第1541回 2020.09.06 |
かがくの里・田舎暮らし の科学 | 場所・建物 水中の動物 |
荒れ果てた土地を科学者たちが再生し、人と自然が共に生きる、里山作りを目指す長期実験企画!かがくの里!
今年も、里の池にウナギを入れて、3回目となるウナギ養殖プロジェクトがスタート!すると、ウナギが今まで見たことのない行動に!
さらに!3回目にして初の試み、夜でも撮れる最新鋭の水中カメラで、里のウナギの撮影にチャレンジ!見たことのない驚きの映像が続々と!
今回は、研究者も初めて見た!ウナギの衝撃映像連発スペシャルです!!
ウナギ養殖プロジェクト2020スタート!
2018年、ウナギ絶滅の危機が叫ばれる中スタートした、「ウナギ養殖プロジェクト」!一般的な養殖場で育てると、ほぼオスになってしまうウナギ。しかし自然環境に近い、里のため池ならメスになるのでは?さらに、育ったメスを川に放流すれば、ウナギの数を増やせるかも!?という夢のプロジェクト!
2018年6月、100匹のシラスウナギを池に放ち、その前から養殖していたドジョウやホンモロコ、ウナギと一緒に池に入れたスジエビなど、豊富なエサがある環境に入れて5カ月。
里の池で大きく育ったウナギを捕まえ、オスかメスかを調べると、1年目の結果は、天然ウナギと同じく、ほぼ1:1の割合でメスになったのです!
この結果を受けて、専門家の千葉先生は、確実にするためには、もう少しデータが必要で、20匹くらいいないと信用性にかけるとのこと。そこで翌年2019年6月、去年の倍、200匹のウナギを入れました。
ところが…秋、大型台風に襲われ、池が増水。あふれた水に乗ってウナギが逃げ出し、去年のデータは、まさかのゼロ…。
そこで迎えた今年3月。千葉先生は、まず、ため池を補強し、災害に強い施設を作ると意気込んでいたんですが、自粛期間に…。それでも千葉先生は、北里大学で実験用にシラスウナギを購入し、かがくの里に放す準備を着々と進めていました。
そして6月下旬。地元の林業家・西野さんと共に、ため池工事を開始。もし、去年のように増水してもウナギが逃げ出さないよう、池全体にネットの囲いを作りました。
翌日、予定から遅れることおよそひと月。大学の研究室で15センチほどに育った、まだ性が決まっていないウナギ200匹を池に放ちます。
しかし千葉先生、池に入れる前に、里産のウナギであることを証明するためにマーキングをしたいといいます。
この後も順調に里の池でメスが育ったら、いよいよ川にそのウナギを放流。うまくいけば里のウナギは、川で何年かかけて産卵の準備をし、大海原へ。マリアナ海嶺あたりで卵を産んでくれるはず!それが、ちゃんと里のウナギとわかるよう目印をつけておきたいということなのです。
その方法は、“耳石”という、炭酸カルシウムの塊の一部を、薬品で染めるんです。耳石は、魚類では脳や目の近くにあります。
まるで木の年輪のように1日に1本、成長と共に輪ができるので、魚の年齢を調査するために使われているのですが、“アリザリンコンプレキソン”という薬品を、魚に害のない濃度まで薄めて使えば、染めることができるのだそうです。
早速、アリザリンコンプレキソンを水で薄め、ここにウナギを入れて丸1日待ちます。これで、里うなぎの耳石に、印がつくそうです。
翌日、耳石に里の目印がついたウナギ200匹を池へ。ひと月ほど放すのが遅れ、いつもよりサイズは大きめですが、まだ性は決定していない大きさです。
ウナギ養殖プロジェクト、何とか良いスタートが切れました!
超貴重な“正の走流性”
里の池にウナギを入れてから1週間後。西野さん千葉先生と共に池の整備を終えた夕方のこと、水面近くにウナギの姿が!その時!なんと、ウナギがシートをのぼっています!!滑ってはのぼり、何度もアタック!
千葉先生によると、これは正の走流性だといいます。
“正の走流性”とは、水の流れに魚が反応し、流れに逆らって泳ごうとする性質のこと。ウナギの正の走流性は、「ウナギのぼり」という言葉があるほど激しいもので、高さ100メートル近い華厳の滝を登ると言われるほど!実は千葉先生も、実際にウナギの滝のぼりをしているのを見たのは初めてとのこと!専門家も初めての、超貴重映像が撮れちゃいました!
ウナギの捕食シーン撮影!
うなぎのぼりに感動した阿部さんが、池の中のウナギを見たいと言い出しました。ウナギは日中、泥の中に身をひそめ、日が沈みかける頃から動き出す夜行性の魚。それもあって、今までの2年間、池で生活するウナギを観察することはしてきませんでした。
すると千葉先生は、捕食シーンが撮影できれば発見に繋がるかもしれない…、ウナギが食べているものが、性の決定に関わっているかもしれないというのです。ウナギが活発に活動するのは、夕方6時から9時、そして午前0時から2時の2回と言われています。そのため、夜の水中でも撮れる赤外線のカメラは必須!
1週間後阿部さんは、長時間水中に入れておくことができ、しかも、夜は自動で赤外線LEDが点灯するという、まるでウナギを撮るために作られたようなカメラを持って北里大学へ。
まずは、千葉先生の研究室の水槽で、ウナギがちゃんと映るのか予備実験。研究室で飼われているウナギなので、普段は、サバやイワシなどをドライ粉末にしたものを食べていますが、この日は、かがくの里の池と同じ、ドジョウやミミズなど、生きたエサを与えます。でも、研究室育ちのウナギが、生き餌に食いつくのか?まずはミミズを入れてみました。すると、ウナギはミミズを一気に丸飲み!
続いては、水中カメラを水槽に沈め、どの程度の映像が撮れるのか試してみます!遮光シートをかぶせた真っ暗な中でも、魚たちはちゃんと映っています。このカメラで、里のウナギの捕食シーンの撮影に挑みます!
8月上旬。ウナギの捕食シーンを撮影するため、里の池に赤外線水中カメラを4台沈めます。まずは、ウナギのぼりの行動を見ることができた場所に1台。ウナギは池の端に集まるそうで、うなぎのぼりポイントのほか、合計3か所にカメラを設置。ウナギは、池から田んぼや水路に移動している可能性があるため、田んぼの水路のあたりにも1台沈めました!果たして、ウナギの捕食シーンを撮影できるのか?
日が暮れるのを待ち、モニターでチェックします。すると、最初に映ったのは、水生昆虫のミズカマキリ!
去年の収穫祭で、所さんも見つけたカメムシの仲間。農薬のため、最近は全国的に減っている虫です。
続いて現れたのは、スジエビ!おととし、ウナギと一緒に池に入れましたが、スジエビの寿命は、およそ1年。今いるのは3世代目となります。
さらに、3世代目となるホンモロコや、ドジョウもたくさんいました!
千葉先生のこだわりで、人がエサを与えていません。それでも次世代がちゃんと繁殖しているのは、しっかりと自然循環している証です。
観察を始めて30分後。カメラ前を横切る、かなり大きなウナギの姿をとらえました!!
さらに、夜、活発に動き出したウナギは、次々とカメラ前に姿を現してくれました!
次回はかがくの里、里ウナギの活動調査後編!巨大ウナギの捕食映像、撮影に成功!一体なにを食べていた!?さらに、裏山で夏の昆虫大調査!里山ならではの面白昆虫が色々見つかりました!