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カズレーザーと学ぶ。

毎週火曜よる10時00分〜11時00分 放送

『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは『遺伝と才能』『エクソソーム』『日本人の体の変化』

2023.01.10 公開

才能を生み出す遺伝と環境の不思議

『収入・恋愛・笑いのセンス…双子研究で分かった遺伝するものしないもの』
慶応義塾大学教授で行動遺伝学者の安藤寿康は、20年にわたり双子の研究をして人間の能力が遺伝か環境かどちらの影響をより大きく受けるか調査してきた。一緒に育った双子と別々に育った双子を比較した研究では、どちらもほぼ同じ類似性が見られ、遺伝の影響を示しているという。性格、学力、運動能力、病気などを調べることによってそれぞれどの程度遺伝の影響が強いかを調べることができる。

パーソナリティのいろんな側面を調査すると50%程度が遺伝の影響を受ける。それが行動に現れ、人生を左右する。収入にも遺伝率が出て、働き盛りと言われる45歳くらいでは60%。若い頃は環境の要素が大きいが、自分の素質や才能をどこで使えるか気がついて収入に結びつくようになると遺伝の要素が強くなる。人間の思考やパーソナリティを作っているのは脳、神経のつながり方で、それらは他人同士では全く違う。しかし双子だと似ている。つまり、遺伝の要素が強い。では、親から授かった以上の才能を発揮できないかというと、そうではない。親が持っている遺伝子のどういう組み合わせが出てくるかはランダムに出てくる。使いきれていない遺伝子もたくさんあり、どの時代、どの文化に生まれたかという出会い、能力を伸ばすのに助けになる人がいて才能を発揮できるという。

慶応義塾大学教授 行動遺伝学者の安藤寿康

 

『禁断の領域!受精卵から才能を予測できるポリジェニックスコア』
大阪大学・データビリティフロンティア機構特任講師の山本奈津子は、膨大な数の他人の遺伝的特徴と比較することで、自分と似た遺伝子を探し、大体の才能が分かるという。

医療の研究・発展のために国民の遺伝子データを収集・保管する組織、バイオバンク。世界にはいくつものバイオバンクがあり、すべて合わせると500万人以上のデータはある。理論的には遺伝子データがあればさまざまな能力が測定できるポリジェニックスコアは医療や健康の分野で今注目されている。例えばガンになった人とそうでない人の遺伝的特徴を比較することで、ガンのポリジェニックスコアを算出できるようになった。これにより自覚症状がなく不意に襲ってくる病気も対策できると期待されている。これを調べるのが遺伝子検査サービス。自分で自分を知るのはその人自身が幸せか決めれば良いことだが、他人が知った時にどうなるか、誰が遺伝子情報を管理するのかということを考えないと危ない世界になってしまうと危惧されている。

大阪大学・データビリティフロンティア機構特任講師の山本奈津子

 

『血液一滴から顔を再現?ゲノムモンタージュ研究から読み解く遺伝子と顔の関係』
世界ではDNAから顔を復元するゲノムモンタージュという技術が進んでいて、アメリカでは実際に犯罪捜査に使われ成果を上げていると、琉球大学大学院医学研究科教授の木村亮介は語る。

ゲノムモンタージュを作成するにはハンディ型の3Dスキャナーで顔の形状を数値化し、数千人分のデータとDNAを照らし合わせることでどの遺伝子が顔のどのパーツに影響を与えるかを調べ、逆にDNAから顔の形状を予測できるようになる。似た顔の人は顔に関する遺伝子の一致率も高い。たまにしか似ている人がいないということは人間の顔が多様化しているということ。人は顔をコミュニケーションツールとして使う生き物で他者の表情から感情を読み取る。社会生活を営む上でみな同じ顔だと区別がつかなくなってしまうため多様化している方が都合はいい。ただ、多様化した進化の過程はまだ分かっていない。

琉球大学大学院医学研究科教授・木村亮介

 

■人生が変わるワンワード

『あらゆる病気を克服する?医療大革命の鍵エクソソーム第2弾』
大阪大学大学院・臨床遺伝子治療学特任准教授の日比野佐和子は、エクソソームでガンの超早期発見が可能だという。

エクソソームは細胞から分泌される顆粒状の物質で細胞間の情報伝達、つまりコミュニケーションツールとして使われ、あらゆる情報が詰まっているので取り出すことで診断ツールとしても13種類のガンの判別に使用されるなど注目されている。

この情報伝達能力と並び、エクソソームにはもう一つ大きな能力がある。間葉系幹細胞、英語の頭文字を取って“MSC”は骨・筋肉・脂肪のような内臓組織や神経系の組織になることができるため、体内の組織を修復・再生する能力があると言われている。このMSCから分泌されるエクソソームに体の組織の修復効果があるということが分かってきた。

このMSCエクソソームを使った治療法が、MSCが多く含まれている脂肪から取り出し培養してさらに体に戻すというもの。体内で損傷している部位からエクソソームが出ているのでMSCが自動的に血管を通って患部に辿り着き、修復のためのエクソソームをさらに分泌して損傷部分を修復する。
その効果は修復できないと言われている脳細胞の損傷である脳梗塞の治療ですでに効果が期待されている。症例の中には投与後30分程度で効果が表れたという報告もされているという。治療以外にも健康な人が使えば筋肉や皮膚の若返り効果も得られ、将来的には100歳でも、見た目が30~40代になれるかもしれないと語った。

しかし、MSC療法には課題もあり、老化とともに再生修復能力が落ちること、細胞の型が一致しないと拒絶反応が起こること、脂肪からの採取という体の負担が挙げられる。これを解決する進化が赤ちゃんのさい帯などの幹細胞が分泌する活性物質を取り出して投与するセルフリーセラピー。中でもエクソソームの中の情報伝達物質を組み合わせて、能力を人工的に付け加えるデザインエクソソームと言われる領域がある。赤ちゃんのさい帯から取るMSCはオールマイティーで活性度が非常に高く、量が豊富で培養しやすい。若返ることで疾患が進むものもあるので慎重に対応しなければいけないが、MSC療法に比べて値段が安く、自由診療で大体5万〜30万で受けられる。再生医療の分野は世界でも日本が一番進んでいるという。

大阪大学大学院・臨床遺伝子治療学特任准教授の日比野佐和子

 

■劇的に変わりゆく現代社会で我々がまだ気づいていない「日本人の意外な変化」とは?

『タイパ・倍速視聴・ながらスマホ 情報大好き日本人を襲う・脳過労』
タイムパフォーマンスの略、「タイパ」という言葉が表しているように日本人は時間の効率を追い求めるように変化していると、早稲田大学教授で脳神経科学者の枝川義邦は語る。

倍速視聴やながらスマホ、5Gなど情報流通の高速化で現代の日本人が1日に浴びる情報量は江戸時代の1年分、平安時代の一生分と言われ、現代人は情報過多なのだが、その影響で約6割が“脳過労”に陥っていると言われている。脳過労とは膨大な情報が脳に流れ込むため、通常ならば処理できるものが、処理が追いつかなくなって脳の働きが低下してしまうような状態。脳過労の症状は記憶力・思考力・判断力の低下、物忘れなど。このためネットショッピングでの衝動買い、感情をコントロールできないなどの問題が起こる。

脳過労の解消法はこまめに休みを入れること。ぼーっとしたり、眠っている時間に脳は別のモードで働いていて、散らかった状況が片付けられるような作用がある。このような脳内を休ませる仕組みをデフォルトモードネットワーク、略して“DMN”と呼ぶ。考えが煮詰まった時に新しいアイデアを生む効果もある。このDMNが働きやすいのはひとりになれる、何もせずぼーっとできる環境。現代人はここにスマホを持ち込んでしまっている。

さらに脳過労と関係があるかもしれない研究があり、5〜18歳の児童・生徒の脳の発達を3年間観察すると、インターネットを利用する頻度が増えるに従って脳の発達が遅れるということが分かった。成長期の子供は特に、情報を処理するために脳が発達していく、情報の種類の多さが重要になる。スマホやタブレットの情報はひとりで完結してしまうことが多い。その後に得た情報についてコミュニケーションを取ることで情報が定着しやすくなり、働きも十分になるという。

早稲田大学教授で脳神経科学者の枝川義邦

 

『マスクを外さない日本人 顔が激変する呼吸の仕方』
これまで1500人以上の子供の歯の歯列矯正を行なってきた歯科医師の山口和巳は、マスク生活で口呼吸が増えていることが問題になっているという。

鼻呼吸と口呼吸では12歳までの子供の場合は顔に大きな変化が出ると言われている。
鼻呼吸では、呼吸することによって鼻腔に圧力がかかり上顎を下に押そうとする。さらに舌が上顎を上に押し上げる。この上下の圧力により上顎は広がっていく。口呼吸の場合は上下の圧力がかかりにくいので顔全体が伸びたような印象になり、上顎骨の成長発育に影響が出る。大人でも口呼吸していると老け顔になるとも言われている。

さらに隠れ予備軍も含めると日本人の子供の80%が口呼吸と言われており、マスク生活でさらに鼻で息をしづらい状況になっている。口呼吸では、顔の形だけでなく、虫歯や歯周病などの病気、さらに最新の研究でIQの上昇の仕方に影響があると言われている。これは、口呼吸をしていると体内に取り込まれる酸素が減って体の中が酸欠状態になってしまうから。口で吸った方が息はたくさん吸えるが、同時にたくさん吐くことで二酸化炭素を吐き出し過ぎてしまう。

通常、取り入れた酸素は血液中のヘモグロビンによって運ばれ、二酸化炭素を使って酸素を切り離すことで各器官に受け渡している。口呼吸によって大量の二酸化炭素が排出されると、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリアに酸素が行き渡らないという“ミトコン酸欠”が起きる。12歳までが脳の細胞と細胞をつなぐシナプスが増えていく時期なので、その脳に酸素の供給が足りなければ成長期の子供に影響が出ると語った。

歯科医師・山口和巳

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