にストレスが伝わることでその原因と戦うためにコルチゾールというホルモンの分泌を増加させ、血圧、心拍数などが増え、それによって最終的に高血圧や、糖尿病につながるという経路。これらを引き起こす根源は、マイクロストレスが原因とされている。

スタジオには、マイクロストレスをグラフで可視化する装置、『感性アナライザ』が登場。ヘッドバンドを装着し前頭葉の微弱な脳波をキャッチすることで、コルチゾールの値をリアルタイムで観測するという仕組み。実際に装着してもらい1日を過ごす実験では、本を読んできつい体勢になるだけでその値は上がり、逆にふと睡眠に入る、いわば寝落ちした状態だったり、お香を焚いたりすることでその値が減少することも確認できた。

現在、コルチゾールの値を下げるにおいや手触りの開発も進んでおり、最終的には電気信号で感情をコントロールすることも可能に。感情のコントロールといっても、あくまでうつ病患者や心が苦しい人に対して電気刺激を与えることでの治療であって、寿命に関連したり、越権行為にまでは及ばない範囲と喚起した。そして2~3年後にはこういったシステムが確立されうると解説した。

慶應義塾大学
教授 満倉靖恵

 

『ヘルペスがうつ病の引き金に?うつ病とウイルスの関係とは』

名古屋大学大学院 大平英樹教授は、うつ病が心の病気ではなく、脳の病気であると解説し、それには日本人の多くが体内に保有しているあるウイルスに原因があると展開した。

スタジオでは、ストレスにより分泌されたコルチゾールの影響で、海馬にダメージを受けた人の脳のMRI画像を健康な人のものと比べて提示。ちなみに、2週間から1ヶ月ほどの試験勉強でも軽度のうつ・脳の萎縮が見られた例もある。
続けてそのメカニズムを解説した。原因のウイルスというのは『ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)』で、乳幼児期の接触により日本人の成人の約100%が感染して常にウイルスを保有している。HHV-6は血液中の細胞やリンパ節、神経系に幅広く潜伏。疲労などの強いストレスを感じるとウイルスが逃げ出そうとし、唾液の中に現れそこから脳の『嗅球』という部分に移り、さらに活性化すると『SITH-1(シスワン)』というタンパク質を生成する。このSITH-1が脳細胞にカルシウムを流入し、その結果、脳細胞が壊れてうつ病が起きるというのが一連の仕組みである。
ただ、全てのうつ病がこのように発症しているわけでなく、セロトニンという神経伝達物質の減少や、真面目な人がなりやすいとか、遺伝の影響など諸説あり詳細は明らかになっていないと付け加えた。ウイルスであれば予防接種やワクチンも理論的には可能だが、ウイルス自体も数年前に発見されたばかりで、現在は開発されていない。現実的に考えると、費用対効果もあり実現は容易でないとのこと。

さらに長い間うつ病が続いている人についてはその状況をこう解説した。HHV-6はあくまでうつ病の引き金で、うつ病の病状を維持するものではない。日頃から強いストレスが加わり続けることで、脳の働きが低下し、体内でストレスを生み出しているような状態であるという。本来、ストレスを感じると身を守るために分泌されるコルチゾールだが、その量が多過ぎるとその分泌を減らす指令が脳から送られる。これを『ネガティブフィードバック』という。しかし、それがうまく機能しないため、コルチゾールが出続け、脳が破壊されてしまう。

また、うつ病は、ストレスが蓄積して暴発してしまうものと、感情の変動性が関係するものがある。例えば一喜一憂による激しい感情の変化は脳に強い負荷がかかり続けてうつ病を招く。そのため、芸能人や人と接する仕事、株式のディーラーなどはうつになりやすい傾向がある。

そして、年齢によってもストレスの受け方は変化し、年齢を重ねることでストレスを上手にコントロールし、うまくやり過ごすこともできるという。ストレス耐性にも役立つこの知識、経験を『結晶性知能』といい、加齢によって高まるが、その反面、加齢によって前頭前野の機能が落ちてくるため、歳をとると、怒りっぽくなったり落ち込みやすくもなるという。なるべく前頭前野機能を落とさずに、「結晶性知能」を伸ばすことが望ましいエイジングの姿ではないかと語った。

また、うつ病と診断されて悪化するケースは少なく、診断を受けて悩みの原因が病気だとわかることでほっとする人が多い。

名古屋大学大学院
教授 大平英樹

 

『寝だめが心を壊す!危険な社会的ジェットラグ』

平日の睡眠不足を補うかのように長時間睡眠をとるいわゆる“寝だめ”が実は、心身に大きなダメージを与えていると、国際医療福祉大学大学院 中田光紀教授は語る。

続けて睡眠時間の中間の時間を『睡眠中央値』と示し、これが平日と休日でズレてしまい、差が生まれることで『社会的ジェットラグ』といういわば“時差ボケ”が起きると解説。この差が大きければ大きいほど体に支障をきたす。また、これにより憂うつな気分になったり落ち込んだりし、最終的に心臓病をもたらす温床にもなると説明した。

人間の睡眠スケジュールは、①いつ眠くなるのか、②どれだけ眠れば回復するのかで決定する。このいずれか、または両方を乱すとストレスになり、コルチゾールが上昇。限界を超えると脳や体にダメージを与えるという。教授は、社会的ジェットラグをなるべく起こさず、休日に睡眠を多めにとるいい方法として、平日の睡眠時間の前後、同じ時間長くすることで睡眠中央値をなるべくずらさないことを勧めた。

コンビニや病院など夜勤がある交代制の時間帯で働く人のケースでは、“正循環”といって、“日勤、準夜勤、休み、夜勤”というサイクルだとリズムがとりやすいと提示した。

また、ストレス学会の理事も務めているという中田教授。ストレスの解消には、緊張と活動を司る交感神経とリラックスの副交感神経がバランス良く働くことが重要とした上で、『ストレッチ』『笑うこと』『泣くこと』の3つを挙げた。筋肉の緊張が起こっていると、どうしても心も緊張するためストレッチにより筋肉と共に心もほぐれるという。そして、笑うことで交感神経が一時的に活性化し、その後、急激に低下するという効果もある。また、眠ること以外に、副交感神経に切り替わる唯一の方法が泣くことで、寝る前に感動の映画などを見ることはより効果的と付け加えた。

また、旅行は『サイコロジカル・ディタッチメント』といって、仕事などから物理的にも心理的にも距離を置くことができるためストレス解消に効果的だと他の教授たちも同意した。

国際医療福祉大学大学院
教授 中田光紀

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