『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは「スマホに爆食いされる現代人の時間」
最近人生が短く感じる人こそ必見!これ以上時間を奪われないための3つの新知識
『現代人は1日が17時間…!?人生を長くする方法』
体感時間の仕組みを研究し、コロナ禍で現代人の体感する人生が短縮されているとするのは、東北大学 薬学部・大学院薬学研究科 佐々木拓哉教授だ。
そもそも体感時間には、人によって違いが生じるが、これは脳の機能が影響しているためだという。同じ時間が経過していても、目から入ってきた情報の記憶量が多いと、人は体感時間が長くなる。脳の海馬には電気信号で時間をカウントする『タイムセル(時間細胞)』と呼ばれる細胞があり、この細胞の働きによって私たちは時間の経過を認識するのだ。タイムセルの働きには外部からの情報量も影響を持っており、毎日家でダラダラするなど情報量が少ない場合には、記憶に残らないで人生があっという間に過ぎていってしまい、逆に人と積極的に会ったり、外出したり、記憶することが多かったりという生活を送ると人生が長く感じられるようになると教授は語る。
一方で教授は、スマホで情報を摂取する時間が増えると体感時間はどんどん短くなるとも指摘する。スマホと脳の相性は最悪だそうで、中国の大学生を対象にした新郷医学院の研究では、スマホの活動時間が長ければ長い人ほど、前頭葉の脳波が弱まっていることが明らかとなった。前頭葉は脳全体の司令塔にあたる場所であるため、前頭葉の活動が弱まっているということは、脳の情報を記憶する働きが低下していることも意味するそうだ。教授は、スマホからの情報は現実感がないため、感情が動かされにくく脳への刺激が少ないことが前頭葉の活動低下につながっているのではと私見を明かした。東北大学の実験では、リモート会議で脳波を計測すると、前頭葉が働いていなかったという結果も出ているという。
スマホから情報を得ると、脳では快楽物質の『ドーパミン』が分泌されるため、延々とスマホを見続けてしまうが、その間は前頭葉の働きがにぶっているため、結果的に何も覚えていない空白の時間が生まれ、それだけ体感時間が短くなる。日本人は平均で1日に7時間スマホを見ているため、体感する1日の長さは17時間ほどになってしまうのだ。
体感時間を伸ばすために有効なこととして、教授はルーティンとは逆の初めての経験をすることだと語る。降りたことのない駅で降りたり、自分が着たことのないファッションをしてみたりと新しい刺激になることに取り組むと、脳がそれを記憶しようとして体感時間は長くなる。教授はなかでも、脳を刺激する『脳刺激旅』をすすめ、初めて行く場所に下調べをせず行ってみたりすると長い体感時間が得られるとした。
東北大学 薬学部・大学院薬学研究科
教授 佐々木拓哉
『たった1分で体に異変が…倍速視聴の危険性と身の守り方』
短時間でより多くの情報を得る手段として効率的な倍速視聴。しかし名古屋大学 環境医学研究所 澤田誠教授は、動画コンテンツを倍速視聴すると、「たった1分の視聴でも体に大きな影響があることがわかってきた」と語る。
昨年カリフォルニア大学が発表したデータによれば、学生を4つのグループに分け、授業の動画をそれぞれ通常の速度で見て勉強する人、1.5倍速、2倍速、2.5倍速でそれぞれ見る人に分類し理解度を調査したところ、通常の速度、1.5倍速、2倍速のグループの成績にはあまり差がなかった一方で、2.5倍速で視聴したグループは成績が悪かったという。脳が情報処理をする時、特に『大脳新皮質』という脳の外側の部分が使われるが、太い神経が多いため非常に速い速度で情報を得てもある程度はついていける。そのため勉強といった単に情報を受け取るだけの作業であれば、2倍速程度までは脳が情報を素早く処理できるそうだ。
一方で、ドラマや映画といった感情が伴う情報処理については、倍速視聴では行いにくいと教授は語る。実は人間の神経の情報処理速度は、その種類によって差があるそうで、感情を伝達する『ドーパミン』や『セロトニン』といった神経伝達物質は処理速度が遅いという。さらに喜怒哀楽の感情は『大脳辺縁系』を経由するため、感情に関する情報は映像や音声に関する情報よりも一拍遅れて伝わるそうだ。ドラマや映画を倍速視聴すると、さらに感情は遅れて伝達し、結果的にただストーリーを追うだけになってしまう。
さらに倍速試聴は、体に直接的な悪影響を与えることも明らかになってきた。同じ映像でも倍速で視聴すると、本来副交感神経が刺激されリラックス状態になれた内容のものでも、交感神経が刺激され逆にストレス状態に陥ってしまうという。このストレス状態は、仕事で上司に怒られたり、人前でスピーチしたりする際のものに近く、無意識のうちにストレスを感じているそうだ。短時間の視聴であっても、情報を集中して処理しようとするため心拍数や呼吸数が増加してしまう。特に寝る前に倍速視聴を行うと、不眠症や睡眠障害、睡眠時無呼吸につながり寝つきが悪くなってしまうこともあるのだとか。
教授は倍速視聴でストレスにさらされた体を瞬時に治す方法として、『10秒呼吸』をすすめた。『10秒呼吸』とは3秒間鼻から息を吸い、口から7秒間で吐き出すというものだ。この呼吸によって副交感神経が優位になりリラックスできるという。教授は「10回程度やれば効果がある。寝つきが悪い時も、これをやって副交感神経優位にすると寝つきが良くなったりということがあります」とアドバイスした。
名古屋大学 環境医学研究所
教授 澤田誠
『朝型・夜型どっちが得?1日の体感時間を延ばす食べ物は○○』
私たちがなんとなく自覚している朝型や夜型といった生活スタイル。実は持っている遺伝子でどちらになりやすいかが決められ、タイプによって1日のバイオリズムに25分も差があると指摘するのは、愛国学園短期大学 准教授で、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘(しょうへい)研究員の古谷彰子だ。
古谷氏によれば、遺伝子が生活習慣に影響を与えており、さらに体内時計にも差が生まれるという。朝型の人は1日の時間が24時間15分、夜型遺伝子は、24時間と40分でおよそ25分のズレがあるそうだ。どちらも本来の1日の時間とは異なっているが、人は毎朝太陽の強い光を浴びることで、脳の『視交叉上核(しこうさじょうかく)』という部分がその情報を受け取り、体内時計をリセットする。
そんな朝型と夜型だが、体感時間で損をしているのは夜型の方だという。これは朝方の人の方が午前中に体温が高いためであり、フランスで行われた実験でも体温の高い人の方が体感時間が長くなるという結果が出ている。熱を出した時に1日が長く感じられるのは、体温の高さも影響しているのだとか。体温が高い方が時間はゆっくり進むため、起きた時から体温の高い朝方の方が、体感時間は長く感じられるそうだ。なお生活習慣には遺伝子が影響しているが、午前中から日差しや蛍光灯の強い光を浴びることで、朝型に近づけられたというアメリカの研究もある。ただし夜に蛍光灯やスマートフォンのブルーライトなどの強い光を浴び続けてしまうと、朝の光の効果が弱くなるため注意が必要だ。
さらに准教授は、最新の研究で『朝食』も日光と同じくらい体内時計をリセットするのに効果的だと語る。夕食を食べてから10時間から12時間ほど時間をあけて朝食を摂ることで、体内時計をリセットする刺激が細胞に送られるそうだ。また体内時計のリセットに特に効果のある食材として『マグロ』があげられる。マグロには青魚系のDHAやEPAが含まれており、サバ缶でも代用が可能だという。魚の油に含まれているDHA・EPAを摂取することで。血糖値を調整するホルモンの『インスリン』が多く分泌され、リセットのスイッチを押す。マグロと合わせて、白米やパンといった炭水化物も摂取すると、さらにリセット効果は高まる。ツナのサンドイッチやツナマヨおにぎりなどを活用するのも1つの方法だ。
最後に准教授は「本当に小学校、中学校から全くご飯(朝食)を食べる習慣がなかったって方がいらっしゃって、大体1週間くらいで朝目覚ましなしで起きられるようになったりしている」と朝食の重要性とその効果に関するコメントで締めくくった。
愛国学園短期大学 准教授
早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘(しょうへい)研究員
古谷彰子