『カズレーザーと学ぶ。』今回」のテーマは“心の支配”
今回のテーマは、心の支配「人はなぜ心を支配されてしまうのか?」
■カルト宗教の新たな手口「あなたの心に忍び寄る“いいね”人間」
立正大学心理学部教授・西田公昭はカルト宗教の新たな手口としてSNSの“いいね”が使われていると警鐘を鳴らし、人の心に入り込む手口とその予防法について説明した。
マインドコントロールとは痛みなど、直接的な恐怖を与えずに言葉巧みに心を支配する方法。痛みにより恐怖心を与え相手の心を支配していく洗脳とは異なるものである。なぜこのような心の支配が起こるかというと、“人間が楽をしたい生物だから”。正しい行動とは何かを考えて日々行うのは疲れるし、間違えるかもしれない。そういった自由を逆に放棄して、優秀な人に支配された方が楽、という気持ちがある。その結果、先を見通す力を持っていそうな人の判断を盲目的に信じるようになるという。
マインドコントロールが仕掛けられるには5つのステップがある。
まず①信頼関係の構築、そして②社会的な遮断。情報を遮断することで自分の持っている意見が正しいのか怪しくなるという。次に③恐怖を与える。例えば“あなたの財産を狙っている” “この物質は肌に悪い”などの情報が恐怖になりうる。そして、“私だけを信じなさい”という④権威の構築。最終段階が⑤自己決定の放棄。アイデンティティーが変えられて、場合によっては名前さえ変えてしまうこともある。
そして近年、この5ステップの前段階で“いいね”が悪用されている。例えば旧統一教会の勧誘の手口では“賛美のシャワー”といわれるものがあり、“いいね”が賛美のシャワーの役割を担っている。ターゲットを褒めて褒めて褒めまくり、関心を持ってくれる人に次のアタックを進める。
実はカルトが怖いのは上層部だけで、近づいてくる人はいい人、親切な人が多い。あなたのために、あなたが幸せになって欲しいと本気で思って近づいてくるから騙されていると思わないのは当たり前と言える。最短では3か月から半年のマインドコントロールで全財産を投げるというレベルで支配されてしまう。
■日常に潜む心の支配者。いま急増するマニピュレーター
表立っての悪口や暴力はないが、ひそかに攻撃性を隠したまま人の心を自分の思う通りに支配していきたいという人のことを『マニピュレーター』という。自分が得をするために他人を利用し、その本心は隠しているので、“一見すると善人のように見える”という特徴がある。このマニピュレーターについて公認心理師・柳原里枝子が読み解いた。
マニピュレーターは、職場で社員のモチベーションを上げることができるため、ある程度は必要な存在ではあるという。しかし、ポイントはマニピュレーターである相手に悪いと思って、本人が自ら無理することを選んでしまうというところ。ではどうすれば自分の身を守ることができるのか。対策としては、使い捨てにされる可能性を考えると良いという。マニピュレーターの人間関係の基準は他者が自分にとってどう役立つか。役に立つかどうかで選ばれる人間関係なので早く離れた方がいいと言える。
■場所細胞で脳をリセット 脳科学者が語る支配された脳内
脳科学者・西剛志は、マインドコントロールには『認知バイアス』という脳の働きが深く関わっていると読み解いた。もともとバイアスというのは偏りとか、歪みという意味があり、人間は先入観や思い込みで合理的な思考ができなくなる状態になってしまうという。バイアスは考え方だけでなく、体の生理反応も変えてしまう。例えば、掃除で使う消費カロリーの数値情報を与えるだけで、情報を与えなかった人よりも体重が減ったという実験がある。
マインドコントロールには様々なバイアスが絡んでいるということが分かっていて、代表的なものだけでも26のバイアスが関わっている。
バイアスにかかりやすい人は“オキシトシンが不足している人”。『オキシトシン』とは、脳内ホルモンの一種で、人と繋がった時に得られる至福のホルモン。人との繋がりがない、もしくは安定的な状態ではない人はオキシトシンが不足している状態で、人と繋がることによって安心感を得たいとリスクの高いことをやってしまうという。例えば、入信するというのは 非常に危険なリスクの高い行為であるが、入ってしまえば安定できるから入ってしまったということが起こる。
オキシトシンが作用するのが前頭前野という部分で、もともとおでこにある脳の司令塔と呼ばれる場所。計画を立てたり、合理的な考え方をしたり、計画を実行する場所になっている。その中に背外側前頭前野という場所があり、ここが客観視を司っているため、オフになった時には客観視できなくなってしまう。睡眠不足、栄養不足、ストレスが過度にかかった時にオフになってしまい、言われたことを信じやすくなる。そのため、ブラック企業やカルト集団はストレスフルな体験をさせてくる。
背外側前頭前野を活性化させる方法に『オーバービューエフェクト』というのがあり、場所を変えたり、物事と距離をとることによって客観視できるようになる。もともと人間の脳には場所細胞という細胞がある。同じ場所にいると脳がその場所を記憶して、だんだん慣れてくるため、場所細胞は活性化しない。逆に違う場所に行けば、脳が場所を記憶しようとして活性化する。場所を変えた時にリフレッシュして気分が変わることがよくあるが、それは場所細胞が活性化しているため。同時に背外側前頭前野も活性化するため客観視できるようになる。例えば、集中できない時にカフェに行ったり、模様替えしたりすることも背外側前頭前野を活性化させてくれる。