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カズレーザーと学ぶ。

毎週火曜よる10時00分〜11時00分 放送

『カズレーザーと学ぶ。』今回のテーマは『日本が誇るがん治療の最前線』

2023.05.16 公開

『血液のがんを克服!?CAR-T細胞療法』、『世界初!がん治療の新技術BNCTとは!?』、『治療の効率を上げる『がん遺伝子パネル検査』とは!?』などがん治療の最前線を徹底研究!

 

『血液のがんを克服!?CAR-T細胞療法』

小児科医で、白血病を中心とした小児がんの治療の研究を続けてきた信州大学医学部の中沢洋三教授は、その有効な治療法として『CAR-T細胞療法』の治験が始まり実用化に近づいたと語る。

そもそも白血病とは、骨髄の中にある白血球の元になる細胞ががん化した状態のことをさし、他のがんと違い若い世代にも多く、小児がんの4割が白血病という。

固形がんではないため、手術で取り除くことが困難であることに加え、抗がん剤を用いた化学療法では、白血病細胞以外の正常な白血球も減ってしまい、そのため治療中に重い感染症になりうるというデメリットがある。また骨髄移植や臍帯血(さいたいけつ)移植といった移植療法もあるが、ドナーの血液と入れ替えるということでもあり、副作用や体への負担が大きく厳しい治療とされている。さらに、これらの治療で治っても子どもで3割、大人で4割が再発してしまうとのこと。

一方、CAR-T細胞療法は、体への負担が従来より少ないという。その治療法とは、遺伝子操作を加え“がんに対してだけ攻撃力を高める”というもので、その研究は30年近く前からアメリカで進められた。続けて中沢教授はCAR-T細胞療法の仕組みについてこう解説した。

本来異物を攻撃する役割を持つ『T細胞』だが、がんに関しては自分の細胞が変異したものであるため、攻撃をしないようになっている。そこで、患者から血液を取り出し、T細胞に『CAR(キメラ抗原受容体)』という人工的なタンパク質を遺伝子導入という方法で入れ、がん細胞の表面に見られる目印のようなタンパク質にくっつきやすい設計に改良。それをがんと闘えるまでに増殖させて患者の体内に戻すことで『CAR-T細胞』は、体内でがん細胞を見つけると異物と認識し攻撃するようになる。

そして、CARは免疫細胞の抗体の部分などから生成されているため、CAR-T細胞は異物とは認識されず体内にも数ヵ月、数年は体に残るものと説明した。また、体内に入れただけでは体は反応しないが、がん細胞と闘うことでいわゆる感染症の時に見られるような発熱や体が痛いという症状が現れる。抗がん剤のように投与しただけで気分が悪くなることもないと付け加えた。

ただ現時点のウイルスベクター法では、ウイルスを作ることや検査に膨大な費用がかかるため、保険適用はされるがそもそもの薬代が高価という問題がある。そんな中、中沢教授はよりコストを抑えられる『ピギーバックトランスポゾン法』を開発。人間の遺伝子組み換えにウイルスではなく“酵素”を使うというもの。そしてその酵素は意外にも“アオムシ”の中で発見されたもの。ウイルスを扱わないため、慎重な日本でも使えると考え研究を進めた。そして進めるうちに酵素を用いて作るCAR-T細胞は、より持続的で長くその効果を発揮することも明らかに。

その後アメリカから研究結果を持ち帰ったが、思うように日本で受け入れられずにいた。しかし2012年・山中伸弥教授がiPS細胞の研究がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで遺伝子治療に対する見方も激変。当時のことを「突然、国から大きな研究費や支援がいただけるようになって」と振り返り、「30年後、治療が難しい“がん”は、“CAR-T(細胞療法)”っていわれるようになってて欲しいな」と未来のがん治療を見据えた。また2021年から骨髄性白血病に対する治験が、2022年から骨肉腫・子宮がん・卵巣がんなど固形がんに対する治験が始まっており「5年後には結果を出して次につなげないといけないので」とその展望を力強く語った。

信州大学 医学部
教授 中沢洋三

 

『世界初!がん治療の新技術BNCTとは!?』

国立がん研究センター 中央病院 放射線治療科長 井垣浩は、がん治療の方法には“手術”、“抗がん剤”、“放射線”、“免疫治療”とあるが、それでも治らないがんを治す方法として『BNCT』という技術を紹介。手術が困難な頭頸部(とうけいぶ)がんの患者さんを対象に75%の人に効果があったというデータも出ているという。

BNCTとは、正式には『Boron Neutron Capture Therapy』といい『ホウ素中性子捕捉療法』と訳される。簡単にいうと「核反応によるエネルギーでがん細胞を殺してしまうもの」だという。中性子を照射し、ホウ素と触れることで生み出されたエネルギーにより、がん細胞だけを破壊するという仕組みである。

井垣は、細かいその原理を以下のように説明した。がん細胞は増殖するために多くのタンパク質を必要とするため、タンパク質の元であるアミノ酸を正常細胞の約2倍吸収する性質を持っている。そこで、アミノ酸にホウ素をくっつけた『ボロファラン』という薬を投与し、がん細胞に存在する『LAT1』という穴から取り込ませるというもの。この状態で中性子を照射すれば、ホウ素と中性子が核反応を起こし、がん細胞だけ破壊できる。核反応とは言えエネルギーが及ぶ距離は細胞1個分しか到達せず、他の細胞は破壊しないという。

患者は麻酔なども必要なく30分~1時間、1回の照射で終わらせることも可能。現在は、頭頸部がん以外にも、乳がん、皮膚がん、肺がん、肝臓がんといったがんの治療にも応用が進められているとのこと。

・国内2施設(大阪医科薬科大学、南東北BNCT研究センター)では頭頸部がんに対して保険適用
・国立がん研究センター 中央病院では血管肉腫の患者のみを対象とした治験段階

スタジオでは、BNCTの照射装置を映像で紹介。日本の技術の進歩により病院に設置できるほどの大きさになっている。

国立がん研究センター 中央病院
放射線治療科長 井垣浩

 

『治療の効率を上げる がん遺伝子パネル検査とは!?』

国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター長 河野隆志は、現在承認され、使われている抗がん剤が100種類以上あることを明かし、過去の治療のガイドラインに沿って使い分けられていると話した。そして、同じ抗がん剤でも効く人と効かない人が出てきてしまうと語り、そういう人に向けて行っている『がん遺伝子パネル検査』を紹介した。

肺腺がんを例に挙げその患者の『EGFR遺伝子』が変異し、がんが発症している場合、EGFR遺伝子を抑える薬剤を投与するのだが、それでも2〜3割の人には効果がないという。この場合、抗がん剤が、がん細胞の変異タンパク質に効果がないといえる。

人間の遺伝子は2万3000個ありその中でも、がんに関係があり変異している遺伝子は、1000〜1500個ほど。がん遺伝子パネル検査は、その中から124〜324個の遺伝子を1度に検査し、どの薬が効くかを予測する検査である。特に、希少がんなどは、どの薬が、どのがんに効くかがわかっていないことがあるが、データをたくさん集めることで、将来的に希少がんの解明や、治療の効果アップ、製薬会社の創薬推進につながることが考えられる。

国立がん研究センター
がんゲノム情報管理センター長 河野隆志

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