放送内容

第1542回
2020.09.13
かがくの里・田舎暮らし の科学 場所・建物 地上の動物 水中の動物

 荒れ果てた土地を科学者たちが再生し、人と自然が共に生きる里山作りを目指す長期実験企画、かがくの里!
 今年で3回目を迎えた“ウナギ養殖プロジェクト”。前回、ウナギの捕食シーンを撮影するため、水中カメラを設置したところ、ウナギの超貴重映像の撮影に成功!さらに、かがくの里の裏山で真夏の昆虫調査!簡単に作れちゃうトラップでカブトムシ捕りも!!
 今回は、かがくの里でウナギ&昆虫、大調査スペシャル!

かがくの里で昆虫探し!

 8月上旬。かがくの里に新しい先生が。斎藤先生は、自然環境研究センターで、昆虫の調査や研究を45年間にわたり行なっている専門家。
 昆虫は、生物多様性を保つうえで大事な生き物。生態系を支える色々な役割をしているのです。つまり、色々な昆虫がたくさんいれば、かがくの里の環境が豊かである証拠。そこで!里の生態系の調査の一環として、今回、昆虫の専門家、斉藤先生と一緒に、裏山の昆虫を調べてみることにしたのです。
 調査開始!早速、私たちが“赤トンボ”と呼ぶトンボの一種“ナツアカネ”が。

 似ているのに『アキアカネ』がいて、この時期は山の高いところで避暑しているそうです。ナツアカネは、ずっと林の中にいますが、アキアカネは、涼しくなると山から下り、9月終わりか10月頃に、田んぼで産卵するのだそう。

 さらに見つけたのは、“オオヒラタシデムシ”。

 死んだ動物をキレイに食べ尽くすことから、‟森の掃除屋”とも呼ばれています。鳥やネズミが死んでいると、下の土を掘り、埋めるのだそう。シデムシは、死体をかじる際、防腐効果のある消化液を付着させることで、死体を腐らせず、長く食べ続けることができるそうです。
 死んだ動物は、シデムシのような昆虫によって分解され、再び栄養分として植物に取り込まれていきます。シデムシは、生態系で重要な役割を担っているのです。

 次に見つけたのは、シュレーゲルアオガエル。

 天然記念物になっている、モリアオガエルの仲間だそうです。シュレーゲルアオガエルは田んぼで産卵するため、田んぼと林、どちらも近くにある環境でしか生息できないそうです。
 里山を一周しただけで、普段あまり見られない昆虫をたくさん発見できました。今回見つけた昆虫を始め、生態系を支える昆虫を増やすには、里山を1年単位で観察し、植物の多様性も高めることが大事。さらに、かがくの里を豊かにするために、昆虫の調査も1年を通して続けていきます。

簡単手作りトラップで昆虫捕り!!

 カブトムシが捕れる時期は、6月中旬から8月下旬ですが、オスは交尾を終えて役目を果たすと、先に寿命を終えるので、8月は産卵をおこなうメスしか、ほとんどいないのです。オスを捕るには1ヶ月遅いそうですが、先生とカブトムシ捕りに挑戦!
 先生が用意してくれたのは、ライトフィット。昆虫は、光の中でも紫外線に集まる習性があり、紫外線が出るブラックライトに集まった虫がクリアファイルにぶつかり、下に取り付けたカップに落ちて入る、という仕掛け。

 材料は、ブラックライトやハンガーなど、100円均一の店などで手に入るものばかり。

 まず、片方を切って開いたA3クリアファイルの両はしを折ってホッチキスで止め、竹ぐしを通します。これで虫がぶつかる衝撃板は完成。今度は、A4クリアファイルの角など2か所をカット。この時、竹ぐしが通せる張り出しと穴を開けておきます。あとは、衝撃板とハンガー、ブラックライトを固定し、先ほど作ったファイルに竹ぐしを通します。最後に、ファイルの穴にカップを入れれば、たった10分で簡単トラップの出来上がり!

 これを裏山に4か所設置。最後に仕掛けたのは、白い布に、紫外線の含まれる水銀灯の光を当てることで、一度に多くの昆虫を引き寄せることのできる、「ライトトラップ」という仕掛け。果たして、カブトムシは捕れるのか?

 夜10時半。山に入ると、枝で脱皮中のセミを発見!

 幼虫から成虫になるとき、大きく姿を変えるセミ。これを「変態」というそうです。その貴重な瞬間を見届けることに。セミは6年間、土の中で幼虫として過ごし、この時期、地上に出てきて2〜3時間ほどかけて羽化します。そして成虫になると、2週間から1ヶ月で命を終えるのです。斉藤先生によると、見つけたのはアブラゼミ。成虫へと変身する、貴重な瞬間を見ることができました。

 さて、ライトトラップはどうでしょうか?たくさんの虫がいましたが、残念ながら、カブトムシは来ていません。しかし、“ヒメサザナミスズメ”という、自然豊かな山にしかいない蛾を発見できました。

 翌日、残りのトラップの確認に。すると、ライトフィットに、メスですが待望のカブトムシが!さらに!もう1つのライトフィットには、ミヤマクワガタも捕獲!ひっくり返すと足がオレンジ色なのが特徴なのだそう。ミヤマクワガタは‟深い山“と書くだけあって、自然の多い山深いところにいるクワガタ。
 時期外れなのに、手作りの仕掛けで、カブトムシとミヤマクワガタのメス1匹ずつを捕ることができました。

ウナギの捕食シーンを撮影!

ウナギを池に入れてから1か月後。池の中で、ウナギがどういう行動をしているのか?そして、なにを食べているのか?水中カメラでの撮影に挑むことに。3台のカメラを、ウナギが集まるという池の端に向けて沈め、1台は水路にも入れました。
 夜行性のウナギは日中、泥の中にいて、日が落ちかける夕方6時から9時、そして午前0時から2時の、2回活発に動き回るそうなので、夕方からモニターをチェック!
 7時をすぎた頃、ホンモロコやドジョウ、スジエビなど、これまで池に入れていた生き物たちが続々とカメラ前を横切り…その時!大きなウナギの姿が!さらに…次々とカメラの前を横切っていくウナギをとらえました!

 今日は準備で池の中をかき乱したところがあるので、明日、昼からウナギの行動に注目したい、と千葉先生。ということで翌日、日が落ちる前から観察開始!すると、自分の体と同じくらい大きなエサをもったエビが通過。さらに、今が繁殖期のドジョウ。この時期は、つがいでいる姿が見られるそうです。
 そしてついに、ウナギが、ホンモロコを狙って口を開ける姿が撮れました!

 しかし結局、実際に食べている所はとらえられず。どうしても捕食シーンを見たい千葉先生は、ミミズを池の中へ。前回、千葉先生の研究室のウナギの水槽にミミズを入れたところ、ウナギがミミズを丸飲み!里のウナギも、ミミズなら捕食シーンが見られるかも!
 すると、夕方6時。狙い通り、ミミズを食べる瞬間を撮ることができました!

 そして、撮影を終えようとしたその時!カメラに巨大なウナギが!!さらに、水路に設置したカメラにも巨大なウナギ!大きさから、去年か一昨年に放したウナギだと思われます。

 口をパクパクさせて、なにかを食べているよう。千葉先生によると、大型の動物プランクトンを食べているのかもしれないとのこと。
 初めてチャレンジした、里の池のウナギの撮影。謎の生態の解明につながりそうな映像をとらえることができました。