第1583回 2021.07.11 |
かがくの里 の科学 | 水中の動物 植物 食べ物 場所・建物 |
今から7年前、放置され、荒れ果てていたたこの土地を科学者たちの知恵と力で1から開拓。人と、自然や生き物が豊かに共存する里山再生を目指す長期実験企画、かがくの里!
今年初め、取り組んでいたのが、畑の水はけの悪さを根本から改良するため重機で溝を掘り、竹を入れて水はけを良くする「竹暗渠工事」。西野さんたち地元の方々の協力を得て、阿部さんが里に泊まり込みで作業を行うこと4か月!見事、排水に成功しました!ということで、水はけがよくなり、グレードアップした里の畑で、かつてないほどたくさんの作物の栽培に挑戦!さらに、かがくの里のメインプロジェクト「ウナギの養殖」!今回は新たな挑戦満載!新緑のかがくの里を存分にお見せします!!
まさかの作物に挑戦!
4月中旬。前々日は大雨!しかし、竹暗渠のおかげで、わずか2日で水がはけました!そこで今年は、実験的にいろんな種類の作物を少しずつ育ててみることに!作物選びは阿部さん。用意したのは、トマト、里芋、落花生、ひまわり、ピーマン、ししとう、唐辛子、アスパラガス。
西野さんや、地元の方々にお手伝いいただき、阿部さんが用意した種や苗を植えていきます。その時、西野さんから、意外な作物の提案!
それは、ワタ。ワタはアオイ科ワタ属という植物で、綿製品の原料。明治時代までは、日本でも栽培されていましたが、現在はほぼ全てを輸入に頼っています。西野さんが用意したのは、繊維がとれるワタの実の部分、綿花。実はこの綿花の中に、ワタの種があるんです。
ワタは秋、実をつけます。しばらくすると、中の綿花がでて、風などで、種は綿花ごと落ちる仕組みです。
綿花から一粒一粒取り出し、ワタの種、まき終えました!今年の秋から冬には、ワタが収穫できるはずです!
さらに、西野さんはもう一つ新たな挑戦をしたいんだそう。それは、自然薯。自然薯とはヤマノイモ科ヤマノイモ属に属する日本の在来種で、山の中に自生しています。古くから、畑で栽培されている同じような見た目のナガイモなどと比べ強い粘り気があるのが特徴。
5年前。阿部さんは、近所の山で地元の自然薯掘り名人から技を教わっていました。まず名人が見つけたのが、細いツル。
自然薯はつる植物。葉の形などで、地上のツルを見つけてたどれば、イモがある場所がわかるんです。イモを傷つけないよう、慎重に掘り続けること1時間!
とっても苦労して掘りだしました!
そんな、本来山の中に自生する“自然薯”を畑で栽培する方法があるというんです。その方法を教えてくれるのが、西野さんの友人、江端さんと柴田さん。
自然薯栽培には、色々な道具を使うんだそうで、まずは筒状のシート。この中で自然薯が長~く伸びていくといいます。自然では、真下に伸びる自然薯をこの筒で、横へと伸ばし、楽に収穫できるようにするんです。
続いて大事なのが、パイプに入れる山砂。砂なので、栄養はほとんどありません。あえて山砂を使う理由は、肥料負けしてしまうから。
自然薯の栽培に成功したのは、昭和40年代のこと。それまでは、畑に植えても育たず、栽培は不可能と言われていました。しかし、山口県の農家、政田さんが栄養の少ない場所で自然薯よく育つことに気づき、山砂で育ててみたところ栽培に成功したんです。
ということで、山砂をパイプに入れ、それを重ねます。
続いて、支柱を立てます。自然薯のツルを巻き付かせるためのもの。自然薯のタネイモをパイプに植え、ツルをまきつけて山砂と藁をかぶせて完成です。収穫は秋です!
昔ながらの苗づくり
去年5月の自粛期間中、阿部さんは自宅のベランダで稲の種もみから苗づくりに挑戦。発芽させ、種をまき、そして毎日水をあげ1か月半、ベランダで手塩にかけて育てました。一方、高橋先生は大学のビニールハウスで同じ品種の苗を作っていました。
そして6月、田植えの日。2つの苗を見比べてみると阿部さんの苗は貧弱で枯れかけたものも!理由は、ベランダの日当たりが悪く、日照不足だったこと。さらに阿部さんが1日だけ水やりをサボったことで一気に枯れてしまったとのことです。
その後、田植えから精米までの5か月、全く同じ環境で育てたのに、収穫祭で所さんに食べ比べてもらうと、味に大きな差が!
そこで、里で苗を作ってリベンジしたいという阿部さん。去年のように水やりで失敗したくない!と、言い出し、田んぼの一角で苗を育てることを提案。
高橋先生によると、田植え機がない頃にも、田んぼの隅に苗代というものを作って、タネを撒いて苗を育てていたというんです。
現在の一般的な苗づくりは、色々な栄養が入った苗専用の土を育苗箱という箱に入れ、種をまき、温度管理がしやすい農業用ハウスで育てます。育苗箱で育てると田植え機にスッポリ!田植えが楽にすみます。
でも、田植え機がなかった頃は、田んぼに泥を盛った苗代というものを作りそこに種を撒いて、苗を作っていたと言います。
ちなみに、かがくの里と友好関係を結んだ白米千枚田は、棚田に機械が入れないこともあり、伝統の苗代でも苗を育てています。
しかし、素人では水量の調整が難しいとのこと。そこで頼ったのが、里の達人西野さん!苗代の作り方や、苗の育て方を知っており、水の調整もしてくれるとのこと!
ということで、今回は苗代で阿部苗を作ります!
さっそく西野さんが取り掛かったのは、種もみの芽出し!種もみは水につけることで細胞分裂が始まり、芽が出る準備が整うんです!早く芽を出すには、少し水温が高い方がいいそうなので、翌日、太陽熱でちょっと温まった温水を使います。そして、4日目。種をまく準備が整いました!
いよいよ、ここからが初挑戦!苗代を西野さん指導の下、田んぼに作ります。田んぼの泥を盛って小高くし、種もみが芽を出せて、かつ水が行きわたる高さに!でも実は、ここに種もみをまくのではないそう。使うのは、育苗箱。実は、育苗箱の底には穴が空いていて、苗代に箱ごと置けば、水は浸透してきます。
それに育苗箱で育てれば、田植え機が使える!ということで、育苗箱に土を入れ、西野さんが持ってきた昔ながらの道具で均等に種まき!その上に土をかぶせ、育苗箱を苗代へ!最後にシートをかぶせて保温すれば!完成です。
これでしばらくすれば、種もみから、葉が伸びて育つはず!
2週間後、青々として茎がスックと立った苗!去年ベランダで育てた阿部苗と比べると一目瞭然!そして、いよいよ2代目阿部苗の田植えです。
阿部さん、田植え機の運転は、もうお手の物!所さん、今年の2代目阿部米、期待できそうです!!
うなぎプロジェクト新展開!?
これまで、メインプロジェクトとしてかがくの里を盛り上げてきたウナギの養殖プロジェクト!このプロジェクトが、本日、2年越しの新展開を迎えます!
その始まりは今からちょうど1年前。ウナギ養殖の専門家、千葉先生と阿部さんは西野さんに連れられ、ある場所へ!ここは、千葉先生が新たにウナギの研究をしたいということで、西野さんが借りてくれた元養殖場!
草木がおいしげっていた元養殖場。半分ほど掃除はしたものの、去年は移動制限などがあり、作業が進まず千葉先生がここでどんな実験をするかも検討中でした。そして今年6月!ようやく作業再開。掃除を進めていくと、徐々に全貌が明らかになってきました!実はここ、13個のコンクリート水槽からなる巨大な養殖場!
まず、水源は隣を流れる川。この川からパイプで引き込んだ水が、全ての水槽に流れ込む仕組みになっています。
さて千葉先生、一体ここでなにをするんでしょうか?
4年前から始めたかがくの里のウナギ養殖は、毎年メスが出現。里のようなため池であればオス・メスは1:1になることがこれまでに、ほぼ明らかになりました。しかし、問題なのが、ウナギが泥に潜って、なかなか見つからないなど、自然環境に近いため、データが取りづらいこと。そこで!千葉先生は、整備された養殖場で里に近い環境を作り、ウナギを育ててはどうかと考えたんです。
でも養殖池を里の環境に近づける方法とは?
里池、最大の特徴は、隣にたい肥などの栄養を入れた田んぼがあり、豊かな栄養が流れ込むこと。だから春、池には植物プランクトンが大発生。それを食べに、動物プランクトンや昆虫などエサ生物が増えるため、エサをやる必要がないんです。
そこで、養殖場でも、一部でエサをつくり、一部でウナギを育て、人間がエサをやらなくても育つ循環を作り上げようという計画。里の池に似せれば、養殖池でもメスは育つのか?ウナギ新実験場プロジェクト始動します!!