第1576回 2021.05.23 |
瞬間ハンター・能登半島 の科学[後編] | 場所・建物 水中の動物 自然・電波・鉱物・エネルギー |
様々な条件が重なった時にのみ起こる美しい自然現象や、人が作り出す珍しい現象。そんなレアな現象の瞬間を撮影する“瞬間ハンター”。今回、訪れた場所は、美しい自然と実り豊かな、里山。そして、多種多様な生態系を育む、里海。この二つをもつ能登半島。2011年に、能登の里山里海が、日本で初めて世界農業遺産に認定され、世界的に重要な場所として、注目されているんです!
前回は、能登の里海で 今の時期にしか見られない貴重な瞬間や、美しい瞬間をハントしました!そして、今回は里山で神秘的な瞬間を捉えました!そこには里山だからこそ見られる絶景が!さらに!絶滅危惧種の生き物を調査!果たして、見つかったのか?
今回の目がテンは、能登半島の里山、里海の魅力がいっぱい!瞬間ハンター、能登半島、後編です!
能登の里山里海の象徴“白米千枚田”
金丸さんが向かったのは、輪島市。能登半島の里山、里海にとって重要な場所、棚田。白米千枚田の田んぼの数は、なんと全部で1004枚。
重機が入らないため、作業は全て手作業で行われます。日本海に面して、小さな田が重なり海岸まで続く絶景は、日本の棚田百選に指定され、奥能登を代表する観光スポットとしても親しまれています。そして、四季を通じて、様々な姿を見せてくれるんです。
お会いしたのは、白米千枚田愛耕会の小本さん。自然の傾斜地に栽培していくのが棚田。 平地の少ない能登半島で農業を営むため、用いられた方法なんです。そのため、能登半島の各地には多くの棚田があります。そして、この棚田には大きなメリットがあるそう。
それは、棚田には1日中太陽が当たり、平地のものより日照時間が長いこと。
金丸さんが訪れたのは4月中旬。今は、あぜ塗りという作業をしているそう。あぜ塗りとは、田んぼを囲んでいる壁に土を塗り付けて、割れ目や穴を塞ぎ、水漏れ防止をする作業のこと。
ということで、金丸さんも、早速お手伝い!田んぼの土を壁に貼り付けていきます。一見、簡単そうに見えますが、すごく難しいんです。
能登半島の各地にある棚田。 実は、里山の保全にとって、とても重要なんです。里山・里海の専門家である、金沢大学の中村先生に聞いてみると、棚田など、人が丁寧に管理することでより生物の多様性が高くなり、里山を守ることにつながるというのです。
そして、能登の里山を守ることは、里海の保全においても大きな役割を果たします。里山の豊富な養分が川から海へいくことで、さらに、豊かな海の資源を育くんでいけるのです。里山と里海は密接に繋がっており、両方を守ることが能登の環境にとって重要だったんです。
そんな里山で、棚田のお手伝いをした金丸さん。最後に、神秘的な絶景をハントできました。それは、夕日に染められた美しい棚田。里山を守ってきたからこそ見られる美しい瞬間です。
能登の生物多様性を象徴する貴重な生き物
訪れたのは、能登半島にある羽咋市。こちらに、絶滅危惧種に指定されている貴重な生き物がいるんです。それは、石川県指定の天然記念物「ホクリクサンショウウオ」。
体長8~12センチの両生類で、石川県と富山県の一部にしか生息しない貴重な生き物なんです。田んぼの水路など、里山近くの水辺に生息しているのですが、現在、田んぼが放棄され荒れてしまったり開発により、水が溜まる場所が減ったりと住処が減少し、絶滅危惧種に指定されているんです。「ホクリクサンショウウオを守る会」の会長で、保護活動をしている架谷さんによると、2月から3月にかけて産卵期を迎え、今の時期はふ化したての子どもが見られるかもしれないというんです!
ということで、ホクリクサンショウウオ探し開始!すると、何かが動きました!しかし、現れたのは、外来種のザリガニ。気を取り直し、再開。ホクリクサンショウウオの子どもは、一体、どこにいるのでしょうか。あきらめかけたそのとき!なんと金丸さん、ホクリクサンショウウオの幼生を見つけました。
手のように見えるのは、エラ。そして、ホクリクサンショウウオの卵のう。50日ほど、卵の中で過ごし幼生となって、卵のうから出てくるんです。今回見つけたものは、エラがあって成体に近づいている様子がわかります。金丸さん、貴重な生き物の瞬間ハントに成功です!
架谷さんたちは、貴重なホクリクサンショウウオを守るため、増殖池と呼ばれる場所で保護をしています。生息環境を守ることで、実は里山保全にも繋がっているというのです。
サンショウウオは泥の中にいる虫を食べて大きくなって、それを鳥が食べて、という繰り返し循環しています。ホクリクサンショウウオを保護することは、食物連鎖を維持することにもなり、里山の他の動物たちや環境を守ることにもつながっていたんです。
能登半島のユニークな滝
金丸さんが、最初に訪れたのは、とても珍しい山から海へと直接流れ落ちる滝。落差はおよそ35メートル、きれいに2段になって海へ流れる“垂水の滝”。
駐車場から徒歩1分!とても行きやすくて、美しい滝です。この垂水の滝、別名「吹き上げの滝」とも言われ、厳冬期には、強い海風により、滝が重力に逆らって真上へと滝が吹き上げるのです。
続いては、2本の滝がひとつに溶けあう美しい滝“男女滝”。
落差およそ35メートル、5段になって、滑り落ちるような緩やかな滝です。左側にある女滝と右側にある男滝が、夫婦のように寄り添って一本の流れになる美しい滝です。
そして、最後は、世にも珍しい形の滝“桶滝”。
一見、普通の滝のように見えますが、大きな穴が開いています。なんと岩盤にあいた穴から滝が流れ落ちるという珍しい形をしているんです。上から見ると、岩にぽっかりと大きな穴が空いています。
この穴は、川底の窪みに入り込んだ小石が、水流によって同じ場所を循環することで、浸食され、甌穴というくぼみができます。それが、長い年月をかけて、穴がさらに浸食され、ついには厚さ2メートル以上の岩盤を貫通させ、直径およそ3メートルの大きな穴となったのです。
能登半島には、個性的で素敵な滝がたくさんありました!